ニュース
Avast、無料セキュリティのモバイルアプリや法人向け製品の日本語版提供を発表
(2015/5/26 16:17)
チェコのAvast Softwareは26日、最高経営責任者(CEO)のヴィンス・スティックラー氏と最高執行責任者(COO)のオンドレイ・ヴルチェク氏が来日し、最近の脅威動向と日本市場における今後の展開について説明を行った。
Avastは、無料版のセキュリティ対策ソフトを提供することでシェアを伸ばしている企業。CEOのスティックラー氏は、「Avastはコンシューマー用セキュリティソフト市場の世界ナンバーワンプロバイダー」だとして、海外製のセキュリティソフトが認められていない中国を除き、世界の一般消費者用PCの30%以上を保護していると説明。世界で2億3000万台のPCやスマートフォン、タブレットにインストールされているとした。
日本市場向けにも以前からローカライズを行っており、日本でのPC版のユーザー数は190万人、市場シェアは6%、モバイル版のユーザー数は65万6000人、市場シェアは2.5%にあたると説明。この数字は海外に比べればまだまだ低く、まずは日本におけるAvastのブランド認知を高めていきたいとした。
Avastの技術優位性としては、世界2億3000万のユーザーがセンサーとなって、世界最大の機械学習型保護ネットワークを構築している点にあると説明。従来型の脅威対策では「ウイルスラボにいるアナリスト数百人が分析を行っている」といった対策をアピールしてきたが、近年の脅威にはそうした対策ではスピードで追いつけないとした。
また、こうしたセンサーネットワークがあることで、各国のユーザーの動向の違いも見えてくると説明。日本のユーザーは、「有名人」に関する検索を行う割合が高いことが特徴だとした。
モバイル機器に対する脅威も深刻になってきており、モバイル機器でのマルウェア遭遇率は日本では6.1%、世界平均では18%で、1日あたり1万4000件の新規サンプルを検知していると説明。また、マルウェア以外にモバイル機器には個人情報と紛失の問題があり、この点ではPC以上にリスクが高いとした。
Avastで行った実験では、eBayで中古の携帯電話20台を購入したところ、個人情報はすべて消去されていたが、復元を試みたところ、写真、連絡先、メール、テキストなど4万件が復元できたという。さらに、この20台の携帯電話を米国でわざと「紛失」したところ、返ってきたのは4台だけだった。こうしたことから、セキュリティ対策に加えて、紛失した端末を探すための機能や、リモートワイプなどの機能が重要になるとした。
また、東京のWi-Fiスポットについて実施した調査では、約1700カ所のスポットのうち36%はパスワードを必要とせず利用できるもので、暗号化されたスポットでも24%が脆弱な暗号を使用しており、これらのスポットでは通信内容を覗かれる危険があると説明。同時に行ったユーザーアンケートでは、回答者の63%がパスワードが必須の安全なネットワークでなく、保護されていないネットワークを好む傾向にあり、VPNの使用割合は5%という結果だったが、実際にはさらに低い割合なのではないかとした。
こうした状況を踏まえて、AvastではiOS向けの無料セキュリティアプリ「Avast SecureMe」日本語版を近日中に提供する予定だと説明。Avast SecureMeは、Wi-Fi接続にセキュリティ上の問題がある場合にユーザーに通知する機能を備えるとともに、保護されていないWi-Fi接続環境の場合には無料で使えるVPN接続機能も提供。帯域の問題で動画サイトなどの利用には制限がかかるが、メールの確認やSNSなどを安全なVPN接続を通して利用が可能になる。また、Android向けには、同様の機能を備える「Avast Mobile Security」をすでに無料で提供しているため、そちらを利用してほしいとした。
さらに、Android向けのアプリとして、端末のメモリ空き容量を確保する「Avast GrimeFighter」、バッテリー持続時間を伸ばす「Avast Battery Saver」のそれぞれ日本語版を提供することも発表。こうした製品で、日本のモバイル市場においてもAvastの普及を進めていきたいとした。
COOのヴルチェク氏は、Avastのデスクトップ向けソリューションについて説明した。デスクトップ機器でのマルウェア遭遇率は、日本では35.6%、世界平均は44%で、1日あたり30万件の新規サンプルを検知しているという。また、最近では勝手に広告を挿入するなどの挙動を行うブラウザーのアドオンが問題となっているとした。
さらに、家庭においてはさらに多くの機器がネットワークに接続するようになっており、こうした状況の中でホームルーターがセキュリティ的に弱い部分になっていると説明。Avastの製品では、ホームネットワークの機器に対して適切なパスワードが設定されているかをチェックする機能を有しているが、大半のルーターが初期設定時のパスワードのままとなっているのが現状だとした。
日本のユーザーが利用しているルーターでも、ID/パスワードの組み合わせが、「admin/admin」「admin/password」「admin/パスワードなし」といったものになっている割合が31%に上り、51%は住所や誕生日、氏名などの不適切なパスワードが使用されていると説明。こうした設定になっているルーターは、DNS設定を書き換えられる「DNSハイジャック」の脅威にさらされることになると警告した。
また、Avastでは中小企業向けソリューションとして無料セキュリティソフト「Avast for Business」を提供しているが、日本市場向けにも6月末から日本語版の提供を行うと発表。ウイルス対策、HTTP/HTTPSの脅威スキャン、ウェブベースの管理コンソールなどの機能を備え、Windows/Macで利用できる。セキュリティ対策が遅れがちな小規模ビジネスなどにも、まずは無料版を利用してもらうことでセキュリティを高めてほしいとした。