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オリックス、業務ソフトメーカーの弥生を買収

「事業コンシェルジュ」への進化を加速

 弥生株式会社は13日、オリックス株式会社が弥生の株式を取得することにより、オリックスのグループ会社になると発表した。オリックスでは年内をめどに、弥生の発行済み株式の99.9%を取得する予定という。

 弥生は、会計ソフト「弥生会計」や確定申告ソフト「やよいの青色申告」をはじめ、さまざまな業務ソフトの開発・販売、および導入後のサポートサービスを提供しているが、小規模事業者が事業を立ち上げて継続する上で直面するさまざまな課題や悩みに応える「事業コンシェルジュ」への進化を目指してきた。

 今回の買収によってオリックスグループの一員となることで、弥生が持つサービスおよびITにおける専門性に、オリックスの金融およびサービスのノウハウを組み合わせ、小規模事業者にさらなる価値を提供できるようになるという。

 なお、今後の経営方針には変化はなく、代表取締役社長の岡本浩一郎氏は、引き続き、弥生の経営に従事するとのこと。

 弥生は2003年に、(Management Buyout:経営陣による自社買収)で米業務ソフトメーカーのIntuitから独立したが、2004年11月にライブドアが買収。その後2007年に独立系投資ファンドのMBKパートナーズへ売却されていた。

オリックスは小規模事業者の顧客基盤を獲得、両社で新サービス提供へ

(左から)オリックス執行役の松崎悟氏、弥生社長の岡本浩一郎氏、オリックス副社長の浦田晴之氏

 13日に行われた記者会見では、オリックス代表執行役副社長・グループCFOの浦田晴之氏が、「今回の買収は、安定的な収益貢献、新たな事業シナジーによるプラスアルファに期待している。オリックスグループにとっても、非常に意義のある戦略的な取り組みだと考えている」コメント。買収の意義として「新たな事業基盤の獲得」「新たな顧客基盤の獲得」「サービスメニューの拡充」の3点を挙げた。

 浦田氏は、弥生の業務ソフトにおける市場シェアは約6割を占めるとともに、ソフトの新規購入者を年会費型のYSS(弥生サポートサービス)会員に誘導するビジネスを展開していると説明。YSSの継続率は約9割と高く、弥生の売上の約8割はストック収入(年会費などのサービス収入)が占める構造となっており、買収により長期安定的な収入基盤を得ることができたとした。

 また、オリックスグループは主に大企業・中規模企業を顧客としているが、弥生の顧客は小規模事業者が中心となっており、オリックスグループとしてはこれまでリーチできていなかった顧客層へのアクセスが可能になるとした。

 今後は、オリックスのリースやファイナンス、レンタル、保険といった従来のサービスと、弥生のサービスを組み合わせ、小規模事業者のニーズに応えるサービスを提供。小規模事業者の成長や業務効率化を支援していきたいとした。

弥生のビジネスモデル
新たな事業基盤の獲得
新たな顧客基盤の獲得
サービスメニューの拡充

 買収後も引き続き弥生の代表取締役を務める岡本氏は、2013年からの弥生の成長戦略を「4段ロケット」と表現。1段目の「消費税特需によるフローの取り込み」に始まり、2段目の「初年度無償化による継続的顧客の取り込み」により、売上は160億円を達成。今後はさらに、3段目の「クラウドによる潜在市場の取り込み」、4段目の「新サービスによる新たな価値の取り込み」で、成長戦略を具現化していくとした。

 その上で、新サービスについては現時点ではまだ明かせないとしながらも、オリックスグループに入ることで実現可能性が高まり、さらに成長を加速できると考えているとコメント。オリックスと弥生の組み合わせで、「オンリーワンの他にはないアンサー」を提供していきたいと語った。

成長戦略の「4段ロケット」
両社の組み合わせで「他にはないアンサー」を提供していく

(三柳 英樹/石井 一志)