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「YouTubeは著作権対策から収益化の段階へ」Google副社長


 グーグルは25日、動画共有サイト「YouTube」日本版に関する事業説明会を開催した。米Googleでコンテンツ担当副社長を務めるデービッド・ユン氏が、著作権侵害対策の進ちょく状況を説明したほか、エイベックス・マーケティングや角川デジックスなどのパートナー企業がYouTubeを活用したビジネスを紹介した。


300以上のパートナー企業が「コンテンツ ID システム」を利用

米Googleコンテンツ担当副社長のデービッド・ユン氏
 YouTubeの著作権対策への取り組みとしては、2008年3月にジャパン・ライツ・クリアランス、4月にイー・ライセンス、10月に日本音楽著作権協会(JASRAC)との間で、YouTubeにおける音楽著作権の包括利用許諾契約を締結している。

 また、著作権所有者がコンテンツを管理するための「コンテンツ ID システム」を提供。同システムでは、著作権所有者が動画を登録するとIDファイルが生成され、ユーザーがアップロードする動画とIDファイルを照合する。照合方法としては、動画と音声をチェックしている。

 ユーザーの動画とIDファイルが一致した場合は、著作権所有者が指定した対応策が動画に施される。著作権所有者が選択可能な対応策としては、動画の公開を中止する「ブロック」、動画をブロックせずにトラフィック情報などを取得する「トラック」、動画に広告を表示して広告収益を受け取る「マネタイズ」という3つがある。

 ユン氏によれば、現在300以上のパートナー企業が「コンテンツ ID システム」を利用しており、うち9割以上は「マネタイズ」のオプションを選択しているという。「一部のパートナー企業は、ユーザー動画をマネタイズすることにより、従来の50倍の再生回数と収益を達成している」。


「コンテンツ ID システム」の仕組み 「コンテンツ ID システム」では、パートナー企業の動画と音声に一致するユーザー動画を検出する

 また、「コンテンツ ID システム」を利用しているパートナー企業に対しては、自社が権利を所有する動画に「iTunes」や「Amazon.com」の購入リンクも付与できる取り組みも行っている。これによりパートナー企業は、アーティストのCDやDVD、書籍などの販促に活用できるとしている。

 一方、動画をアップロードするユーザーが収益を得るための仕組みとしては、再生中の動画に広告を表示する「In-Video」を提供中だ。「In-Video」は、再生画面の下部に広告のリンクが表示され、これをクリックすると再生中の動画に関連する動画広告が再生される。広告に興味がない場合は、これを消去することも可能だ。ユン氏によれば、「In-Video」のクリックレートは通常の8〜10倍に上る。

 YouTube日本版の今後の展開についてユン氏は、まず「コンテンツ ID システム」への投資を拡大して機能を充実していくと説明。また、動画のキャプションを自動翻訳するシステムなどを提供することで、海外のユーザーが日本語コンテンツを楽しめる環境を整えたいとしている。


動画再生ページ上の購入リンク 「In-Video」動画広告

YouTube発のヒット曲を

エイベックス・マーケティング取締役アーティストマーケティング本部本部長の前田治昌氏
 エイベックス・マーケティングは2008年10月、YouTubeにブランドチャンネル「avex Channel」を開設。第1弾コンテンツとして、ダンスミュージックとJ-POPの融合をテーマにしたプロジェクト「ravex」の動画を配信している。

 「ravex」はMONDO GROSSOの大沢伸一、Fantastic Plastic Machineの田中知之、m-floの☆Taku Takahashiが結成したプロデュースチームで、手塚プロダクションがビジュアルを手がける。avex Channel上では、1億円以上かけたプロモーションビデオと、ハンディカメラで撮影したライブ映像をあわせて公開している。

 今後の展開について、エイベックス・マーケティングの取締役でアーティストマーケティング本部本部長を務める前田治昌氏は、YouTube上で活躍するユーザーにエイベックス側からオファーを出すことなどにより、「YouTubeからヒット曲を出したい」と語る。具体的には、アーティストだけでなく、プロデューサーやディレクター、カメラマンなどの「クリエイティブチーム」を募集するなど、「単なるプロモーションやコンテンツ販売の場ではない企画を検討中」としている。


YouTubeはSEO対策にも効果的

角川デジックス代表取締役社長の福田正氏
 2008年1月からYouTubeとの共同事業を展開している角川グループホールディングスでは現在、「角川アニメチャンネル」「角川ウォーカーチャンネル」などYouTube上で12の公式チャンネルを開設している。

 角川グループでは2007年から、角川デジックスを中心に「コンテンツ ID システム」の実証実験に参加。YouTubeにアップロードされた角川関連の動画については、角川が定める基準に適していれば公開を認定する「角川バッジ」を付与した上で、これらの動画に対して広告を掲載するなど、YouTubeとの協業を図ってきた。

 角川デジックス代表取締役社長の福田正氏は、これまでのYouTube上での取り組みをこう評価する。「YouTubeで角川が公開を認定した動画の再生数は、当初(2008年2月)と比べて約62倍に増えている。また、『Walker』系の公式チャンネルではグルメ関連の動画も掲載しているが、これらがブログなどに掲載されることでSEO対策にもつながっている」。

 最近では、タカラトミーの商品「フラワーロック2.0」のキャンペーンとして、YouTubeのIn-Video広告を活用した。その結果、In-Video広告を導入した翌日には、YouTube上のフラワーロック関連動画の再生回数が約2倍に増えるなどの効果が見られたとしている。


「角川バッジ」について 角川認定コンテンツの再生数の推移

YouTubeを活用したビジネスは「攻め」の段階

 事業説明会ではこのほか、角川グループホールディングス代表取締役会長兼C.E.O.の角川歴彦氏やJASRAC常務理事の菅原瑞夫氏らを招き、動画ビジネスの今後について語るパネルディスカッションも開かれた。

 パネルディスカッションでユン氏は、「これまでYouTubeは著作権処理などの『守り』に関する取り組みを行ってきた。現在は著作権管理団体との契約も結び、パートナー企業とのコラボレーションなどを通じて収益化を図る『攻め』の環境が整った」と話した。

 この発言に対して菅原氏は、「もやもやとした部分もある」と述べ、YouTube側に一層の著作権対策を要請。その一方で、グーグルがJASRACの管理楽曲をYouTubeで利用するための包括的な許諾契約を結んだことについては、「必ずそこ(もやもやとした部分)に良い影響が出る」と評価した。

 また、角川氏はYouTubeとの協業を図る重要性について、独特の言い回しで表現した。「当初、YouTubeに反発した事業者にとって、YouTubeは下田にたどり着いた黒船だった。私はYouTubeをチャンスとしてとらえたが、YouTube(との協業)は米国を含む外交戦略になると考えている」。


JASRAC常務理事の菅原瑞夫氏 角川グループホールディングス代表取締役会長兼C.E.O.の角川歴彦氏

関連情報

URL
  YouTube
  http://jp.youtube.com/
  関連記事:エイベックス、YouTubeに公式チャンネル「avex Channel」を公開[BB Watch]
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/23607.html

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( 増田 覚 )
2008/11/25 20:40

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