奥川浩彦の「岐阜の山奥に移住しました」
第5回
地方移住で知っておくべき“空き家あるある”とは? ネガティブな話もいろいろ聞きました
物件探しは苦戦<その3>
2025年10月8日 06:55
筆者が移住したきっかけは、オーディオ販売業を営む同級生の「田舎は爆音出しまくりだぜ」の一言だった。先日、その同級生がSNSに「ジャズレコード1000枚を顧客から買取した」と書いていたので、オフィスのある旧・小原村(おばらむら。現在は合併して愛知県豊田市)へ。1000枚の中からジャズファンなら誰でも知っているド定番の名盤十数枚を、オーディオ部屋のレコード壁に飾るアイテムとして購入した。
さて、今回は苦戦する物件探しの3回目。2024年夏、先が見えなくなった移住計画はゼロから再スタートし、いくつかのサイトで100軒以上の物件を閲覧し、候補を十数軒に絞り込んだ。次のステップは物件をさらに絞り込んで、実際の物件を見に行く内見だ。(「物件探しは苦戦」全4回のうちの<その3>)
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“空き家あるある”やご近所付き合いなど移住検討者に有用な情報をいろいろ知りました
2024年9月下旬、岐阜県加茂郡白川町の空き家バンクへ書類提出が済み、運営する「白川町移住・交流サポートセンター」と連絡を取った。絞り込んだ12の物件について、電話で一つ一つ丁寧に説明してもらった。筆者のExcelファイルに残された各物件のメモ書きを見返すと「大きな農地が3つあり、売主は農業従事者への売却を希望」「水回りの修繕が必要」「病院が近く救急車のサイレンが聞こえる」「土地の境界線問題があり、解決するまで住めない」「親が亡くなったままの状態で家財がそのまま」「近所付き合いが濃厚」などとある。ネガティブな印象を受ける内容が多いと思われるかもしれないが、移住検討者の物件探しには有用な情報だ。
少し説明しよう。「水回りの修繕」は深刻らしい。田舎の古い物件はトイレが離れにあったり、汲み取り式だったり今風ではない物件がある。この場合、浄化槽を設置し、今風の温水洗浄便座付きの水洗トイレにリフォームすると、100万円級の費用が発生するそうだ。キッチン、浴室、洗面所、トイレの水回り4カ所フルリフォームは数百万円となり、物件の購入価格を上回る可能性がある。
「親が亡くなったままの状態」は空き家あるあるで、各自治体の空き家バンクの物件をいくつか閲覧すると、キッチンは洗剤やスポンジ、浴室はシャンプーなどがそのまま、衣類がハンガーに吊されたまま、という物件は珍しくない。考えようによっては、ほぼ手ブラで引っ越してその日から住めると言えなくもないが、実際には売主が処分(田舎の広い家の家財は4トントラック1台分を超える?)するか、値引きしてもらって買主が引き取るか交渉になるのだろう。
「近所付き合いが濃厚」は、名古屋市出身、神奈川県川崎市から移住を希望する、都会育ちの筆者への配慮だと思われる。ご近所付き合いの濃さは田舎と都会で差がある。長く住み続けている人が多い田舎と、賃貸物件に数年間だけ住む人がいる都会は差があって当然だろう。都会でも子どもがいるファミリーの人はご近所付き合いがそれなりにあると思う。
筆者自身、名古屋の自宅は子どもが小さなころから長く住んでいたので、町内会のキックベースやドッジボールの監督をしたこともあり、子どもの同級生とも面識はあった。
川崎市に単身で12年ほど住んでいて、窓からお神輿を担ぐ音が聞こえることはあり、おそらく子どもがいる家庭は参加していると思われるが、筆者は縁なしだった。町内会費も支払ったことはないし、町内の行事に参加することもなかった。
そんな筆者も白川町に移住してからは町内会費も払っているし、霊園の清掃、花壇の清掃、消火栓の点検など地域活動にも参加している。この連載が始まってからは、参加されている町内の人から「浴室の水漏れ大変でしたね」「お仕事で写真を撮られてるんですよね」など記事を読まれた人がいて、突然移住してきたジジイが何者なのか、気になっている印象だった。
ずっと田舎に住む人が都会へ引っ越すと、ずっと都会に住む人が田舎へ引っ越すと、それぞれ習慣の違いに驚く人がいると思うが、“郷に入っては郷に従う”だと思われる。
白川町移住・交流サポートセンターに何度か追加の質問をして、リストアップした中から絞り込んだ3軒を見に行くこととなった。
山奥で頼りになるのはカーナビ?スマホの電波が届かない物件もありました
アットホームのサイトから問い合わせた3つの物件のうち、ストリートビューがなく建物が特定できなかった発電所近くの物件は「昨日、成約済みになりました」と連絡があった。白川町黒川地区の物件は名古屋の不動産会社が担当、「遠くて内見に同行できないので、川崎に鍵を郵送するからご自身で見に行って欲しい」とのこと。もう1つは白川町の隣、八百津町の物件。可児市の不動産会社の人からメールと電話をいただき、詳しく説明をしてもらった。
気になった点は「私のソフトバンクの携帯は電波が届かない」とのこと。筆者のIIJのdocomo回線とauのpovoが使えるかは現地で確認するしかない。インターネット固定回線を引き、Wi-FiエリアであればLINEなどで通話はできるが、電話が全く使えない家に住むのは難しい。
余談だが、2022年のWRCラリージャパン(愛知・岐阜)の取材で事前に撮影ポイントを下見した際、山奥に入ると電波が届かずGoogleマップが表示されなかった。山奥で頼りになるのはカーナビだ。下見で選んだ撮影ポイントに「紅葉」「すすき」と名前を付けてナビに登録。ナビ本体に地図情報を持っているカーナビは、電波が届かない山奥でも次の撮影ポイントへのルートを表示してくれた。
名古屋の自宅マンションを購入したときは、名古屋市守山区・南区・瑞穂区のマンションなどを見に行ったが、今週はこの物件、来週はこの物件……というように何日かに分けて内見に行った。対して今回、川崎市~白川町はクルマで片道4時間半~5時間。近くはない。できれば複数の物件の内見をまとめて行いたい。
実際に内見を行う際、売主様が同席を希望するケースがある。白川町移住・交流サポートセンターの人、売主様、不動産会社の人、各人の都合に合わせて日時を決めるのに少々時間を要した。
5つの物件をまとめて1日で内見する計画!早朝の中央道、5時間のロングドライブで岐阜へと向かいました
内見の日程調整を行っていた2024年10月上旬、アットホームから「おすすめ物件メール」が届いた。白川町、2階建、10LDK、580万円。「広いなぁ、チョット高いかなぁ」と思いつつ、普通の住宅とは異なる山荘風の物件の画像に惹かれるものがあった。
リンク先の画像をチェック。アットホーム簡易地図からGoogleマップで建物を特定し、隣の住宅との距離を計測すると約40mで、少し近い印象だった。近くを通る県道にストリートビューはあるが、県道から物件まで約50mの下りスロープはストリートビューがなく、県道のストリートビューでは建物の屋根しか見えず、家屋の詳細を見ることはできなかった。この物件もお問い合わせから「実際に物件を見たい」にチェックを付けて送信。すぐに物件を管理する関市の不動産会社「REALES株式会社くらそか」からメールで返信があり、内見の日程調整に加えた。
メインと考えていた白川町移住・交流サポートセンターの物件の日程は
【10月21日】
10:00 白川町移住・交流サポートセンターでヒアリング
11:00 黒川地区(持ち主様立ち合いのため時間は長め)
12:30 白川北地区 2軒
13:30 終了
これにアットホームの物件のうち、おすすめ物件メールが届いて最後に加えた物件を15時、鍵を郵送で受け取っている黒川地区の物件を8時に設定、この日は計5つの物件の内見を予定した。八百津町の物件は売主様立ち会いで、この日は日程が合わず翌週となった。
2024年10月21日、白川町到着朝8時から逆算し、3時に川崎市を出発、中央道を使って5時間のロングドライブで内見に向かった。今回はここまで。次回は物件探しのラスト、内見から購入物件の決定までをお伝えしたい。(「物件探しは苦戦<その4>」に続く)
レコードをポスター的に部屋に飾りました
INTERNET Watchでこの記事を読まれている読者は、ケータイWatchやGAME Watchより少し年齢層が高いと思われる。読者の中にはレコードを聴いていた、今でもレコードを持っている人がいるだろう。次の写真は、同じアルバムのCDとレコードを並べたもの。CDと比べレコードのジャケットは大きく、ポスター的に部屋に飾るのに向いている。その次の写真は、現在のオーディオ部屋の壁に飾られたレコードだ。
移住前のレコード壁の設置の様子も、NASから見つけ出した5枚の写真で見ていただこう。
レコードを壁に飾る際に便利なのがフレーム(額縁?)だ。10年前、筆者が川崎に住んでいたときに購入したのはIKEAの「GLADSAX」という製品で、IKEAに確認したところ、2017年に販売を終了している。現在IKEAで販売されているのは「LOMVIKEN(ロムヴィーケン)」(1499円)。旧製品は透明部分がガラスで、筆者実測の重さは930gくらい。現行品は透明部分が樹脂となり、重さは450g。軽くなったので石膏ボードの壁などにも飾りやすくなった。