「英国をデジタル経済のリーダーに」英首相が政府ネット計画発表


 英国のゴードン・ブラウン首相は22日、英国をインターネットの分野における主導的な立場に置くための一連の計画を発表した。

 計画では、英国の全世帯に高速ブロードバンドを100%行き渡らせること、Web技術の利用により政府サービスを向上させ、効率化により経費を削減すること、ワールドワイドウェブの発明者とされるTim Berners Lee氏らによるWeb研究所の設立などが含まれている。

 すでに英国政府は、2012年までに全世帯に高速ブロードバンドを敷設する計画を発表している。

 22日にブラウン首相が行った演説では、「私は英国をデジタル経済の世界的なリーダーにしたいと思っている。このことによって、2020年までに25万人の熟練職を作り出すだろう」とコメントした。

 ブラウン首相は、現在インターネットがセマンティックWebへと変化しつつあり、このことは企業や政府のあり方を変える可能性があると指摘。この流れで主導権を持つため英国政府は、Sir Tim Berners Lee氏とWebサイエンスの専門家であるNigel Shadbolt氏率いるインターネットの研究所「Institute for Web Science」を3000万ポンド(約41億円)かけて設立する。この研究所は、英国を次世代Webインターネットテクノロジー、特にセマンティックWebの分野とその商業化における中心地とすることを目的としている。場所は、オックスフォード大学とサザンプトン大学に設置されることが予定されている。

 高速ブロードバンドはスマートグリッドや、子供たちのための在宅・延長教育を行うためのバーチャル教室、遠隔医療など多くのメリットをもたらすが、現状では英国成人の21%がインターネット利用の経験がない。ブラウン首相はこの現状について「不公平かつ経済的に非効率であり、受け入れることはできない」現実だと指摘する。そのため、英国内の全世帯にブロードバンドを敷設し、利用できるようにすること、ブロードバンドで利用できる高品質コンテンツを提供できる環境をデジタルセクターに醸成すること、次世代Web、インターネット開発を率いることなどの計画を挙げた。提供されるコンテンツの中には、Tim Berners Lee氏などが推し進めてきた、政府の公共データをオープンにし、APIから利用できるようにする試みも含まれている。

 こうしたことに加えて、英国政府サービスのためのパーソナライズドWebページ「Mygov」を開設することで、国民の利便性を高める。インターネット技術を用いて政府サービスを向上させるだけでなく、政府サービスの効率化も同時に行うことができ、合計110億ポンド(約1.5兆円)の経費削減につながるとしている。これを実行するため、英国政府内閣府にデジタルパブリックサービス部門を設立する。

 また、この発表に合わせて、首相官邸がニュース、動画、音声情報をするためのiPhoneアプリも発表した。

【お詫びと訂正 2010/3/24 19:30】
 記事初出時、Tim Berners Lee氏について「インターネットの発明者」と記述しておりましたが、正しくは「ワールドワイドウェブの発明者」です。お詫びして訂正いたします。


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(青木 大我 taiga@scientist.com)

2010/3/23 12:21