NHN Japanがライブドア子会社化「日本最大のネット企業目指す」
株式会社LDH(旧ライブドアホールディングス)は12日、傘下の株式会社ライブドアの全株式10万株をNHN Japanに譲渡し、63億500万円で売却することを明らかにした。同日、NHN Japan社長の森川亮氏とライブドア社長の出澤剛氏が共同会見を開き、株式譲渡の経緯や今後の方針を説明した。
●ライブドアの社名、ブランド、サービス、組織は継続
NHN Japan社長の森川亮氏(左)とライブドア社長の出澤剛氏 |
会見の冒頭でNHN Japan社長の森川氏は、本来であれば詳細が決まった上で記者会見を開くべきだったが、事前にライブドアの買収が報道されたこともあり、「事業戦略はさておき、ユーザーや法人顧客、従業員に基本方針をいち早く伝えたい」という思いから、この時期に会見を開いたと説明した。
森川氏はライブドアに対する基本方針として、1)社名、ブランド、サービス、組織を継続、2)現在の運営ポリシーに沿って運営、3)現常勤取締役の留任、4)従業員の雇用を継続、5)さらなる成長を支援――という5項目を「皆様との約束」として掲げ、今回の買収は事業投資で、売却益を目的としたものではないと訴えた。
また、ライブドアへの印象としては、「ライブドア事件後、出澤社長を中心に技術力でポータルサイトやブログ、データセンターサービスを軌道に乗せた。特にブログに関しては国内トップレベルの位置にいる」として、新生ライブドアとして新たな成長が期待できると語った。
「ライブドアの独立性を尊重し、サービスの精算も一切ない。これまでは厳しい中、新サービスへの投資が難しかったと察しているが、ブログと並ぶサービスを立ち上げるために資金や技術、人材面で積極的に支援したい。我々の中核事業であるハンゲームとNAVERに加えて、ライブドアを成長させ、日本最良のインターネット企業を目指す。」
●livedoor Blogなどとの連携でNAVERの集合知を強化
ライブドアとの連携によるナレッジプラットフォームの強化・拡大 |
会見で具体的な事業戦略は明らかにしなかったが、ライブドア取得の狙いについて森川氏は、ユーザー同士が検索結果を作り出す「NAVER まとめ」やミニブログサービス「pick」など、同社子会社のネイバージャパンが持つ集合知を強化することだと説明。両社のサービス連携の例としては、NAVERが活用する集合知をライブドアのサイトと連携することで、検索結果をわかりやすく表示することができると語った。
「ライブドアには多くのユーザー参加型サービスがあり、ブログやWikiに関しては国内最大規模。これらとNAVERのサービスをゆるやかに連携することで、従来のロボット型検索に加え、新しいナレッジプラットフォームを作っていきたい。これにより、両社のユーザーにも便利な機能が追加され、シナジーの循環が起こると考えている。」
NHN Japanは累計会員数が3999万IDに上るオンラインゲームポータル「ハンゲーム」も提供するが、森川氏は「インターネットサービスのキーであるゲーム、検索、ポータルの3つを支える高度なネットワークサービスを持つ日本で唯一、かつ最大規模のインターネットサービス企業グループができる」と意気込みを語った。
「我々はハンゲーム、NAVER、ライブドアにおいて強力なコミュニティを抱えている。今後はこれらのサービス間のシナジーを強化し、ナンバーワンのソーシャルプラットフォームを作り、日本最大のインターネット企業を目指す。」
なお、ハンゲームやNAVERと、ライブドアのユーザーIDを統合する考えはないという。
●LDHから完全分離で新サービスへの投資やM&Aにも期待
ライブドアの今後の事業運営方針 |
一方、ライブドア社長の出澤氏はNHN Japanについて、「テクノロジーに強いこだわりがあり、企業文化や組織は非常に親和性が高い」と評価。両社の事業内容も相互補完の関係があり、サービスを連携させることで高い成長が見込めるとした。さらに、経営独立性や事業継続も保証してもらっていると述べ、「経営の土台は変わらない」と強調した。
また、現在は係争中のLDHと資本上のつながりがあることから、LDHの主要株主らは「新サービスへの投資に対する寛容度が高くなかった」と指摘。しかし、NHN Japanへの資本異動後はLDHから完全分離することで、韓国NHNグループの支援を受け、新規事業の開発やM&Aに加え、日本発のサービスをアジアほか海外へ展開することも視野に入れるとした。
「これまでは収益を意識した経営をしてきたが、今後は短期的に収益が悪化したとしても、ライブドアもしくはNHNグループの成長につながるサービスを作っていきたい。投資については各方面で拡大していく。今回の資本異動は非常に楽しみで、新しい成長のステージに行けると考えている。」(出澤氏)
なお、ライブドア取得の経緯について森川氏は、2009年末にLDHからNHN Japanへライブドア売却の提案があり、その後、NHN Japan社内で本格的に検討を開始したと説明。2010年春にはLDHからオークション参加の打診を受け、今日に至ったとしている。
LDHは12日、ライブドア子会社であるエイシスの株式をライブドアから取得した上で株式会社ゲオに対して19億円で売却することも発表した。LDHは、NHN Japanからライブドア株式譲渡代金として63億500万円を受領するとともに、ライブドアから30億円の配当を受領する予定。
関連情報
(増田 覚)
2010/4/12 21:59
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