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テレビ画面の再撮も検知、精度99%以上のYouTube「ビデオID」の正体とは


グーグル株式会社YouTubeコンテンツパートナーシップ統括部長の水野有平氏

 グーグル株式会社は24日、YouTubeの著作権管理サービスについて報道関係者向けの説明会を開催し、同社YouTubeコンテンツパートナーシップ統括部長の水野有平氏が「コンテンツIDシステム」の仕組みなどを解説した。

 水野氏によると、コンテンツIDシステムのミッションは「著作権を保有する人々が、YouTubeに掲載される自身のコンテンツを管理・コントロールできるよう、自動的で、汎用性の高いサービスを提供すること」。Googleが数十億円をかけて開発し、2007年にグローバルで提供を開始。日本でも同年10月14日から運用を開始した。

 仕組みとしては、権利者がYouTubeのバックエンドにサンプル動画ファイルをアップロードすると、その動画の特徴を抜き出したシグネチャ(IDファイル)が生成される。それに基づいて、誰かがアップロードした動画がこれと同じものだった場合に自動的に検知できるというものだ。

 コンテンツIDのデータベースには、そのIDファイルとともに権利者が決めた公開ポリシーを登録しておける。誰かが無許諾でアップロードにようとした場合に、公開をブロックできるだけでなく、プロモーションのために公開を許可するといった対応も可能。レコード会社などでは最近、公開を許可して多く視聴してもらうポリシーをとる場合も多いという。

 ポリシーは、動画ごと、地域ごとに設定できるほか、これまで公開を許可していた動画をブロックするようにしたり、あるいはその逆など、途中で変更することも可能だ。いずれにしても、同じとみなされる動画を検知した場合には、権利者のコンテンツ管理画面にレポートされる。「権利者は、自身が保有する動画をコンテンツIDデータベースに格納しておくことによって、YouTubeに毎分35時間分もアップロードされる動画すべてを、このシステム上で管理できることになる」(水野氏)。


YouTubeの著作権管理サービス コンテンツIDの仕組み

 コンテンツIDは、動画の音声部分に基づく「オーディオID」と、映像部分に基づく「ビデオID」の2つがある。水野氏は今回、ビデオIDを例に、IDファイルの生成の原理を説明した。水野氏によると、ビデオIDのIDファイルとは、動画の各フレームごとの光の変化の流れを格納したものだという。あるフレーム(静止画)に含まれる光の要素は、周波数ごとの量としてグラフ化(ヒストグラム)されるが、連続するフレームにおいて変化している差分に着目して数値化したファイルということらしい。

 YouTubeにおける著作権管理ツールとしては最初、動画ファイルのMD5ハッシュに基づいて動画を照合する方法が導入された。権利者からの要請によりいったん削除された動画と同じMD5ハッシュを持つ動画が再びアップロードされた場合に、自動的にブロックするというものだ。

 しかしMD5ハッシュに基づく判定のため、動画ファイルが完全に同じ場合でないと捕捉できず、元の動画を短く編集したものなど、違うファイルになってしまうと対応できないという問題があった。

 これに対してビデオIDは、前述のように光の要素の差分に基づいて照合する仕組みのため、例えば動画の冒頭に別の動画が追加されてファイルとしては別ものになってしまった動画や、テレビ画面を再撮影して、テレビの枠が映っているよう動画ファイルでも、一致にしている個所を検知できるという。テレビ画面の再撮影の例でいえば、枠の部分は背景として光の要素の変化がないために無視され、差分がある(動きのある)元の映像部分の特徴によって照合されるわけだ。

 ビデオIDのマッチング率は99%以上になるという。検知された動画と、権利者がバックエンドにアップロードしたサンプル動画ファイルの一致個所を同時再生して確認できるツールも用意されている。


シグネチャ生成の仕組み 一致個所の再生機能

 水野氏によれば、日本におけるコンテンツIDの採用パートナー数はこの1年で2倍に増えた。また、すでに1000以上のパートナーがコンテンツIDを採用しており、米国の主なメディア企業は導入しているという。登録IDファイルは400万件以上、時間にして30万時間に上り、前年比で4倍に増加した。

 また、IDファイル登録後にアップロードされる動画との照合はもちろん、登録前にアップロードされた動画についても過去にさかのぼって照合するため、コンテンツIDシステムでは1日あたり100年分以上の動画をスキャンしているとした。

 最近注目される動きとしては、すでにコンテンツIDを利用しているテレビ朝日が、エル・エス・アイジャパン株式会社およびYouTubeと協力し、より効果的に動画を管理するための技術検証に着手したという。テレビ局では日々新たな動画コンテンツを流し続けているほか、膨大な量の映像素材も保有している。テレビ朝日局内の映像素材管理システムとYouTubeのシステムを連携させることで、サンプル動画ファイルのアップロードやIDファイルの登録・管理を効率化しようとするものだとしている。


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(永沢 茂)

2010/11/25 11:35