趣味のインターネット地図ウォッチ
第165回
富士登山オフィシャルサイト/日本の世界遺産マップ ほか
(2013/7/11 06:00)
環境省・山梨県・静岡県が「富士登山オフィシャルサイト」オープン
世界文化遺産への登録で注目を集めている富士山の登山案内サイト「富士登山オフィシャルサイト」がオープンした。環境省・山梨県・静岡県が共同運営する富士登山の総合サイトで、富士登山の基本情報やアクセス方法、高山病対策、富士登山のためのトレーニング方法などさまざまな話題を扱っている。
地図情報も充実しており、吉田ルート・須走ルート・御殿場ルート・富士宮ルートの4ルートについてそれぞれ地図とともに特徴を説明している。また、4つのルートを傾斜・地形や山小屋の設置状況、アクセス性、マイカー規制の有無、登山口の利便性などさまざまな角度から比較しており、どのルートから登るか検討する際に参考になるだろう。
このほか、「富士山登山ルート全体マップ」や「富士山環境保全ガイドマップ(山梨県)」、「富士山環境保全ガイドマップ(静岡県)」、ルート別案内チラシ、登山者向け注意事項などを書いた小冊子、そのほかのハイキングコースのマップや宝永山遊歩道のイラストマップ、自然環境ポイントマップなどPDFファイルも数多く収録しており、富士登山のプランを練る時の参考資料として最適だ。トップページには緊急情報も表示されるので、登山の開始時などにアクセスして情報収集に役立てていただきたい。
URL
- 富士登山オフィシャルサイト
- http://www.fujisan-climb.jp/index.html
ESRIジャパン、日本の世界遺産の位置が分かる地図を公開
GIS(地理情報システム)ソフトの「ArcGIS」で知られるESRIジャパン株式会社が、日本の世界遺産を紹介するサイト「日本の世界遺産マップ」を公開した。同様のサイトはほかにもいくつかあるが、このサイトのユニークな点は、遺産区域の形状を地図上に表していること。自然遺産区域の形状については国土交通省の国土数値情報のデータを使用している。文化遺産区域の形状については出典は不明だが、「文化遺産オンライン」の「世界遺産と無形文化遺産」(http://bunka.nii.ac.jp/jp/world/h_index.html)に収録されている各スポットの参考資料(位置図)と照らし合わせてみたところ、ほぼ同じであることが確認できた。
アクセスすると左側に写真リスト、右に地図が表示される。写真は文化遺産と自然遺産に分かれており、地図を拡大・縮小させると、それに連動して地図上に表示されている世界遺産のみが左側にピックアップされる。これらの写真は社内で募集したもので、今後も画像が増えればマップに追加していく予定とのこと。各写真に対応するピンが地図上に配置されており、写真またはピンをクリックするとウィンドウがポップアップし、その世界遺産に関する情報が表示される。さらに「詳細」をクリックすると拡大画像も見ることが可能で、遺産面積などの数値も分かる。また、右上の「ブックマーク」をクリックして地域を選択すると、各地域にダイレクトに飛べる。
今回の富士山の文化遺産登録に際して「三保の松原」を含めるかどうかが問題となり、結局は含めることに決まったが、このマップでも「三保の松原」も遺産区域に入っていることを確認できる。ほかにも、遺産区域を見ると意外と狭かったり広かったりして新たな発見があり面白い。世界遺産について調べている人や、世界遺産巡りなどを考えている人におすすめのサイトだ。
URL
国土地理院、地殻変動の観測を強化している地域を紹介するページ新設
国土地理院は電子基準点などを利用して全国の地殻変動を監視しているが、その中でも一部の地域については地震や火山噴火の調査・研究のために監視を強化している。このような観測を強化している地域の地殻変動を紹介するページが7月1日に公開された。
観測を強化している地域では、その地域の特徴を考慮した測量手法を用いた観測を実施している。紹介ページでは、地図上で測量手法ごとに異なる記号を使って監視地区を示しており、どの地域でどんな測量手法を使った監視が行われているのかが一覧できる。測量手法は以下の4通り。
1)測距:測距儀(光や電波を使って距離を測る測量機器)を使って地殻の水平方向の変化を確認する方法
2)水準:レベル(地面に対する角度や傾斜を測る器具)で高さを測って地殻の上下方向の変化を確認する方法
3)重力:重力を測ることで地下の構造の変化を確認する方法
4)火山:「水準」とGNSS(全地球衛星測位システム)、重力、地磁気、干渉SAR(人工衛星の合成開口レーダーによる観測を同じ場所に2回行い、その差を取って地表の動きを確認する方法)を組み合わせた方法
これら4つの方法を使った地区が一覧表にまとめられており、地区名をクリックすると各地域の詳細ページが表示される。ここでは各地区の監視方法について地図を使ってさらに詳しく解説しており、そこで得られたデータをグラフで見られる。例えば「水準」の方法で監視している静岡~浜松市の地区では、監視の結果、長期的に掛川に対して西側では地殻の隆起傾向、東側では沈降傾向にあることと、浜名湖周辺の水準点において2000年以降のスロースリップイベント(ゆっくりとしたすべり現象)の時期の隆起速度がその前後に比べて少し大きめになっているという結果が報告されている。
監視が強化されている地区でどのような地殻変動が起こっているのかがよく分かるので、その周辺に住んでいる人などにとっては興味深い資料といえるだろう。このほか、過去に繰り返し観測していたが電子基準点の全国整備により役目を終えた地区や、事業の目的を達成した地区のリストも用意されている。
URL
- 観測を強化している地域の地殻変動
- http://www.gsi.go.jp/kidou/index.html
国土地理院、空中写真や明治の低湿地地図もKML配信開始
国土地理院が最近行った取り組みでもうひとつ興味深いのが、「電子国土Web.NEXT」で提供している空中写真・色別標高図・明治の低湿地地図をKMLファイル形式で公開したことだ。国土地理院がこれまでKML配信していたのは標準地図のみだったが、今回の措置により、空中写真や色別標高図、明治の低湿地地図についてもGoogle EarthなどのKMLファイル対応ソフトで読み込めるようになる。
このうち空中写真は1974~78年、1979~83年、1984~87年、1988~90年、2007年~の5つの時期で分けられている。Google Earth上でこれらのKMLファイルを読み込むと各時期の写真が表示されるので、同じ地域の空中写真の移り変わりを楽しめる。もちろんGoogle Earth標準の空中写真と見比べても面白い。電子国土Webではほかにも土地条件図や火山土地条件図、宅地利用動向調査などさまざまな地図が公開されているが、これらのKML配信にも期待したい。
URL
- 地図・空中写真のKML配信
- http://geolib.gsi.go.jp/download.html
東京カートグラフィックが新しい地図表現プロジェクト「cart.e」公開
当連載の前々回で「Location Business Japan(LBJ)2013」のレポートをお送りしたが、その展示会において個人的に印象的だったのが、地図のデザインや制作を手がける東京カートグラフィック株式会社によるプロジェクト「cart.e」だ。LBJのレポートでは紹介しきれなかった部分もあるので、ここで改めて「cart.e」の地図を紹介したい。
cart.eはウェブでの新しい地図表現を追求するプロジェクトで、地図の上に地図を載せる「map on map project」や、歴史上の場所を地図から見つける「japan historical point project」、地図にグラフィックデザインを融合させて新しい表現を追求する「new experience of map」などさまざまな試みを行っている。地図データは、世界地図は東京カーグラフィックが保有するデータを使用し、日本の詳細地図はOpenStreetMapを使用しているとのこと。それでは1つずつ見ていこう。
cities 1、2、3、4
世界地図上に名称および人口データを組み合わせた都市データを描画した地図で、大都市ほど円の直径が大きい。2、3、4については、各都市をクリックすると都市名が大きく表示される。
history
地図上のさまざまな場所に年号が掲載されており、年号をクリックするとその場所で起きた事件が分かる。同時に、地図の下方に引出線が伸びて年表の位置を指し示し、どれくらい前に起きた事件なのかが直感的に分かる。
Projection
地図投影法を地図とともに解説するコーナー。円筒図法、擬円筒図法、円錐図法、方位図法、その他と図法の種類ごとに分けて紹介している。
このほかに東京カートグラフィックの商品ブランドのイラストを重ねた「cart1/2」や、オリジナルカレンダーをウェブで見られる「cal2003」なども用意される。「rail tokyo」のようにまだ作成途中の作品もあるほか、仕様を検討中のプロジェクトもあり、今後どのような地図が追加されていくのか注目される。