専用タブレットによる家庭向けサービスで、イオン、シャープ、NTT西ら4社が協業
イオン株式会社、NTT西日本(西日本電信電話株式会社)、シャープ株式会社の3社は、専用タブレット端末によるオンラインショッピングサービスを核とした“暮らしサポートサービス”展開において協業することで合意した。サービス名は未定だが、春からモニターサービスを開始し、秋には全国で本格提供を開始する予定だ。2年で専用タブレット端末30万台の販売を目標とする。専用端末の価格は未定。
左から、NTT西日本 代表取締役副社長 伊東則昭氏、株式会社ハーストーリィプラス 代表取締役社長 佐藤緑氏、イオン株式会社 執行役 グループIT・デジタルビジネス事業 最高経営責任者 ジェリー・ブラック氏、シャープ株式会社 常務執行役員 国内営業統括 兼 国内営業本部長 岡田守行氏 |
●家庭で簡単・手軽に利用できる、ネットスーパーを核としたサービス提供へ
このプロジェクトでは、タブレット端末・アプリケーション・サポートを組み合わせて提供することで、パソコンなどの機器の操作に慣れていないユーザーでも簡単・手軽にサービスを利用できる環境作りを目指す。
「家庭・絆・コミュニケーション・コミュニティ」をキーワードとして、イオンの「イオンネットスーパー」などのオンラインショッピングサービスを核に、家族のスケジュール共有や家族アルバムなどの家族間コミュニケーションを実現するサービスや、同じ専用タブレット端末を利用するユーザー間でのコミュニケーションが図れるサービスを提供していくという。
春には現在イオンのネットスーパーサービスを利用しているユーザーなどを対象に、10.8インチ液晶を搭載した現行のGALAPAGOS端末を用いて200名規模のモニター調査を行い、ユーザーインターフェイスをはじめとしたユーザーの要望をくみ上げる。春の調査を反映した形で夏に5000人規模の実証実験を実施、秋に全国で本格展開を行う予定だ。
サービスにはシャープのGALAPAGOS配信プラットフォームを採用。タブレット端末は、シャープが専用のタブレット端末を供給する。イオン株式会社 執行役 グループIT・デジタルビジネス事業責任者 梅本和典氏は、「プッシュ型配信ができるプラットフォームであることが大きかった」とシャープのGALAPAGOS採用の理由を挙げ、プッシュ型でネットスーパーのチラシなどを配信することを想定していると述べた。
イオンは、イオンカード1800万人、WAONカード1800万人を越える顧客基盤とイオンの店舗網、顧客基盤を提供。情報提供やイオンのショッピングや決済サービスだけではなく、行政からの情報なども提供することを想定。地域コミュニティをサービスコンセプトのひとつにしていることから、地域の商店街との連携なども、要望があれば検討していきたいとしている。
NTT西日本は、同社の「家まるごとデジタル化(家デジ)構想」の一環としてプロジェクトに参画。光回線を有効に活用するサービス開発に取り組む。NTT西日本では、生活に根ざした家族全員が利用できるコミュニケーションサービスなどを提供するほか、タブレット端末の設定から操作方法のサポート、トラブル対応などのサポートサービスを担当する。
サービスの企画、開発、マーケティングには、約10万人の女性会員ネットワークを擁する株式会社ハーストーリィプラスが参加。生活者目線でのサービス立案や使い勝手などの面で主婦層など女性の意見やアイディアを積極的に取り入れていく。
暮らしサポートサービス&家族コミュニケーションサービスの利用イメージ | 協業における各社の役割分担 |
●イオン「今回の開発の目的はコミュニティの開発にある」
イオン株式会社 執行役 グループIT・デジタルビジネス事業 最高経営責任者 ジェリー・ブラック氏 |
イオン株式会社 執行役 グループIT・デジタルビジネス事業 最高経営責任者 ジェリー・ブラック氏は、「このプロジェクトは、家族の交流やくらしのサポートなどをコンセプトとしており、シニア向けにそうしたネットワーク利用を促進するものになる」と述べ、単にネットショッピング機能を提供するだけのサービスではないことを強調。
「イオンの取り組みのひとつとしては、常にイノベーションをして顧客に新しいサービスを提供するということがあり、2007年に提供開始したWAONもそのひとつだ。WAONは比較的若い世代の利用促進を想定していたが、それがシニア世代、主婦世代、家庭にも広まっていった。このプロジェクトへコミットすることで、このサービスも迅速に展開するものと思っている。また、この取り組みにより、デジタルの世界と実店舗の関係を強化するものと期待している」とコメント。PCを対象としたネットスーパーを利用していない顧客とデジタルサービスでもつながる試みであると述べた。
また、スマートフォンやタブレット端末が普及する中で、あえて専用端末でサービスを提供する理由については、「クローズドなプラットフォームを目指しているわけではない。今回のアライアンスの目的はコミュニティの開発にあり、家庭内の絆やコミュニケーション、コミュニティに重点をおいたサービスとして、ショッピングの時だけに利用するのではなく、生活の中でコミュニケーションに活用できるサービス作りを目指している」とした。
また、「モバイルという点においてはスマートフォン対応は当然欠かせないものであると考えている。複数のデバイスにおいてオープンシステムをサポートしていくさまざまなプラットフォームを開発していくというのがわれわれの考えだ」として、イオンとしては今回のプロジェクトで構築するプラットフォームのみに顧客を囲い込む考えはないことを明らかにした。
イオンが展開するネットスーパーのイメージ | ネットスーパーのサービスイメージ。誰にでもわかりやすく使いやすいサービスを目指す |
●NTT西「家デジ構想の一環として、光回線を有効活用する新しいマーケットを」
NTT西日本 代表取締役副社長 伊東則昭氏 |
NTT西日本では、ブロードバンド基盤やサポート、家庭向けサービスの開発などを担当する。NTT西日本の代表取締役副社長 伊東則昭氏は協業について、「昨年から光の道構想で光インフラの敷設について議論しているが、光回線を引けるエリアはすでに90%を越えているものの、利用は3割あまり」と光回線の利用率に言及。とくに西日本は電力系事業者などとの競争も激しく、関西ではNTT西のシェアは5割を切っている。そういう中で、すべてのサービスを垂直統合で提供する従来のやり方ではなく、協業によるサービスプラットフォーム作りに踏み出したことが重要だと考えている」とコメント。
プロジェクト参加については、「ラストワンマイルを提供できる事業者は制限があるが、クラウドのようなサービスはどこでも提供できる。ノウハウの部分で新しいマーケットを提供していけばメリットはあると考えている。ボランティアではなく当然リターンを期待しているが、いまのどの商品が売れるということではなく、もう少し長い目で見ている」とNTT西日本の参画のメリットを語った。
NTT西日本の「家まるごとデジタル化(家デジ)」戦略 | 家デジ戦略と今回の取り組み |
●シャープ「本当にユーザーのためになるタブレット端末を」
シャープ株式会社 常務執行役員 国内営業統括 兼 国内営業本部長 岡田守行氏 |
シャープ株式会社 常務執行役員 国内営業統括 兼 国内営業本部長 岡田守行氏は、「シャープとしては、GALAPAGOSプラットフォームを利用していただけるのがひとつのメリット」とプロジェクト参画のメリットを上げ、「メーカーとして、本当にユーザーのためになるタブレット端末、サービスがどうあるべきかということを一緒に考え、創っていくことを楽しみにしている」とコメント。
GALAPAGOSプラットフォームについては、「電子書籍サービスからスタートしたが、今後対応する端末の拡大、コンテンツの拡大、新しいサービスの拡大を目指す。端末の拡大では、専用端末のほか、テレビ、スマートフォンでの利用が上げられる。コンテンツでは、電子書籍のほか、動画やゲームを提供し、サービスでは、eコマース、教育、ヘルスケアなどの提供を考えている」として、GALAPAGOSは電子書籍のプラットフォームに止まらない情報配信プラットフォームであることを強調した。
その上で今回のプロジェクトについて、シャープはGALAPAGOSの配信プラットフォームとPC操作などに慣れないユーザーでも簡単に操作ができる端末の開発と提供を担当するが、「メーカーとして、お約束した時期に、お約束した台数がきちっとお届けできるようにがんばりたい」と述べ、2年で30万台の普及を目標とするプロジェクトへの意欲を見せた。
クラウドメディア事業「GALAPAGOS」は電子書籍から開始。定期配信やプッシュ配信が特長 | GALAPAGOSのコンテンツ配信プラットフォーム |
GALAPAGOSの今後の展開 | 新しいライフスタイルを支援するコンテンツ配信サービスを目指す |
関連情報
(工藤 ひろえ)
2011/2/15 18:52
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