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「Winny」開発者の無罪確定へ、最高裁が検察側の上告を棄却


 ファイル共有ソフト「Winny」を開発・公開した金子勇氏が著作権法違反の幇助の罪に問われた裁判で、最高裁は19日付で、検察側の上告を棄却する決定をした。これにより、金子氏を無罪とした二審・大阪高裁の判決が確定する。

 この裁判は、2003年11月に著作権法違反で逮捕されたWinnyユーザー2人(有罪判決)について、Winnyを開発した金子氏がその幇助の罪にあたるとして起訴されたもの。一審の京都地裁は2006年12月、金子氏はWinnyが違法に使われていることを知りながら、ソフトの開発・公開を続けたとして、罰金150万円の有罪判決を下した。

 これに対して二審の大阪高裁は2009年10月、ソフトの提供者が著作権侵害の幇助と認められるためには、ソフトの利用状況を認識しているだけでは条件として足りず、ソフトの主要な用途として違法行為を勧める形でソフトを提供していることが必要だという条件を示し、金子氏はこれにあたらないとして無罪としていた。

 今回、最高裁が検察側の上告を棄却し、金子氏を無罪と決定したことを受け、金子氏と弁護団は20日、東京司法記者クラブで会見を開いた。金子氏は、「私に対する著作権侵害幇助事件について、本日、無罪との決定をいただきました。私は、今回の事件で開発を躊躇する多くの技術者のために訴訟活動をしてきました。今回の決定で、私の開発態度が正しく認められたことをありがたいと思っています」とする声明を発表した。

 金子氏は、「今も、インターネットを巡る問題はたくさんあります。私は、これらの問題の解決のために、微力ながら最大の努力をしていきたいと思います」とした上で、「この場を借りて、Winnyを悪用することのないよう、また、よりよいIT社会が実現できるよう、あらためて多くの方々にお願いする次第です」と、あらためてWinnyを悪用しないよう呼びかけ、「最後になりますが、逮捕直後より、ご支援をいただいたたくさんの方々にお礼を申し述べたいと思います」と支援に対して感謝した。

金子勇氏 (左から)弁護団長を務めた桂充弘氏、金子氏、弁護団の事務局長を務めた壇俊光氏

 金子氏の弁護団長を務めた桂充弘弁護士も、「最高裁が、高等裁判所の判断を支持し、無罪としたことについては、当然とはいえ評価するものであります。そもそも本件は、Winnyの技術や価値を全く検討せず、偏見で捜査を進め、立件した事件であり、2004年の逮捕から7年以上経過しており、失われた7年という期間は、金子勇だけでなく我が国のソフトウェア技術者にとって非常に大きな損失でした」とする声明を発表。また、現時点では弁護団も、最高裁がいかなる理由で無罪としたかについては明らかではないとした上で、「その基準が、今後のソフトウェア技術者が意欲的な取り組みをすることへの障害となるものではないことを願う」と語った。

 無罪の決定を聞いてどのように思ったかという質問に対して、金子氏は「嬉しかった、ほっとしたという気持ちと、長く待たされたのでやっとかという気持ち」と説明。今後の活動については、「基本的には変わらない」として、株式会社Skeedの社外取締役としての活動を続けるとともに、「また何か新しいものを作れたらいいと考えているところ」だとした。

 今回の事件で、日本のP2P技術の開発が後退したことの責任は誰が取るのかという問いには、「誰かのせいにすればいいというものではないと思う。当時も、誰かのせいにすればいいと思って、私のせいにされたのではないかと思うが、今回の事件も別に誰かのせいにするつもりはない」とコメント。捜査についても、「彼らも仕事ですので、真面目にやられているのだと思うのですが、できるだけ公共の利益になるようにしていただきたい」と語った。

 一方、弁護団長を務めた桂氏は、「警察、検察が基準のあいまいなところに乗り込んできた。こうした姿勢については猛省を促したい」として、捜査を行った京都府警についても「ハイテク犯罪対策室ができたことで、手柄を立てようとする勇み足がなかったのかということを考えなおしてほしい」と指摘。報道機関に対しても、捜査段階では金子氏に対する正しい評価が得られなかったとして、事件全体についてもう一度検証してほしいと訴えた。


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(三柳 英樹)

2011/12/20 22:52