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ヤフー、新執行体制へ。経営の若返りを図る〜新CEOには44歳の宮坂学氏

孫正義氏「モバイルインターネット全盛期を迎え、ヤフーとの連携はより重要に」


 ヤフー株式会社は3月1日、4月からの新年度の戦略について取締役間で議論を重ねた結果、経営と業務執行の分離を明確化し、執行体制の大幅な若返りを図ることで、攻めの成長戦略に舵を切っていくと発表した。

左からソフトバンクグループCEO 孫 正義氏、ヤフーの新CEOとなる宮坂 学氏、ヤフーの現社長兼CEO 井上雅博氏

 インターネット業界は変革期を迎えており、新たな顧客ニーズや競合が次々と生まれ、またスマートデバイスの急激な普及など利用環境も急速に変化する中、今後も競争に勝ち抜いていくためには、これまでに築き上げた基盤や競争優位性に加え、顧客ニーズに応える新たな施策を次々と打ち出していくことが不可欠であるとして、執行体制の大幅な若返りを図る。

 4月1日から社長兼CEOの井上雅博氏は、CEOの兼任を解き代表取締役社長専任に、また取締役兼CFOの常務執行役員の梶川 明氏はCFOの兼任を解き取締役専任に、取締役兼COO常務執行役員の喜多埜 裕明氏はCOOの兼任を解き取締役専任になる。また、井上雅博氏、梶川 明氏、喜多埜 裕明氏は6月の定時株主総会をもって取締役を退任する予定だ。

 4月1日以後の新執行体制では、執行役員兼最高経営責任者(CEO)に宮坂 学氏が就任。執行役員兼最高執行責任者(COO)兼メディア事業統括本部長には川邊 健太郎氏が就任。執行役員兼最高財務責任者(CFO)に大矢俊樹氏が就任する。また、新たにチーフモバイルオフィサー(CMO)のポストを設け、執行役員と兼任する形で村上 臣氏が就任する。

 執行役員はそのほか、BS事業統括本部長との兼任で志立正嗣氏、コンシューマ事業統括本部長と兼任で坂本孝治氏、事業戦略統括本部長と兼任で安宅和人氏、オペレーション統括本部長と兼任で西牧哲也氏、R&D統括本部長と兼任で谷田智昭氏が就任する。

 新執行体制のうち、再任はオペレーション統括本部長の西牧哲也氏のみ。現経営陣の平均年齢53歳から、新体勢では平均年齢41歳と、一気に10歳以上若返る。新CEOの宮坂 学氏は44歳。


より“攻め”側に舵を切る経営陣に

新しいヤフーをCEOとして率いる宮坂 学氏は44歳。「ヤフーには珍しく体育会系」(井上氏)という

 ヤフーは現在の経営陣も平均年齢53歳と、東証一部上場企業としてはむしろかなり若い経営陣と言える。

 「現体制では環境変化への対応は難しいのか」という質問に井上社長は、「いまヤフージャパンにあるものは、16年、17年かけて作り上げてきたもの。次に行くには、そのうちの何割かは壊して進む必要があるが、僕の場合は、愛情がありすぎてそれができないのでは。経営には守りと攻めのバランスがあると思うが、そういう意味で、守る方に重みがいってしまう可能性がある。守るものは守りながら、もう少し攻めの方に力を入れていく必要がある。そのためには、若い世代にバトンタッチするほうがいいかなと思いました」とコメント。

 井上社長はまた、「僕はSNSは苦手で、携帯電話も持ってはいますが鞄にしまい込んでいるんです。新経営陣はSNSなども使いこなしていますし、そういう意味でも世代交代する時期かと考えた」とコメントしたのに対して、孫 正義氏が「僕がいつ電話しても出ないんだよね。いま初めて、その理由がわかった」と突っ込みを入れると記者席からも笑いが起こった。

 ソフトバンクグループCEOの孫 正義氏は、「現経営陣は平均年齢53歳、新経営陣は平均年齢41歳、宮坂新CEOが44歳です。年齢は年取っても若い人はおられますが、インターネット業界は競合相手も若い人が新技をどんどん繰り出していく。ユーザーも若いですし、経営陣もある程度若さを保つべきだと前々から井上社長と話していました。バトンを渡すのは、不安もありますが、彼らに賭けてみようというのがいまの心境です」と語った。

 新CEOに就任する宮坂氏について、井上氏は「守りと攻めのバランスで言えば、いちばん攻め側に寄っているうちの一人。また、どちらかと言えば文化系の人材が多いヤフーの中では数少ない体育会系で、体が先に動くタイプ」とコメント。

 より具体的には、「前向き、アグレッシブな意見を出すことが多い。前回は3年前に組織変更を行ったが、それまでのメディアサービスからコンシューマ事業担当に大きく役割を変えた時に、『脱皮しないヘビは死ぬ』とか言い始めて、社内向けのプレゼンの1ページ目でそれを訴えていた。ヤフーでオークションやショッピングなどのサービスを続けていく中で、常に新しいことを恐れずにチャレンジしていく姿勢を持っている人間かなと思いました。いろいろなことを思い切ってメッセージとして社内にも出していってくれるので、オークションがやや伸び悩み始めた時期だったのですが、一気に明るいムードに変えてくれたという実績もあった」と宮坂氏に託した理由を挙げた。

 また、孫氏と井上氏は、これまでに印象に残っていることはという問いに、揃ってYahoo!BBというインフラ事業にソフトバンクが乗り出して、一気にブロードバンドが普及する起爆剤となったことと、ソフトバンクグループがボーダフォンを買収して、それまでクローズドなネットワークで、天気、ニュース、交通情報、すべてがそれぞれ会員向け有料サービスだったモバイルインターネットの世界に、オープンなインターネットを持ち込んだことを挙げた。

ソフトバンクグループCEO 孫正義氏。この会見の後、900MHz割り当てが正式に決まったことを受けての記者会見に向かう 日本での創業時からヤフーを率いてきた井上雅博氏。井上氏に点数を付けるならと聞かれ、孫氏は「点数を付けるなら98点。経営には100点はないが、ほぼ最大の成果を得た」と最大の評価をした

 孫氏に対しては、「昨日(2月29日)、900MHz帯割り当てでソフトバンクの申請が認められたが、今日の発表と関連性があるのか」という質問が出たが、孫氏は「PCもスマートパッドに置き換わっている。これからはモバイルインターネットの全盛期に入っていくということで、ソフトバンクグループとしてはヤフーとの連携はますます重要になっていく。ソフトバンクにとっても、ヤフーを持っているということで統合されたサービスというものはぜひやっていきたい。一方で、ヤフーは独立した上場企業ですから、ヤフーにとってもメリットがあるものでなければならない。双方が力を出し合うということは絶対にプラスだと思っている」と答え、ブロードバンドインフラ事業、モバイル通信事業に乗り出した時のように、インフラとサービスの両輪として、お互いにメリットがある形で協力していく考えを改めて強調した。




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(工藤 ひろえ)

2012/3/1 19:14