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「Winny」開発者の金子勇氏に罰金150万円の有罪判決

幇助として問われるかどうかは「現実の利用状況や本人の認識による」

京都地方裁判所
 京都地方裁判所は13日、ファイル交換ソフト「Winny」を開発し、著作権法違反幇助の罪に問われていた金子勇氏に対して、罰金150万円(求刑懲役1年)の有罪判決を言い渡した。

 この裁判は、2003年11月に著作権法違反で逮捕されたWinnyユーザー2人について、Winnyを開発した金子氏がその幇助の罪にあたるとして起訴されていたもの。先に逮捕された2人については、著作権法違反でいずれも懲役1年、執行猶予3年の有罪判決が下されている。

 Winnyを開発した金子氏に対し、検察側は「Winnyは著作権法違反行為を助長するために制作・配布されたプログラムであり、これを不特定多数にダウンロードさせた被告の行為は幇助にあたることは明白」と主張し、懲役1年を求刑。一方、弁護側は「Winnyは新しい技術の開発を目的としたもので、著作権法違反を蔓延させる目的で開発したとする検察側の主張は誤り」として無罪を訴えていた。


【追記 14:55】
 判決では、Winnyについては「それ自体はP2P技術としてさまざまな分野に応用可能な有意義なものであり、技術としては価値中立的なもの」とした上で、こうしたソフトウェアの開発・提供が幇助として問われるかどうかは、現実の利用状況や本人の認識によるという判断基準を示した。

 利用状況については、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)が実施したファイル交換ソフトの利用実態調査から、Winnyでやりとりされる多くのファイルが著作権を侵害すると想定されるものであることが認められるとした。これはファイル名による推定であり、ファイル名と実際のファイルの内容が一致するとは限らないという弁護側の指摘に対しては、そのような場合があることは認めるが、多くの場合には一致するとみなすのが通常の判断であるとして退けた。

 また、本人の認識については、金子氏が捜査段階で供述した内容からは、WinMXの利用者に逮捕者が出たことを疑問に思ったこと、Freenetの存在を知りこれを効率的に改良しようと思ったこと、ファイル交換が容易に行なえるという状況ではコンテンツ流通に新しいビジネスモデルが必要であると考えたことなどが認められるとし、これは金子氏が自身のWebページに掲載した内容にも一致するとした。一方、金子氏が著作権侵害が蔓延することを積極的に企図していたとまでは認められないとした。

 こうしたことや、金子氏の2ちゃんねるへの書き込み、自身のWebページに記載した内容、金子氏が姉に送ったメールの内容、雑誌等に掲載されていた記事などから、金子氏は当時Winnyにより著作権侵害となるファイルが広くやりとりされていることを認識しており、こうしたソフトの提供が公然と行なえることではないことも知りながら、Winnyの開発・公開を続けており、こうした行為は独善的かつ無責任であり、批判されるべきものと指摘。自身のWebページなどで、著作権侵害を行なわないように呼び掛けていたことなどを考慮しても、金子氏の行為は幇助にあたるとして、罰金刑が相当であると結論付け、罰金150万円の有罪判決を言い渡した。

 閉廷後、金子氏は「Winnyは将来的に有用な技術であって、将来、その技術は評価していただけるものと信じています。それだけに、今回の判決は残念でなりません」とするコメントを発表。Winnyの公開に際しては、「『違法なファイルのやりとりをしないでください』と言い続けてきましたし、2ちゃんねるなどの書き込みでも違法なファイルのやりとりをしないようにと繰り返しお願いしてきました。私は、どうすれば私の真意をみなさんに理解してもらえるのでしょうか」と訴えた。

 今回の判決については、「私だけでなく、日本のソフトウェア技術者が曖昧な『幇助』の可能性に萎縮して、有用な技術開発を止めてしまう結果になることが何よりも残念です」として、裁判に対しては「控訴して、技術開発のあり方を世に問うていきたいと思います」とコメントした。


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URL
  関連記事インデックス:本誌記事に見る「Winny」開発者の有罪判決へ至る経緯
  http://internet.watch.impress.co.jp/static/index/2006/12/13/index.htm

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( 三柳英樹 )
2006/12/13 10:26

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