アクトビラが事業方針説明会、CATV局連携やスマホ強化で接続率改善へ


株式会社アクトビラ代表取締役社長の香西卓氏

 株式会社アクトビラは2日、今後の事業やサービスについての説明会を報道関係者向けに開催した。IPベースのテレビ向けVODサービス「アクトビラ」の利用者増を目指し、CATV局との連携を進めるほか、スマートフォン/タブレットへ直接映像を配信するサービスなども強化していく。

 説明会には、アクトビラの代表取締役社長である香西卓氏のほか、副社長・部長級の幹部4名が出席した。香西氏はまずアクトビラの現状を説明。「アクトビラ ビデオ・フル」規格対応のテレビやブルーレイレコーダーの累計台数が、2012年10月末時点で約4200万台であるとした。

 このうち、アクトビラサービスへの累計接続台数は約450万台。月5万台程度のペースで増加しているという。また、会員登録数は約60万件となっている。

 約4200万台のアクトビラ対応機が市中にあるにもかかわらず、その接続率は現状で約10%にとどまっている。香西氏は「この接続率をいかに挙げるかが、アクトビラにとっても、(コンテンツプロバイダーなど)関係する事業者にとってもキーファクターだ」と強調。CATV局と新たに協力することで、底上げを図っていきたいという。

 一方、テレビ向けVODサービスで培った技術力を、新たな事業領域で生かす取り組みも始めた。VODサービスを新規に展開したい法人などからシステムのオペレーション業務を受託・代行したり、テレビ向けデータ放送とIPベースのVODを、より密に連携させるための技術なども外部提供している。

 VOD以外の分野にも経営多角化を進めたことで、2012年度上半期の営業成績は売上高で前年同期比233%となった。この好調ぶりを維持するためにも、さまざまな取り組みを行っていく必要があると香西氏は話す。


アクトビラ対応機の出荷台数などをまとめたデータテレビ向けVOD以外のサービスも手がけていく

 説明会後半では、アクトビラの新サービスについて、デモを交えながらの解説が行われた。まず11月2日付で「ケーブルアクトビラ」を発表した。これはCATV局を通じて、各局ごとにカスタマイズしたアクトビラVODサービスを提供する仕組みとなっている。

 CATV局が一般加入者に対してVODサービスを独自に提供したい場合、配信サーバー群の構築はもちろん、各加入者宅に対してセットトップボックス(STB)を供給する必要がある。しかしケーブルアクトビラをCATV局が導入すれば、アクトビラの配信システムやコンテンツがそのまま流用できるだけでなく、市中に約4200万台行き渡っている「アクトビラ ビデオ・フル」対応機を使うことも可能なため、機器のコスト負担を抑えられる。また、加入者がVODコンテンツを実際に購入した場合は、CATV事業者側にキックバック収入が入る。

 すでにCATV局2社がケーブルアクトビラの導入を決定しており、12月1日にも実際のVODサービスがスタートする。その他15社とも商談を進めている途中という。なお、ケーブルアクトビラはインターネット回線を通じてデータを送受信する方式であり、加入者側はテレビ放送サービスだけでなく、CATV局のネット接続サービスを契約していることが利用の前提となる。


「ケーブルアクトビラ」の概要。CATV局が提供するSTBだけでなく、市販のアクトビラ対応機からもVODを視聴できる少ない負担で、VODを提供できるのもメリット

 11月1日からは、スマートフォン/タブレット向けの無料動画配信サービスが始まった。従来は、スマートフォンでアクトビラのコンテンツを検索し、お気に入り登録しておくと、テレビ側のアクトビラで対象作品をわかりやすく表示する機能を提供していたが、これを一歩推し進めた。当初は、映画・ドラマの予告編や、見逃し番組有料配信と連動した無料ダイジェスト版などがラインナップされる。

 スマートフォン連携機能については今後も強化を進めていくとしており、2013年2月中旬をめどにリモコン(スマートフォンからの再生コントロール)機能を提供したいという。さらに同年春には、スマートフォン上で直接、有料動画の販売・配信もスタートさせる計画。

スマートフォン向け機能の強化スケジュールまずは予告編・ダイジェストなどの無料映像から配信をスタート

 このほか、10月中旬からは月額315円の「有料プレミアムサービス」を始めた。一部作品が割引価格で視聴できるだけでなく、購入した作品を2台のテレビで楽しむための「テレビリンク」機能が使えるのも特徴。説明会場でも、1台目のテレビで購入した作品が、2台目のテレビの「購入済み作品リスト」にほぼ自動で反映されるデモが披露された。

 アクトビラのトップページについてもリニューアルを行った。作品のジャンル表示を見直し、ナビゲーションボタンを画像ではなくテキストデータにすることで負荷軽減を図った。これにより、ページ表示速度の平均値が2.5秒から2.0秒へ改善した。

データ放送画面からIPストリーミングに移行した場合でも、スムーズにデータ放送への復帰ができるように海外でのVOD配信なども手がける

 なお、説明会後の質疑応答では、アクトビラへの累計接続数1000万台を目指すとの方針が香西氏から示された。目標時期については「早くて3年、遅くて5年。ただ、3年でやるにはCATV局の力を借りる必要がある」とも補足している。


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(森田 秀一)

2012/11/2 20:00