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京都地方裁判所
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著作権法違反幇助の罪に問われたファイル交換ソフト「Winny」の開発者・金子勇氏の論告求刑公判が3日、京都地方裁判所で行なわれた。検察側は金子氏に対し、著作権法違反の幇助により懲役1年を求刑した。
この裁判は、Winnyを利用して映画やゲームの著作権ファイルを送信可能な状態にしていたことが著作権法違反だとして、2003年11月に男性2人が逮捕された事件について、Winnyを開発した金子氏が著作権法違反の幇助にあたるとして争われているもの。先に逮捕された2人については、著作権法違反でいずれも懲役1年、執行猶予3年の有罪判決となっている。
検察側は、「Winnyは著作権法違反行為を助長するために制作・配布されたプログラムであり、これを不特定多数にダウンロードさせた被告人の行為は著作権法違反の幇助になることは明白」と主張。著作権法違反行為につながることを知りながら、正犯の2名をはじめとして不特定多数に対してWinnyを公開・配布した行為が、著作権法違反の幇助にあたるとした。
Winnyの機能については、Winnyに暗号化機能やキャッシュ機能などを実装することで匿名性を高くし、元の送信者を特定することを困難にすることで、利用者に対して警察等に摘発されることはないといった安心感を与え、著作権侵害を積極的に拡大させることになったとした。検索はファイル名によって行なわれるため、必然的に利用者同士が知っているファイル名にならざるを得ず、すなわちそれは著名あるいは価値のある著作物であることが前提となっていると主張。また、Winny2に実装された掲示板機能にも、掲示板のジャンルとして「映画」「音楽」「アニメ」といった項目が当初から設けられており、著作物が流通することを前提としていると指摘した。
さらに、ユーザーがアップロードしたファイルが他のユーザーにダウンロードされるほど、自身の同時ダウンロード数が増えるようになっているなど、利用者に対してダウンロードされやすいファイル、すなわち著作物ファイルをアップロードさせる動機付けを与えたと主張。この結果、著作物ファイルが無限に拡散することになり、著作権侵害を積極的に拡大させる結果になったとした。
また、Winnyの開発意図や背景の説明では、金子氏が2ちゃんねるのdownload板に行なった書き込みなどを引用。WinMXを利用した著作権侵害で逮捕者が出たことを受けて、新たなファイル交換ソフトについての話を行なっていたスレッドに開発を行なう趣旨の書き込みを行ない、ユーザーや作者が逮捕されることはないのかといった質問にも答えるなど、著作権侵害の可能性を知りながらWinnyを開発したことは明らかだと主張した。
金子氏の行為は著作権侵害の確定的犯意に基づく犯行であり、警察の取調べなどでも著作権侵害を意図していたと本人が供述しており、その内容は掲示板の書き込みなどとも整合するものであると主張。公判では、弁護側は供述調書などについては警察の作文であるとし、Winnyは技術的な興味から開発したものであると主張しているが、そうした主張には根拠がないとした。
以上のことから、検察側は金子氏の行為は匿名性を利用した巧妙かつ悪質な犯行であり、与えた社会的影響も大きく、被告人の責任は重大であると主張。被告に反省の態度は見られず情状酌量の余地も無いとして、懲役1年を求刑した。次回公判は9月4日で、被告側の最終弁論が行なわれる予定。
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関連記事:本誌記事にみる「Winny」開発者逮捕へ至る経緯
http://internet.watch.impress.co.jp/static/index/2004/05/18/winny.htm
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・ Winny開発者の裁判に村井教授が証人として出廷、検察側の主張に異議(2006/02/16)
( 三柳英樹 )
2006/07/03 14:55
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