無料授業動画「Khan Academy」に500万ドルの助成金


 無料授業の動画をYouTubeに投稿する等の活動を行っている米非営利団体Khan Academyは4日、アイルランドのO'Sullivan Foundationから500万ドルの助成金を受けたことを発表した。

 この助成金は、無料教育を提供するというKhan Academyの活動を拡大するために使用される。O'Sullivan Foundationは、オープンソース、起業プラットフォームを促進するような革新的なプロジェクトに資金供与を行っている非営利財団。

 Khan Academy創始者のSalman Khan氏は、もともとはヘッジファンドのアナリストであり、無料教育の機会を提供するという遠大な目的を当初から持っていたわけではなかった。遠くに住んでいた可愛いいとこが「数学でわからないところがある」というので、教えてあげるために説明を動画で録画したところから始まったという。

 いとこに語りかけるように、優しく教える語り口、自分の間違いも修正せずに一気に録画してしまう撮影手法等が、かえって見る者の心をとらえ、非常にわかりやすかったことから注目を集めるようになった。一度の授業が10分程度ということも、見る者のハードルを下げることになった。

 ここに大きなニーズがあることを察知したKhan氏はヘッジファンドを退職、フルタイムで様々な科目の動画をYouTubeにアップロードし始めた。現在では、中学、高校、大学レベルの授業が数学から物理、化学、生物学、ファイナンス等に至るまで2600本以上アップロードされており、これまでに累計8200万回再生されたとしている。

 この教育手法は大きな注目を集め、カリフォルニアの一部公立、私立学校や米国内の一部の学校で採用されるなど、教育水準を高めるためのツールとして国家的に大きな注目を集めている。

 今回O'Sullivan Foundationが提供した資金は、3つの分野で用いられることになっている。1つ目は、現在もたった1人で授業を録画し続けているKhan氏に加え、最低でも5人のフルタイム教師を雇用し、理系科目への偏りをなくし、美術、歴史等の人文系科目にも拡大していくことだ。すでに2人の教師の採用が決定している。

 2つ目は、ウィキペディアのようなクラウドソーシングを用いることだ。現在、世界で活躍できるレベルの優秀な教師が世界中に散らばっており、こうした教師たちがコンテンツを提供できる仕組みを構築したい考えだ。

 そして3つ目に、Khan Academyの授業を使用して、物理的な教室における授業と、オンラインの授業とを結びつけることで、これまでになく効果的なカリキュラムや教育手法を開発することだ。特にKhan Academyの事業を採用することによって、学生たちは何度も授業を見直すことができ、教師は学生が理解しにくい場所を掴みやすくなる。この組み合わせによって、より効率よく、効果的な学習スタイルを確立できる可能性があるとしている。


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(青木 大我 taiga@scientist.com)

2011/11/7 06:00