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Amazon.co.jp、連載形式で電子書籍を自動配信する「Kindle連載」開始

 Amazon.co.jpは25日、連載形式の小説やコミックをエピソードごとにKindleに自動配信する「Kindle連載」を開始した。

「Kindle連載」の販売サイト

 「Kindle連載」は、Kindleの電子書籍や電子コミックを、ユーザーに連載形式で自動配信するサービス。米国では「Kindle Serials」として2012年9月に開始されており、一度購入すると作品が一冊の本として完結するまで、すべてのエピソードが自動的にKindle端末やアプリに配信される。新しいエピソードの配信時にはメールでも通知される。

 電子書籍のファイルは、最初が「第1話」のみのファイル、更新されると「第1話+第2話」のファイルになるといった形で、連載が進むごとにエピソードが増えていく。途中から購入した場合でも、初回エピソードからその時点での最新エピソードを含んだファイルが配信される。

 サービス開始時点では、小説・エッセイでは林真理子氏の「美女入門パート12」、藤井太洋氏の「UNDERGROUND MARKET ヒステリアン・ケース」など、コミックでは鈴木みそ氏の「マスゴミ」、うめ氏の「東京トイボックス0」など、計18作品を販売する。

 販売作品にはタイトルに「Kindle連載」であることが示され、内容紹介欄に想定連載回数や配信スケジュールなどが明記される。作品が完結すると通常の「Kindle本」と同様の販売となり、「Kindle連載」の枠からは外れる。

販売タイトル・内容紹介で「Kindle連載」であることを明示
Kindle Paperwhiteで連載ラインナップを表示したところ

「以前のエピソードを読み返せない」など、紙の連載での問題を解決するサービス

Amazon.co.jp代表取締役社長のジャスパー・チャン氏

 Amazon.co.jp代表取締役社長のジャスパー・チャン氏は、「昨年10月25日に(日本で)Kindleストアを立ち上げて、今日でちょうど1年になります。この1周年という節目に、Kindleストアに新たに加わった新サービス、Kindle連載を紹介させていただくことをたいへん嬉しく思います」と挨拶。Kindle連載は、読書を楽しむユーザーのニーズに合わせた、Amazonならではのユニークなサービスだとアピールした。

Kindleコンテンツ事業部事業部長の友田雄介氏

 Kindleコンテンツ事業部事業部長の友田雄介氏は、「Kindle連載は、連載作品の新しい楽しみ方を提案するサービスで、これまでの紙の連載の問題を解決するサービス」と説明。紙の本における連載では、「最新号が発売されるたびに購入する必要がある」「連載途中からだと以前の号を読み返せない」「いつ単行本になるかわからない」といった問題があったが、Kindle連載ではこうした問題がないとした。

 また、販売を開始したKindle連載の中には、朝日新聞の連載記事「教育進化論」を配信していくといった形もあると紹介。コンテンツを記事単位のような分量で配信する「マイクロコンテンツ」の販売も各社が取り組みを進めているが、細かいコンテンツが大量に売り場に並ぶ形になってしまうという問題があり、Kindle連載は一定のテーマの記事がまとまった形で最終的には一冊の本になるという点で、マイクロコンテンツの進化系にあたる販売方法だとした。

 連載が何らかの事情で途中で中止になった場合などは、返金という形で対応すると説明。また、通常の雑誌掲載作品のように、単行本化の際に内容に修正を入れるといった対応も可能で、ユーザーに対してはアップデートを通知するが、アップデートするかは選択できるようにするとした。

 今回の18作品については、Amazonから出版社などに呼び掛けて参加してもらったもので、連載は終了すると通常のKindle本としての扱いとなっていくため、今後も順次作品を追加しながら、20作品前後をKindle連載としてラインナップしていきたいという。

 作品数については、出版社や著者からの参加希望や、ユーザーからの反応などを見て今後検討していくが、連載中止のようなトラブルはできるだけ避けたいと説明。参加を出版社のみに限ってはいないが、Amazonが連載作品に対して編集や進行といった作業をすることはなく、完成済みの作品を納入してもらうという立場であり、現時点では「Kindleダイレクトパブリッシング」のように個人にKindle連載を開放する予定はないとした。

作家の藤井太洋氏

 今回、Kindle連載を開始した作家の藤井太洋氏は、提示された連載フォーマットに長さの指定がなかったことにとても驚いたとして、「これでやっと、物語が求める長さの作品を作れると思った」とコメント。「これまでの小説の連載では原稿用紙50枚分ぐらいが相場だが、1時間のテレビドラマ1本分に相当する100枚ぐらいのボリュームで話が書けるということで、新たなチャレンジができそうだ」と語った。

 また、読者の立場からKindle連載を見た場合には、多様なジャンルや価格、出版社の作品が並んでいることに驚いたとして、「もっと自由な、もっと多様な作品がKindle連載の中から生まれてくることに期待している」とコメントした。

(三柳 英樹)