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NTT「光サービス卸」が市場競争を阻害──地域系通信事業者が総務省に要望書

 地域系インターネット接続サービスを提供する222団体は5日、NTTの「光アクセスのサービス卸(以下、光サービス卸)」に関する要望書を総務大臣に対して提出した。同サービスが電気通信事業法やNTT法の趣旨から逸脱している可能性があるとし、公の場における一層の議論や、制度的措置の導入を求めている。

6月5日に開催された記者会見の模様

 要望書は、株式会社ケイ・オプティコムをはじめとした光ファイバー通信事業者9団体、株式会社ジュピターテレコムなどケーブルテレビ通信事業者213団体の連名で提出。5日午後には、代表8団体が記者会見を開催し、狙いを説明した。

 ここでいう光サービス卸とは、NTTが5月13日に発表した新しいサービス「光コラボレーションモデル」のこと。これまでNTT東日本・西日本がエンドユーザーに対して提供・販売していた光ファイバー系のインターネット接続サービスを、希望する事業者に卸売りし、その提供を受けた事業者が独自のサービスなどを付加した上で、販売できるようになる。

 ケイ・オプティコムによると、これまでもNTTの設備を外部事業者が借り受けて販売するケースはあったが、その際はNTTと事業者の間で利用約款を策定し、公平な条件であるか調査した上で総務大臣が認可するという手順を踏んでいた。これは電気通信事業法において「相互接続制度」として明確に規定されている。

 対して、今回の光サービス卸は「卸電気通信役務」という制度を活用したもので、NTTと事業者の間でごく一般的な相対取引を行う。このため、契約価額なども不透明となる。巨大企業ゆえにさまざまな規制法律が適用されるはずのNTTが、いわば盲点を突く形で拙速に提供するのが光サービス卸であり、市場競争への影響が考慮されていない───というのが、地域系事業者の主張だ。

問題点の概要
本来の「卸電気通信役務」の意図とは異なった利用がされてしまう懸念も

 また、光サービス卸は、活用の仕方によってはNTTグループの再統合・一体化に繋がりかねないとの懸念も示された。NTTの光ファイバーサービス「フレッツ光」は市場シェア70%を超えており、グループ会社であるNTTドコモは携帯電話市場において極めて大きな存在感を誇る。結果、NTTドコモが光サービス卸を活用してセット割引的な運用を行ってしまうと、市場支配が強まり、健全な市場競争を損なう可能性があるという。

 加えて、光サービス卸によって需要がNTTグループのサービスに集中してしまうと、設備面での競争停滞が起こりうるとも指摘する。実際、通信速度1Gbpsを超えるような超高速通信サービスが地域系事業者によって提供され、後にNTTが追随したケースもある。1事業者が市場を支配してしまうと、こういったサービス改善は起こりづらくなる。

 このほか、法人ユーザーなどが複数の光アクセス事業者の回線を同時契約し、冗長化を図るといった手法は複数の事業者が市場参入しているからこそ実現できる。公正な競争の継続は、価格や通信の信頼性の面でも、ユーザーにメリットがあると考えられる。

NTTグループ再統合への布石?
競争によって通信速度などが進化してきた

 要望書ではこれらの問題を指摘した上で、1)光サービス卸が競争環境におよぼす影響について公の場で議論すること、2)光サービス卸が公正な競争を阻害することのないように制度的措置を講じること、3)措置が講じられるまでの間に光サービス卸が提供されないようにNTTを指導すること──を具体案として提言している。

要望書の要旨

 5日の記者会見には、ケイ・オプティコム代表取締役社長の藤野隆雄氏が出席した。藤野氏は「光サービス卸は、NTT東西の光アクセス設備を相互接続ではなく、卸電気通信役務として何ら制約なく他の事業者に提供するもの。設備競争に重大な影響を与え、大規模プレーヤーによる市場支配を招きかねない」と、大きな懸念を示した。

 現在、情報通信審議会では2020年代に向けて、NTTの在り方も含めた中長期的なICT政策を審議しているという。一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟の専務理事である松本正幸氏は、審議が進められる最中ながら光サービス卸が発表されたことについては「唐突な印象を受けた」と発言。公の場において、市場への影響についての議論を積み重ねる必要があるとした。

ケイ・オプティコム代表取締役社長の藤野隆雄氏
日本ケーブルテレビ連盟 専務理事の松本正幸氏

(森田 秀一)