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レコーダーの私的録画補償金収入、デジタル移行でゼロに? 半年で1万579円


 一般社団法人私的録画補償金管理協会(SARVH)が株式会社東芝を相手取り、同社が販売したアナログチューナー非搭載のDVDレコーダー(デジタル専用録画機)に対する私的録画補償金の納付を求めて提起していた訴訟で、最高裁判所は8日付で、SARVH側の上告を退ける決定を下した。これにより、デジタル専用録画機は、補償金の対象となる「特定機器」に該当しないとした知財高裁の判決が確定した。

 私的録画補償金は、家庭内などの私的利用でテレビ放送をデジタル録画・複製することにより権利者が被る経済的不利益を補償するための制度。DVDレコーダーやブルーレイディスクレコーダー、デジタルビデオカセットレコーダーなどのデジタル録画機器や、録画用DVDなどの記録媒体に対して一定の割合で補償金を課し、それを著作権者に還元するという考え方だ。

 補償金は、課金対象となる録画機器および記録媒体のメーカーが商品の価格に上乗せするかたちで消費者から徴収。メーカー業界団体を通じてSARVHに納付し、SARVHから権利者に分配される。メーカーは、補償金を徴収・納付する協力義務があるとされている。2011年度上期のSARVH受領額は、録画機器1台あたり平均478.7円、下期が同484.8円だった。また、記録媒体1枚あたりは上期0.92円、下期0.86円。

 この制度について東芝は、デジタル放送は著作権保護技術(ダビング10)により複製が制限されており、アナログ放送のように録画・複製が無制限に行えるわけではないと主張。デジタル専用録画機においては「補償金の対象かどうかが明確化されるまでは、消費者から補償金を徴収することができない」とのスタンスをとった。

 これを受けてSARVHは、東芝が2009年2月に発売したデジタル専用録画機2機種で補償金を徴収・納付しなかったとして、2009年3月までに販売したデジタル専用録画機の補償金相当額の支払いを求め、2009年11月に損害賠償訴訟を提起していたもの。補償金相当額は提訴後も加算され、合計約1億4700万円に上った

東芝が2009年2月に発売したアナログチューナー非搭載のDVDレコーダー「RD-G503W」

 今回の決定について、勝訴が確定した東芝は9日付で「司法判断により今まで明確でなかった私的録画補償金の対象(特定器機の範囲)が明確になった妥当な判断と考えている」とのコメントを発表した。

 一方でアナログチューナーも搭載した製品については、補償金の課金対象であることが明確であるとし、東芝も補償金を徴収・納付している。

 しかし、2011年7月の地上波テレビ放送のデジタル移行に伴い、もはやアナログチューナーを搭載した録画機器が新品として販売されることはなくなった。

 東芝と同様、地上波テレビ放送のデジタル移行前からデジタル専用録画機を販売していたパナソニックも補償金を徴収・納付せずに販売していたことが明らかになっているが、SARVHによれば、市場がデジタル専用録画機のみとなった現在、他のメーカーも補償金を保留としている状況だという。

 その結果、録画機器に対する補償金は、2011年度上期の出荷分に対しては4億2628万644円あったのに対し、下期出荷分ではわずか1万579円だった(いずれもSARVHの2012年度の収入となる受領額)。

 さらに、今回の最高裁決定によりデジタル専用録画機器が補償金の対象外とされたことで、それらの機器で使用する記録媒体のほうの補償金も徴収できなくなり、ゼロになるものとSARVHではみている。

 なお、SARVHでは、東芝の別の期間における補償金相当額の支払いおよびパナソニックに対する補償金相当額の支払いを求める別の訴訟も提起していたという。その第1回口頭弁論が11月13日に開かれる予定だが、すでに同様の訴訟で敗訴が確定してしまったため、その後の見通しは立っていないとしている。


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(永沢 茂)

2012/11/12 20:51