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芥川賞作家・平野氏の新作がGALAPAGOS向けに電子書籍化、書籍と同時発売


芥川賞作家 平野啓一郎氏

 シャープは11月29日、芥川賞作家 平野啓一郎氏の新作「かたちだけの愛」が、GALAPAGOS向けに電子書籍化されると発表。都内でプレス向けに平野氏の電子版新刊発表イベントを開催した。

 「かたちだけの愛」は、2009年7月から2010年7月にかけて新聞に連載されたものに大幅な加筆を行った新作で、平野氏としては初めての恋愛小説となる。

 書籍版は、中央公論新社から12月10日に刊行される。価格は書籍版が1785円、GALAPAGOS向けの電子書籍版は1470円。

 平野氏は、電子書籍版を発売することについて、「現代人が読むテキストの大半はパソコンなどディスプレイ上で読むという状況になっている中で、自然なことと思っています。気合いを入れて電子書籍を出すというよりは、自然に、当然のこととして出すという気持ち」と述べ、特に電子書籍について気負いがあるわけではなく、時代の当然の流れとして電子書籍版を出すことになったと述べた。

 また、「電子書籍は目が疲れるというイメージがあると思うんですが、ライトの調整でかなり軽減できる。ぼくのように旅行の時にいつも2〜3冊本を持っていく人は荷物が軽くなるし、部屋の蔵書も電子書籍の形で持てば部屋も広くなる」と電子書籍ならではのメリットを挙げた。

 一方で、「今年は電子書籍元年と言われたが、実際にはiPadが出ただけで端末がこれまで出ていなくて、やっといま出てきたところ。出版社も足並みが揃っていない状況で、電子書籍化については、著者が出版社と個別に話し合う必要がある」と現在の状況について述べ、元年として始まったというよりもこれから始まり、混沌としたスタート期の状況が落ち着くには2〜3年かかるのではないかと指摘した。

 今後の著書については、「基本的に、これから新刊は紙と電子書籍で出して、既刊も順次電子化していきたい」とコメント。版元については、「雑誌で掲載し、書籍を出版し、電子書籍も出す、文芸書の場合は、できればすべて1つの版元でやるのが望ましいと思う。逆に、電子書籍化だけやらないというのは、版元にとってもメリットがないはずで、今後対応が進んでいくのではないか」と述べた。

 「かたちだけの愛」は、事故で片足を失った女性とデザイナーの男性の恋愛小説。今回、恋愛をテーマに取り上げたことについては、「現代をどう生きていくかということを考える中で、やはり恋愛というものが重要になるが、現代人が“これなら信じられる”という愛の形を書きたかった」とコメントした。

 平野啓一郎氏は、京都大学法学部在学中に新潮社に投稿した小説「日蝕」により、1999年に芥川賞を受賞。1999年に「一月物語」、2002年に「葬送」を相次いで刊行。歴史を舞台にしたこれら3作は、「ロマンティック三部作」と呼ばれる。現代を舞台にした実験的な短編に取り組んだ後、現在は再び長編小説に取り組んでいる。


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(工藤 ひろえ)

2010/11/29 13:42