奥川浩彦の「岐阜の山奥に移住しました」
第4回
地方移住するのにGoogleマップが大活躍しました
物件探しは苦戦<その2> 東白川村周辺にエリアを広げて物件を探す
2025年10月2日 06:55
前回に続き、移住の物件探しについてお話ししよう。簡単に見つかるだろうと思っていた物件探し。2024年夏、移住計画は苦戦し、先が見えなくなった。川崎市のオフィス兼住居の家賃値上げの知らせをきっかけに奮起。「1カ月で探して、1カ月で契約して、1カ月で引っ越ししてやる」と根拠も勝算もない3カ月自力移住計画が始まった。(「物件探しは苦戦」全4回のうちの<その2>)
移住先をゼロから検討し直しました
移住の候補地としていた、娘と孫の住む岐阜県加茂郡東白川村で物件が見つからないので、移住先をゼロから検討し直すこととし、いくつかの対策を考えた。
①エリアを広げる
②物件探しに関するサイト(情報収集)を再確認する
③仮住まい方式もありとする
①エリアを広げる
東白川村の物件が見つからないので、移住先として周辺の自治体も候補地とした。具体的には東白川村に隣接する中津川市、白川町。さらに自宅マンションがある名古屋市方面の七宗町、八百津町、美濃加茂市なども対象とし、各自治体が運営する空き家バンクなどを確認した。
②物件探しに関するサイトを再確認(情報収集)する
自治体が運営する空き家バンクだけでなく「みんなの0円物件」 「空き家ゲートウェイ(100均物件)」 「家いちば」や、アットホーム、SUUMOなどの不動産情報でも中古物件を探した。
③仮住まい方式もありとする
時間をかけて探せば東白川村の物件が見つかるかもしれない。なので、いったん近隣の自治体の賃貸物件に入居、または近隣の物件を購入して1~2年後に東白川村に移る“仮住まい方式”も許容することにした。近くに住めば物件探しはしやすくなる。地方都市の家賃は都会より安い。物件を購入した場合は(うまく行くか分からないが)、後日売却すればよい。仮に買って売って100万円の損失が出ても、2年間で割れば“家賃4万円相当”という甘い考えだった。
清里に移住した知人宅を訪問してモチベーションが上がりました
少し時計の針を戻そう。2024年4月、そろそろ物件探しを始めようと思ったころ、仕事で訪れたF1日本グランプリのメディアセンターで、知り合いのカメラマンから「清里(山梨県)の物件を購入した」と聞いた。
2024年9月、ゼロから自力で物件探しを始めたころ、メディアセンターで聞いた物件購入の話を思い出し、田舎物件購入のノウハウを聞きに清里を訪ねることにした。ご年配の人は記憶にあると思うが、雑誌「an・an」が火付け役となり1970~80年代には“高原の原宿”と呼ばれた清里ブームが起こり、ナウいヤングたちがファンシーでメルヘンチックな清里を訪れた。記憶が正しければ清里を訪れるのは四十数年ぶり、訪問前に清里駅前に寄り道をしてみた。
この日は残暑が厳しく、中央道の須玉インターチェンジを降りる直前、クルマの外気温計は34度だった。清里駅でクルマを降りると涼しい。外気温計は10度下がって24度となっていた。調べると、須玉インターチェンジは標高476m、清里駅は1275m、標高差は800m。インターチェンジから清里駅まで約20Km、クルマで20分ほどだが別世界だった。
駅前には以前はお土産屋さんだったヨーロッパのお城風の建物があり、「管理物件」の文字が見られる。ブームが去り、当時坪500万円だった清里駅前の地価は3万円に下落したらしい。
知人が購入した物件は駅から車で3分ほどにある「清里の森」という別荘地。1980年代後半に高原リゾートの別荘地として整備され、テニスコート、コンサートホール、BBQ施設、フィールドアスレチックなどさまざまな施設を持つ別荘地だ。
建物付き売り物件のサイトを見ると、記事執筆時点で300万円台~4000万円台の物件が掲載されている。別荘が建つエリアにクルマで入るにはセキュリティゲートを通過する必要がある。知人にゲートまで迎えに来てもらい、白樺林を抜けて知人が購入した物件に到着した。
知人は東京都内に自宅があり、移住ではなく別荘として利用している。楽器を演奏されるそうで、“田舎で爆音”という点は筆者と近く、実際に大音量でオーディオを聴かせてもらった。この別荘地は標高1400mほどで、夏は涼しいが冬の寒さはかなり厳しいとのこと。積雪は数十センチくらい、過去には1m超えの積雪も記録されている。
管理された別荘地なので、家の前の道は除雪してもらえるが、自分の敷地内に積もった雪は自力で雪かきをする必要があり、クルマを敷地内に入れるのに1時間を要したことも。加えて、常時住んでいないのでトイレの温水洗浄便座が凍結して破損したとのこと。この移住連載の第2回で紹介したように、筆者も凍結による給湯器の破損トラブルに遭遇した。住んでいないと室内が氷点下となり、寒冷地の水回りは注意が必要だ……と、このときは他人事だった。
物件購入に関する費用やその後のDIYなど参考となる話を聞いたが、清里訪問で最も価値があったのは「3カ月で移住してやるぞ」という筆者のモチベーションが上がったことだ。清里から戻り、移住先探しは加速した。
インターネットで物件探し、Googleマップが大活躍しました
前述した3つの対策のうち、①の近隣エリアの空きやバンクを確認すると、人口7万2000人の中津川市は物件が多く、バリエーションも豊富。駅から徒歩十数分という普通の住宅もあるが、市内から東白川村方面に向かう国道256号沿いはキャンプ場や別荘地が点在していて面白そうな物件もチラホラある。白川町の空き家バンクは50軒ほど登録があり、価格も手頃な印象。七宗町、八百津町の物件はやや少なめだった。
②の「みんなの0円物件」空き家ゲートウェイ(100均物件)」「家いちば」は全国レベルではそこそこ物件はあるが、筆者のように“東白川村の近く”と地域を特定するとほぼ該当なし。また、安~い物件は修繕やリフォームに時間と費用がかかる可能性が高い。アットホーム、SUUMOは検索条件が細かく設定できるので物件探しの効率は高く、自治体の空き家バンクと並び、物件探しの有効な手法となった。
100以上の物件を閲覧したと思う。筆者の目的は“田舎で爆音”なので、該当する物件と近隣の住宅との距離が知りたい。Googleマップの航空写真で物件を特定したいが、物件情報に表記されているのは大まかな地名のみ、住所などの情報は非公開だ。比較的親切だったのはアットホームのサイト。簡略化した地図表記があり、Googleマップで物件を特定できるケースが多かった。
最終的に物件探しのメインとなったのは白川町の空き家バンク。あらためて当時作成したExcelファイルを見ると、空き家バンクの約50物件から12物件をリストアップしている。その表には築年数、価格、面積……などに加え、GoogleマップのURLの蘭があり、12物件中4物件だけ場所が特定できた。
例えば白川町黒川は東西約13.5km、南北約7km。このエリアから掲載された写真の建物を探し出す。物件情報の写真から「屋根の色は青」「南側の斜面に建ち背後は山」「家の前の道は西から東へ傾斜」などを読み取り、その物件を航空写真で特定できたのが4軒だけだった。
“田舎あるある”で別の問題にも直面した。1つは“Googleマップの航空写真の解像度が都会より低い”問題。筆者の地元、名古屋市瑞穂区と、アットホームで見つけた白川町のある物件付近を比べると解像度の差は歴然だった。
もう1つは“ストリートビューがない”問題。アットホームの簡易地図で発電所近くの物件であること、建物の外観写真に高圧線が写り込んでいることは分かったが、この地域は川沿いの通りにだけストリートビューがあり、住宅付近はストリートビューがなく、物件の特定、近隣の確認はできなかった。ちなみに筆者が購入した物件もストリートビューから建物を見ることはできなかった。
絞り込んで白川町の空き家バンクで12軒、アットホームで3軒ほどをリストアップ。川崎のオフィスでできることはここまで。白川町の空き家バンクは問い合わせ登録フォームから連絡をし、メールで送られてきた「空き家バンク利用登録書」を記入し、「身分証明書のコピー」「市町村税に滞納がないことの証明書」などを用意して送信した。
アットホームは各物件の問い合わせで「実際に物件を見たい」にチェックを付けて送信。アットホームに掲載されている物件は、地域の不動産会社が扱っている物件をアットホームに登録・掲載しているもので、間取り図の有無や写真点数など物件ごとに差がある。問い合わせの回答は各不動産会社からメールや電話で連絡が来る。
9月下旬、物件探しは次のステップ、リアルな内見に向けてさらなる物件の絞り込みに進む。急展開もあり、一気に進展する話は次回で。(「物件探しは苦戦<その3>」に続く)