So-net、今後3年間でFTTH市場シェア10%へチャレンジ、M&Aも積極検討



ソネットエンタテインメントの吉田憲一郎代表取締役社長
So-netのブロードバンド会員数の推移

 ソネットエンタテインメント(So-net)は11日、2010年度からの3年間における中期経営計画を発表した。吉田憲一郎代表取締役社長は、インターネット接続サービス事業において2012年度末までにFTTH市場でシェア10%を獲得し、非キャリア系のISPでトップのポジションになるとのチャレンジ目標を示した。

 So-netの2009年末(2010年3月)時点のブロードバンド会員数は、2010年2月に約20億円で事業譲受したUSENの会員を合わせ、計170万件に達した。このうちFTTHが123万件を占める。総務省の公表値をベースにSo-netが予測したところでは、同時点でのFTTH市場におけるSo-netのシェアは6.8%になるという。

 これが今後予想されるペースで増加すると、2012年度末までに計210万件、そのうちFTTHが175万件にる見込みだが、So-netの推計によれば、それでもFTTH市場シェアは8%程度だという。M&Aについても積極的に検討しながら、さまざま施策を実行して目標を実現したいとしている。

 今後3年間について、会田容弘取締役執行役員専務は「FTTH市場が盛り上がる最後の山」と表現する。従来はADSLからFTTHへの乗り換えの波があったが、今後はFTTHから別会社のFTTHへの乗り換えのトレンドが来るとみており、この「最後の山」でFTTH会員の獲得に注力する姿勢を示した。

 なお、210万件のうちFTTHではない残り35万件は主にADSLで、ワイヤレスブロードバンドも含まれるが、具体的な内訳は非開示。すでに展開中のWiMAXを含め、LTEをはじめとしたワイヤレスブロードバンドについては、MVNOとして展開していくにあたり重要視しているほか、FMC(Fixed-Mobile Convergence)形態など今後注力すべきサービス領域と位置付けている。

 So-netが同じく11日に発表した2009年度(2009年4月~2010年3月)の連結決算は、売上高が前年度比14.1増%の756億5300万円、営業利益が同11.9%増の66億2600万円だった。中期経営計画では、最終年度の2012年度にこれを売上高1000億円、営業利益120億円に拡大する目標を掲げた。

 なお、So-netの事業分野としては、インターネット接続サービスが中核の「ネットワーク事業」のほか、「メディア・エンタテイメント事業」もあり、こちらではオンラインゲームを中核として展開していく計画だ。


2012年度までの経営数値推移2012年度までの営業利益増減要因

デジタル家電用無線LANセットのレンタルを開始

 中期経営計画では、FTTHシェア拡大のための施策の1つとして「つながる環境の徹底サポート」という施策も掲げており、デジタルテレビをはじめとするネットワーク家電との連携や、ホームネットワークの構築のための機器の提供やサポートサービスも推進していく。

 その一環として7月に開始するのが、デジタル家電対応の無線LAN親機・子機のセットをISP会員にレンタル提供するサービスだ。具体的な料金は未定だが、月額1000円以下を予定しており、そのほかに初期費用として1カ月分を課金するかたちになるという。利用申し込みや課金など、So-netのインターネット接続サービスと一体的に提供する。

 自前で無線LANルーターなどを購入するにはまだまだ抵抗があると思われる中級・初心者層をターゲットに、月額料金で手軽に導入できるようにする。例えば、家電量販店のテレビ売り場において、So-netのFTTHおよび無線LANセットを合わせて販売していくようなかたちも想定している。

 レンタル提供する機器は、バッファローの「AirStation NFINITI Giga」シリーズのIEEE 802.11n/a/b/g対応製品。子機には4ポートの有線LANコネクターを装備しているため、デジタルテレビやゲーム機など複数の端末をインターネットに接続して楽しめるとしている。


レンタル提供するバッファローの無線LANセット「AirStation NFINITI Giga」デジタルテレビとFTTHを連携して利用してもらうことで、アクトビラの接続率アップも目指す

 吉田社長は、デジタルテレビやゲーム機、Blu-rayディスクレコーダーなどが「FTTHという高帯域環境の重要なアプリケーションになっている」と指摘。主要メーカーのこれらデジタル家電についても機器設定サポートの対象とするなど、サポートサービスの範囲を拡大する。ネットワークの接続・設定だけにとどまらず、ユーザーが実際にデジタルテレビでFTTH経由のビデオオンデマンドサービスを利用できるまでをサポートしたいとしている。So-netでは、固定ブロードバンド回線をインターネット接続サービス事業のメインに位置付け、デジタルテレビとの連携面でISP他社と差別化を図っていく方針だ。

 この施策には、So-netが25%出資するアクトビラのテレビ向けブロードバンド映像配信サービスの利用拡大を図る狙いもある。アクトビラ対応テレビの累計出荷台数は、2010年3月までに1500万台近くに上ると推定されるが、このうち実際にアクトビラに接続しているのは180万台程度で、接続率は12%にとどまる。アクトビラでは今後、3Dコンテンツを提供することを表明しており、So-netとしても利用拡大のために連携していく考えだ。

【お詫びと訂正 2010/5/17 13:40】
 記事初出時、アクトビラ対応テレビの累計出荷台数を「1万5000万台」、アクトビラへの接続台数を「1800台」と記載しておりましたが、正しくは累計出荷台数が「1500万台」、接続台数が「180万台」です。お詫びして訂正いたします。


ISP事業での施策の1つ「つながる環境の徹底サポート」アクトビラの累計接続台数、対応テレビ累計出荷台数の推移

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(永沢 茂)

2010/5/12 12:49