奥川浩彦の「岐阜の山奥に移住しました」

第2回

移住生活に早くもトラブル! 引っ越し当日、天井から冷水が降ってきました

岐阜の山奥に購入した山荘風住宅

 今年の夏は暑い。暑い時期に寒さが原因で発生したトラブルを紹介しよう。少~し他人の不幸で涼しい気分になっていただきたい。筆者が移住先である岐阜の山奥(岐阜県加茂郡白川町)に引っ越したのは昨年の12月中旬。移住して約半年、大小さまざまなトラブルが発生したが、今回は引っ越し当日に遭遇した、この移住で最大のトラブルについてお伝えしよう。

浴室の天井から冷水が降ってきた

 川崎市のオフィス兼住居で引っ越し荷物の搬出をしたのが日曜日。月曜日の午前9時から岐阜の移住先で搬入を開始。午前中に引っ越し作業は完了した。事前に電気と水道は開通済み。立ち会いが必要なガスは引っ越し作業完了後の午後で予約済み。インターネット回線(およびケーブルTV)の工事は翌日の火曜日を予定していた。

 名古屋市の自宅マンションも川崎市のオフィスも都市ガスを使用していたが、白川町はプロパンガス。遠い遠い昔、長野県の諏訪市に住んでいたころにプロパンガスを使用した記憶があり、40年ぶりのプロパンガスだ。ガス事情に詳しくはないが、都市ガスに比べプロパンガスはコストが高め。燃焼エネルギーも高めな印象。都市ガスは川崎市なら東京ガス、名古屋市なら東邦ガスなど、大手ガス会社を利用するのが一般的だ。

 これに対しプロパンガスは、地域にあるガス会社を選択して契約する。検索すると白川町では、白川ガス協業組合、東邦液化ガスイワタニ東海など複数の選択肢があるようだ。筆者は移住した物件の仲介をしてもらった、岐阜県関市の不動産会社REALES株式会社くらそかから紹介されたイワタニ東海を選択し、移住前に電話とメールで開栓作業の日時を調整した。

 予定通りイワタニ東海の担当者が来て開栓作業が始まった。事前にガスボンベは設置済み。ガスメーター、ガスボンベなどはキッチンのすぐ外。給湯器もその近くにある。担当者の「火を点けてください」の指示でコンロのボタンを押すと火が点いた。まず基本となるガスの供給は問題なかった。

右側の窓がキッチン、ガスボンベはすぐ外。その左側に給湯器

 次は給湯。操作パネルをオンにして、蛇口のレバーを水側に回すと勢いよく水は出るが、お湯側にレバーを回すとチョロチョロと水が流れるだけ……トラブル発生だ。筆者が「お湯出ません」と答えると「給湯器本体が水漏れしてます」とのこと。玄関からグルッと建物を回って給湯器を見にいくと、カバーを外した給湯器の内部からポタポタと水が流れ出していた

給湯器のカバーを開けると、内部からポタポタと水が流れ出していた

 それを見て筆者は“ウァ~、給湯器を交換する必要があると高いぞ”と思った。筆者の名古屋市の自宅マンションは1996年に購入。20年ほどで給湯器を買い替えている。記憶は薄いが費用は10万円くらいだったと思う。パッと見、移住先の給湯器は自宅マンションのそれより大きい。いきなりウン十万円の出費は痛い。

 担当者が給湯器の中に手を突っ込んで何やら作業をし、取り出したのはパッキン(Oリング?)。「これを交換すれば直るかもしれません」とのこと。交換作業はほんの数分。キッチンの蛇口のレバーを操作すると無事にお湯が出た。費用は百数十円。ウン十万円が百数十円、筆者はその瞬間イワタニ東海の担当者が神に見えた。

 担当者と浴室に移動。最後は浴室の天井に設置された浴室暖房・浴室乾燥機の動作確認だ。浴室暖房をオンにした途端に浴室の天井から冷水が落ちてきた。かなりヤバイ!

浴室の天井の換気扇&浴室暖房&乾燥機から水が落ちてきた

 いったん浴室暖房を止めて、水漏れ箇所を特定するため、天井のカバーを外して再び浴室暖房をオン。降り注ぐ冷たい水と格闘しながら、プラスチック部品が割れていて、原因はそこからの水漏れと特定してくれた。

プラスチック部品(熱動弁)が割れていた

 浴室暖房・浴室乾燥機の仕組みは、給湯器でお湯を沸かし浴室の天井に設置した熱交換器(温水コイル)にお湯を循環。温められた熱交換器から温風を吹き出し暖房や乾燥を行う。割れていたプラスチック部品は“熱動弁”と呼ばれるもので、温水の供給をオンオフしたり、流量を調整したりする。

 交換する部品の手持ちはなく、イワタニ東海で部品の新規発注をするより、メーカーであるリンナイの修理業者が在庫を持っていれば早く対応ができるとのこと。リンナイの修理業者に連絡を取ってもらい部品在庫を確認、ここからはバトンタッチとなった。

 数日後、リンナイの修理業者が来て熱動弁を交換し、浴室暖房をオンにすると……残念なことに天井から冷水が落ちてきた。熱動弁と別の破損箇所があるらしい。冷水が降り注ぐ中、照明の角度を変えながら水漏れを探すも、なかなか見つからない。さながら医療ドラマで血の海となった腹部に手を入れ、“吸引して……出血箇所が見つからない”といった感じだ。格闘の末、温水コイルの銅パイプが割れていることを突き止めた。温水コイルも交換することとなった。

熱交換器(温水コイル)の銅パイプがパックリ割れていた

 交換済みの熱動弁は4000円くらい。温水コイルはかなり高そう。温水コイルの手持ちはなく、メーカーから取り寄せて、入荷後の交換となる。それまでは浴室暖房・浴室乾燥機を使用しなければ、普通に入浴は可能なので問題はないと思っていた。ところが、深夜に浴室からザザーッと水が流れ落ちる音が聞こえた。ドアを開けると天井から冷水が落ちていた。別の日には早朝に同じ現象が発生していた。“どうゆうこと?”

 この給湯器、および浴室暖房・浴室乾燥機は外気温が下がると、凍結防止機能が自動的に働き、水の循環を行う。深夜から早朝にかけ、外気温がしきい値以下(氷点下?)に下がると操作パネルに雪だるまのマークが表示され、水の循環が始まる。浴室暖房・浴室乾燥機を使用していなくても、循環が始まると温水コイルの亀裂から冷水が漏れてしまう。

 知らずに深夜に入浴をすると、天井から湯船にザザーッと冷水が突然降ってくる。ということで、修理完了まで夜遅い時間から早朝に入浴ができなくなった。帰宅の遅いサラリーマンだと大変だが、筆者は自営業なので、しばし昼間に入浴することとなった。

 破損した温水コイルの交換が完了したのは、引っ越し翌週の火曜日。熱動弁と温水コイルの交換費用は作業費などを含め4万6000円ほど。少々痛い出費となった。

 熱動弁と温水コイルの破損の原因は、電源が切れた状態で氷点下に凍結防止機能が働かなかったこと。この物件は前オーナーが亡くなってから1~2年空き家だった。その間、ブレーカーで家中の電源をオフにしたため、給湯器の電源供給が断たれ、凍結・破損となった。

 おそらく住人がキッチン・洗面所・浴室でお湯を使えば、その都度、給湯器は燃焼・加熱がされるが、冬の間ずっと燃焼なし、室内の暖房なし。外気温はもちろん室温もマイナスとなり、熱動弁と温水コイルが厳しい環境に置かれていたと思われる。

 今回のトラブルを物件購入前に確認するのは難しい。給湯器の動作確認をするには電気・水道・ガスが使用できる状態でなければならない。移住でお世話になった白川町の移住サポートセンターの人も「空き家の水回りは問題があると覚悟してほしい」とのことで、空き家となった期間が長ければ長いほど住宅設備はトラブルが発生する確率は高くなる。空き家を購入する人は、こうしたトラブルに注意と覚悟が必要だろう。

関市の不動産会社で購入申し込みをし、川崎市に戻る途中で物件をチラ見。まだガスボンベは設置されていなかった

 白川町も夏の昼間は暑い。先日、エアコンを初稼働させるとドレンの排水管が詰まっていて、エアコン本体から水漏れが発生した。運悪く水滴が落ちた先はベッド。そのようなさまざまなトラブルは、またいつか紹介しよう。

奥川浩彦@ アイピーアール

パソコン周辺機器メーカーのメルコ(現:バッファロー)で広報を経て、2001年にイーレッツの設立に参加し、USB扇風機などを発売。2006年、iPRを設立し、広報業とライター業で独立。INTERNET Watchでは主に税金関連の記事を執筆。Car Watchではモータースポーツ関連のフォトグラファーとして活動中。