電力異常の陸域観測技術衛星「だいち」、運用を終了、交信不能と判断し停波


「だいち」に搭載のPALSARが日本時間4月22日6時15分から観測したアフリカ中央部チャド湖付近

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12日、衛星画像地図などにもデータが活用されている陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS:Advanced Land Observing Satellite)の運用を終了したと発表した。

 だいちは4月22日午前7時30分ごろ、発生電力が急速に低下する電力異常が発生し、搭載している観測機器電源がオフになった。以降、約3週間にわたり交信を試みてきたが、今回、交信不能と判断。5月12日午前10時50分、だいちに搭載している送信機とバッテリーを停止するコマンドを地上から送信する停波作業を実施した。

 だいちは2006年1月、H-IIAロケット8号機で種子島宇宙センターから打ち上げられ、すでに設計寿命3年、目標寿命5年を超えて運用されていた。

 JAXAによれば、だいちは5年間に全世界で650万シーンを撮影。国土地理院の2万5000分1地形図の作成・更新や、アフリカ諸国の地図作成にデータが利用されたという。

 さらに、ハザードマップ作成や活火山のモニタリング、世界の災害緊急観測活動にも貢献。年間約100件の大規模災害を観測して国内外に情報を提供、四川省地震の際には中国から感謝状も受領したとしている。また、目標寿命5年を過ぎた後の東日本大震災でも400シーンを撮影した。

 なお、これまでだいちが海外の大規模災害へ積極的に対応してきたことにより、東日本大震災では逆に海外から約5000シーンの提供を受けることができたという。

 JAXAの発表資料には、日本時間の4月22日早朝、だいちがとらえた最後の地球の画像が添えられている。高性能可視近赤外放射計2型(AVNIR-2)およびパンクロマチック立体視センサー(PRISM)ではアラスカ沖の太平洋、フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダー(PALSAR)ではアフリカ中央部チャド湖付近となっている。


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(永沢 茂)

2011/5/12 14:33