シャープ、「GALAPAGOS」の目指す3つの進化~日本電子出版協会で講演
シャープ株式会社 ネットワークサービス事業推進本部 ネットワークサービス推進センター副所長 兼 サービス企画室長の中村宏之氏 |
日本電子出版協会(JEPA)が10月29日に開催した定例会で、シャープ株式会社 ネットワークサービス事業推進本部 ネットワークサービス推進センター副所長兼サービス企画室長の中村宏之氏が「シャープが提案する電子書籍ソリューションと新サービスについて」と題した説明を行った。
約150名着席できる会場は満員で開始20分以上前に席の半分以上が埋まる盛況ぶり。出版業界の関心の高さが伺えた。
●中間フォーマットはオープンかつフリーな規格に
中村氏はまず、三省懇談会において定められた中間フォーマットの作成について説明。要件として海外のデファクトスタンダードであるEPUBへの変換ができること、EPUBの日本語拡張仕様にも対応することなどを挙げた。
中間フォーマットはオープンかつフリーな規格とし、国際標準のIEC、および国内標準のJISに盛り込むが、年内にはテキスト流し込みなどミニマムセットの最初の仕様案を作成し、JISについては2011年度第一四半期にはJIS化を完了する。今年度中に実証実験を行い、2011年度にコンバータなどのツールを作っていくと述べた。
電子書籍交換フォーマットによるメリット | 国際規格化に向けてのスケジュール案 |
●「XMDFはオープン化・多機能化の2つの方向に発展させたい」
シャープは、互換性が重要となる標準化作業を行う一方で、次世代XMDFとその端末「GARAPAGOS」を開発しているが、中村氏は「XMDFはクローズドと言われるが、オープン化・多機能化の2つの方向に発展させていきたい」と1社で囲い込む意図はないことを強調。
互換性が重要となるオープン化・標準化には時間がかかるため、多機能化の方向は自社で電子書籍配信システムや端末「GARAPAGOS」などプラットフォーム一式を開発・提供することですみやかに電子書籍市場を形成することを目指すとした。自社製品で今後も固めるつもりはなく、AndroidなどのスマートフォンやAQUOSをはじめとするテレビなど、他社製品や家電品にも対応していきたいと述べた。
次世代XMDFソリューションは12月のGARAPAGOS販売開始と同時にサービス提供を開始できるよう準備しているが、特長としては(1)高精細画面を活かした豊かな表現力、(2)自動定期配信、(3)紙媒体と同時に電子化(サイマル配信)可能、(4)ワンソースマルチユースを上げた。
機能としては、ルビなど日本語特有の部分にも過去のXMDFから引き継いで対応。新しい機能としては、複雑な段組の新聞・雑誌にも対応可能で、映像や音声も入れられるなど多彩な表現力を備えることを、実際に出版社とGARAPAGOSのリリースに向けて準備しているコンテンツのデモを示しながら紹介した。
著作権保護の点では、違法コピーをした場合にもとをたどれる「フットプリント機能」を新たに搭載。記述フォーマットと配布用フォーマットがあり、違法コピーされたコンテンツについては、どの配布データからコピーしたかなどがたどれる仕様となっているとした。
XMDFのこれまでの進化 | XMDFの概要。記述フォーマットはXMLベースで、実行フォーマットと配布フォーマットを別に持つ |
XMDFの利用状況。モバイル向けに多く利用されている | 次世代XMDFソリューションでは、高機能化だけでなくEPUBやHTMLなどの他のオープンフォーマットも取り入れていく |
●「電車通勤というのは彼らの発想にない」
メディアタブレット「GARAPAGOS」については、ホームモデルはiPadのディスプレイが9.7型であるのに比べて10.8型で少し大きいサイズを採用。横に持つと見開きで見るのに便利な大きさだと述べた。
モバイルモデルは5.5型液晶を採用。米国発のKindleやiPadは小型の携帯モデルがないが、「電車通勤というのは彼らの発想にない」と国情の違いによる需要の違いを指摘。5.5型は、スーツのポケットやカッターシャツのポケットにもぎりぎり入る大きさで、手に握って持てる最大の液晶はどのくらいかということで、サイズ感や読みやすさ、持った感触を総合して最適と思われる大きさを決めたと述べた。
また中村氏は、5.5型液晶パネルは既存製品にはないサイズで、オリジナルで作ってもらったサイズだと述べ、「シャープ以外でこんな特注サイズを作るメーカーはないんではないか」と自信を見せた。
コンテンツについては、「マルチジャンルに対応しないとデイリーで使ってもらえるものにならない」とコメント。新聞のほか、雑誌などのコンテンツは中身の一部を試し読みして購入できるようにし、定期購読にも対応。テキスト主体の書籍、画像主体のマンガ、動画や音声なども盛り込んだ電子書籍など、日常的に利用できるよう多岐に渡るコンテンツを準備していると紹介した。
関連情報
(工藤 ひろえ)
2010/11/1 14:40
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