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NTT、フジクラ、北大、世界最高密度の光ファイバーを実用的な細さで実現

伝送容量は従来の光ファイバーの100倍以上

 日本電信電話株式会社(NTT)と株式会社フジクラ、国立大学法人北海道大学(北大)は16日、6種類の光(モード)を同時に伝搬可能な光の通り道(コア)を19個配置し、1本に114(=6モード×19コア)の情報経路(チャネル)を多重化した世界最高密度の光ファイバーを、250マイクロメートル以下という実用的な細さで実現したと発表した。

114チャネルを多重化した光ファイバーを、250マイクロメートル以下の細さで実現

 データ通信需要の増大に伴い、1本の光ファイバーの中に複数のコアを配置したマルチコア光ファイバーや、1つのコアの中に複数のモードを導波可能なマルチモード光ファイバーなど、光ファイバーの伝送容量限界を打破しようとする研究開発が世界的に推進されている。しかし、実用的に利用可能な光ファイバー直径の上限や、コアの屈折率分布の制御性の問題を考慮すると、コア数を増やすだけ、もしくはモード数を増やすだけでは、光ファイバー1本で50チャネルを超えることは困難だったという。

 こうした背景から、NTT、フジクラ、北大(情報通信フォトニクス研究室)では、コア多重(マルチコア)とモード多重(マルチモード)のベストミックスにより、実用的に利用可能な光ファイバー1本で100以上のチャネルを多重可能にする光ファイバーの研究開発を進めてきた。

 NTTでは、光ファイバーの直径を250マイクロメートル以下とすることで、既存の陸上光伝送路と同等の半径15~30mmの曲がりを付与しても、20年以上に渡り使用可能な光ファイバーが実現できるという知見を得ていたが、今回、改めて実験し、確認を行った。

 NTTと北大は、250マイクロメートル以下の光ファイバー直径で100以上のチャネルを多重するため、3および6種類のモードを伝搬可能なコアの屈折率分布を最適化し、その最適化されたコア構造を用い、コア間の光信号の干渉を十分に抑圧可能な様々なコア配置について検討を行った。

 その結果、6モードを導波可能なコアを蜂の巣状に19個配列することで、250マイクロメートル未満の光ファイバー直径に、世界最大の114チャネル(=6モード×19コア)を多重できることを明らかにした。

 この設計指針に基づき、長さ8.85kmの光ファイバーをフジクラで作製し、NTTでその特性を評価。全114チャネルの波長1550nmにおける伝送損失は0.24dB/km未満で、これまでに報告されている6モードを用いたマルチコア光ファイバーの中でも最小の伝送損失を実現した。また、各チャネル間における伝送損失の偏差は0.03dB/km以下で、極めて均一性の高い高密度光ファイバを実現することができた。さらに、複数のモードを同時に用いた光伝送で重要になるモード間伝搬速度差は0.33ns/km未満と、これまでに報告されている6モードを用いたマルチコア光ファイバーの中でも最小の速度差を実現できており、これは、19個のコアの屈折率分布が高精度に制御されていることを表すものだとしている。

 NTTは、作製した114チャネルを有する光ファイバーが、実際の超大容量伝送への適用性を有するか否かを確認するため、最新のQAMデジタルコヒーレント伝送技術と、入射端で114のチャネルに異なる光信号を合波し、出射端で114のチャネルからの光を分波する光ファイバー型のFan-In・Fan-Outデバイスを用い、各チャネルの伝送品質を評価。その結果、114全てのチャネルについて伝送限界を上回る良好な大容量伝送が行えることを確認した。

 NTTなどでは、この研究で、今後のデータ通信量の増大に伴い必要とされる数ペタビットから、その1000倍となるエクサビットにも対応可能な信頼性の高い光ファイバーに、実現の道が拓けたと言えると説明。今回開発した光ファイバーは、2020年代における実用化を目指すとともに、増大し続けるデータ通信需要に持続的に対応可能な光伝送基盤の実現に貢献していくとしている。

(三柳 英樹)