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富士山・山頂まで「ストリートビュー」で登山可能に、吉田ルート撮影・公開
(2013/7/23 16:00)
グーグル株式会社は23日、富士山の登山道をGoogle マップの「ストリートビュー」で公開した。山梨県側から吉田ルートを辿って山頂まで登ることができる。標高3776mの剣ヶ峰、富士山本宮浅間大社奥宮、富士山頂郵便局など「お鉢巡り」のコースを回ることも可能。帰りは下山道で降りてくることもできる。
富士山に上る道のストリートビューはこれまで、富士スバルライン五合目などまでの車道部分は公開されていた。それが7月中旬になって、バックパック型のストリートビュー撮影機材「トレッカー」を背負った撮影隊を山頂などで目撃したとの報告がネットで寄せられていた。今回、撮影されたばかりの風景が早くも公開されたかたちだ。
2度目のチャレンジで山頂に到達、一合目~山頂まで1万4000枚以上のパノラマ
グーグルが吉田ルートを選んだのは、最も人気のある登山ルートであり、利用者も多いことから。山梨県の協力のもと、公道である登山道の撮影許可を得て撮影したという。北口本宮冨士浅間神社付近からスタートし、吉田ルートの一合目から山頂までの全長15km以上を撮影。1万4000枚以上のパノラマ写真に合成して公開している。
撮影は7月2日、お中道を含む一合目~五合目まで撮影した時点で、雨や霧に見舞われ、落雷の危険もあることからいったん撤退。7月11日・12日に再チャレンジし、快晴のもとで五合目から山頂、下山道などの撮影を完了した。
撮影に使ったトレッカーは重さが約18kg。これを背負った状態で、頭上約60cmの高さに、合計15個のカメラが付いた球体があり、2.5秒に1回のペースで位置情報とともに360度の風景を自動的に記録していく。
撮影隊はグーグルの社員ら約15名。ただし、今回は登山道ということで、実際にトレッカーを背負ったのは、委託したプロの登山家。また、撮影隊の高山病の危険を回避するために慎重に撮影を進めるなど、平地のストリートビュー撮影とは異なる苦労や困難があったという。
斜度が30度にも達する斜面やよじ登る必要のある岩場、火口に滑り落ちる危険もある雪渓、あるいは強風の中で重心の高いトレッカーを背負いながら、できるだけ水平を保ちながら同じ姿勢で登り続けるのは非常に難しかったという。また、一度バッテリートラブルにも見舞われ、撮影されていなかった区間を下って登り直したこともあったとしている。
“弾丸登山”はやめて……と山梨県知事、ストリートビューで予行を
23日夕方には、山梨県富士河口湖町にある富士ビジターセンターにおいて、横内正明山梨県知事も出席して、富士山をバックにストリートビューの公開を記念するテープカットが行われた。
横内知事は、世界文化遺産に登録され、日本の宝から世界の宝になった富士山がストリートビューで撮影・公開されたことに喜びを示すとともに、実際に訪れることができない人にも富士登山を仮想体験してもらい、感動を味わってもらえればとコメント。一方で、実際に富士登山を計画している人に向けては、あらかじめストリートビューで危険な個所や混雑しやすい区間を把握したり、写真に写り込んでいる登山者の服装や装備を参考にするなど、安全な登山のために役立てて欲しいと呼び掛け、“弾丸登山”は絶対に行わないよう繰り返し訴えた。
グーグルでも、同社公式ブログや「ストリートビューギャラリー」で富士山を紹介する際に、山梨県の公式サイトにリンクするなどして、安全な登山の呼び掛けに協力していくという。
グーグルの村井説人氏(パートナーシップ統括部長)によると、Googleでは2009年よりユネスコと連携して世界中の世界遺産を撮影してきており、日本でも京都の寺社や、岩手県の平泉などをすでにストリートビューで公開している事例がある。こうしたデジタルアーカイブ化の取り組みは、世界中のユーザーが世界遺産のストリートビューにアクセスし、その世界遺産をよく知ることができるようにすることが目的であり、次の世代に価値ある資産をいかにして残すのかというGoogleにとってのチャレンジでもあるとした。
今回、新たにストリートビューを撮影・公開した富士山は、日本人に愛され続けてきた山であるとともに、世界中の人に日本の象徴として考えられている山でもあると指摘。「富士山のストリートビューが、広く日本人に愛されてきた山の美しさやさまざまな表情を世界中の人々に伝えられる機会になれば」と語った。