「Googleとはこれからも競争を続ける」、ヤフーが“市場独占”を否定


ヤフーの井上雅博代表取締役社長

 株式会社ヤフーは2日、検索エンジンと検索連動型広告配信にGoogleのシステムを採用することを決定した件について、記者説明会を開催した。ヤフー代表取締役社長の井上雅博氏は、検索結果にはYahoo! JAPANが独自の情報を付け加えるため別の検索サービスになるとし、広告配信もシステムはGoogleのものを使うが全く別の独立した市場になると説明。「Googleとはこれからも競争をし続けます」と語り、米Microsoftが懸念しているような市場の独占にはあたらないと主張した。

 ヤフーは7月27日、Yahoo! JAPANにGoogleの検索エンジンと検索連動型広告配信システムを採用することを発表。これに対して米Microsoftは、GoogleとYahoo! JAPANのシェア合計は9割を超えることから「日本の検索市場から競争を排除するものだ」と懸念を表明している。

 井上社長は、「報道されている内容を見ると、少しわかりにくい提携だったのかなと思っている」として、「今回の提携は、これまで米Yahoo!から提供を受けていた検索エンジンと広告配信システムを、Googleのシステムに切り替えるもので、それ以外の変更はない」と説明。提供された検索エンジンと広告配信システムの情報を元に、Yahoo! JAPANが日本向けにアレンジしてサービスを提供する構造は変わらず、ユーザーの利用環境には大きな変化は無いと語った。

 また、Googleからシステムの提供を受けるだけでなく、Yahoo! JAPANからもオークションなどのデータをGoogleに提供するため、リアルタイム検索の分野での精度向上が期待できると説明。提供するデータはあくまでも公開されているページの情報で、ユーザー情報などを提供することはないとした。

 米Yahoo!との関係についても、検索と広告以外の分野での協力関係に変更は無く、オークションやメールなどの技術は今後も技術提供を受けると説明。「Yahoo! JAPANが今後も日本市場で成長していくために、一番いい手段は何かということを米Yahoo!とも相談して決めた」として、「米Yahoo!との関係が悪くなっているのではないかといった報道もあるが、そういったことは無い」とした。

 井上社長は、現在のYahoo! JAPANの検索結果を示し、「キーワードにもよるが、このうち純粋な検索エンジンからの結果が占める部分はページの面積にして半分程度」だとして、残りの部分はYahoo!グルメやYahoo!知恵袋といったYahoo! JAPAN独自の情報が占めていると説明。「米Yahoo!とYahoo! JAPANで同じ日本語の単語を検索してもらえれば、Yahoo! JAPANがどのような仕事をしているのかが理解してもらえると思う」として、米Yahoo!のエンジンからGoogleのエンジンに変わっても、それほど大きな変化にはならないとした。

 また、検索連動型広告についても、Yahoo! JAPANの広告メニュー「スポンサードサーチ」のバックエンドで使用するシステムをGoogleのものに切り替えるだけで、Googleの「AdWords」とは切り離された別の商品だと説明。スポンサードサーチとAdWordsは顧客情報も分離され、営業体制も、広告が掲載されるページも全く別の商品だとした。また、バナー広告など、検索連動型以外の広告も今回の連携には含まれておらず、懸念されているような市場の独占にはあたらないとした。

 システムを変更した理由については、米Yahoo!がMicrosoftの検索エンジンと広告配信システムを採用することになったため、「米Yahoo!から提供を受けていた検索エンジンと広告配信システムの性能向上が見込めなくなった」ことから、「Yahoo! JAPANが今後も成長していくために何を選ぶべきかを総合的に判断してGoogleになった」と説明。Googleを選んだ理由については「総合的な判断」であると繰り返したが、「日本語でのサービス実績はGoogleが一番だった」とした。

 一方、Microsoftの検索エンジン「Bing」を選ばなかった理由については、「Microsoftも含めて検討したが、今回は総合的な判断としてGoogleを選んだということ。検索エンジンの変化は速いので、将来はMicrosoftのエンジンに変えなければ、ということになるかもしれない。その時には柔軟に対応したい」と語った。

 スケジュールについては、検索エンジンの切り替えについては2010年内をめどに、広告配信システムについてはその後になる見通しだという。


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(三柳 英樹)

2010/8/2 20:06