「.jp」を管理するJPRSが「.com」も、gTLD取次サービス開始


gTLD取次サービスのページ

 JPドメイン「.jp」を管理する株式会社日本レジストリサービス(JPRS)は21日、「.com」「.net」「.org」などのgTLDの取次サービスを開始した。ただし、このサービスはあくまでもJPRSの「指定事業者」向けに提供するもので、エンドユーザー向けにJPRSから直接ドメイン名登録サービスを展開するものではないという。

 JPRSの指定事業者とは、JPRSからJPドメイン名を仕入れ、エンドユーザー向けに販売する事業者のこと。インターネット接続サービスやレンタルサーバーサービスなどを手がける幅広い事業者が、JPRSの指定事業者となってエンドユーザー向けにJPドメイン名登録サービスを提供している。

 JPRSがgTLDの取次サービスを開始したことで、各指定事業者は従来からのJPドメインに加え、gTLDについてもJPRSから仕入れて販売することができるようになった。JPRSでは「.com」「.net」「.org」のほか、「.biz」「.info」「.mobi」「.asia」を取り扱う。21日時点で数社の指定事業者が取次サービスを利用しているほか、申し込みも多くあるという。

 これにあわせてJPRSは21日、「JP WHOIS」の検索対象ドメインに上記7種のgTLDを追加。検索対象がJPだけではなくなったことから、名称も「JPRS WHOIS」と変更した。

歓迎する事業者がある一方で、懸念の声も

 事業者がgTLDのドメイン名登録サービスを提供するには、自ら「ICANN公認レジストラ」になるか、ICANN公認レジストラの資格を持つ国内外の他の事業者と販売代理店契約を結ぶ必要がある。JPRSの指定事業者の中には、すでにこうした方法でgTLDの登録サービスを展開している事業者も多い。

 その一方で、ドメイン名登録サービスでいわば競合相手にあたる国内のICANN公認レジストラの販売代理店になることに抵抗がある指定事業者や、かといって海外のICANN公認レジストラとの取り引きでは、特に中小の指定事業者では為替や時差、商習慣などがネックになることもあるようだ。

 こうした指定事業者からの要望もあり、「JPRSが指定事業者に対してgTLD取次サービスを提供することが、国内のドメイン名関連サービスのよりいっそうの発展につながるものと考え、サービスの実施を決定した」(JPRS広報宣伝室)という。

 JPRSがgTLD取次サービスを検討しているということは、2010年10月に行われた指定事業者向けの会合で明らかにされた。しかし、これを歓迎する指定事業者がある一方で、指定事業者向けとはいえ、JPRSがgTLDの取り扱いも開始することについては懸念の声もある。

 例えば、GMOインターネット株式会社の熊谷正寿代表取締役会長兼社長が自身のブログ「クマガイコム」で、JPRSへの公開質問状を掲載。市場独占の懸念などを指摘したのに対し、JPRSの東田幸樹代表取締役社長がコメントで回答している。また、さくらインターネット株式会社の田中邦裕代表取締役社長も自身のブログ「さくらインターネット創業日記」において、JPRSのリソースをJPドメインの運用以外に向けることに対して意義を唱え、JPRSに再考を求めていた。

 なお、JPRSはICANN公認レジストラの資格を2009年12月に取得している。gTLDの取次サービスについて具体的に検討を開始するよりも前のことであり、「当時は、gTLDのサービスを経験することは、JPドメイン名のサービス向上にとっても役立てることができるという考えで、ICANN公認レジストラとしての資格の取得を行った」(JPRS広報宣伝室)と説明している。


関連情報

(永沢 茂)

2011/2/22 17:19