清水理史の「イニシャルB」

Win 11対応PCを家族や友人に譲るなら、「Sysprep」で“不要なアプリを削除した初期化環境”を作るべし!
2025年6月30日 06:00
古い友人から、Windows 10のEOS(サポート終了)に関する相談を受け、手元に余っていたWidows 11搭載のノートPCを譲ることにした。このとき、悩ましいのがPCのセットアップというか環境の整理だ。後々のことを考えると、不要なアプリの削除など、最低限の対処をしてから渡したい。
そこでおすすめしたいのが、Microsoft純正のシステム準備ツール「Sysprep」だ。アプリの追加や削除などをした状態のWindows環境を、余計なアプリがない(メーカーがプリインストールするアプリのうち、削除しておきたいものを削除した状態の)初期状態に戻すことができる。
できれば抜いておきたい体験版のセキュリティ対策ソフト
余っているPCを家族や友人に譲るのはいいが、渡したあとに「これどうするの?」「あれはどうなっているの?」というやり取りが頻繁に発生するのは、正直、めんどくさい。なので、事前にわかっている「面倒なこと」は、回避しておきたいというのが本音である。
今回、Windows 10のEOSで困っていた友人からの相談で、余っていた2年前のWindows 11 PC(Lenovo Thinkbook s13 Gen4 AMD)を渡すことにしたのだが、このPCにも、そんな「面倒なこと」がひとつあった。
体験版として一定期間無料で使えるセキュリティ対策ソフトがプリインストールされている点だ。
もちろん、その友人が希望するなら、体験期間後に有料契約してもらってもかまわないのだが、数カ月後に、間違いなく「どうすればいいの?」という電話がかかってくることであろうと考えると、こちらとしては、標準のWindowsセキュリティに切り替えておきたいというのが本音だ。
その一方で、リカバリイメージには当該セキュリティ対策ソフトが含まれており、工場出荷時状態に戻すと、必ずインストールされた状態で復元されてしまう。
昔なら、ローカルアカウントで仮にセットアップして不要なアプリを削除しておく、ということもできたが、今は裏技的な方法を使わないとできない。そこで、今回は「Sysprep」を使って設定してみることにした。
Sysprepとは
Sysprepは、文字通り、Windowsのシステムの準備(System Prepare)をするためのツールだ。
一般的には、企業などでクライアント環境を大量展開する場合に、元となるWindowsイメージからセキュリティ識別子(SID)などのPC固有の情報を削除することで一般化し、複数台のPCに適用できるようにするキッティング用のツールとなる。
Windows 11では「c:¥Windows¥System32¥sysprep」に標準でインストールされており、誰でも使えるようになっている。マイクロソフトが公開しているドキュメント(以下のリンク)によれば、新機能として、Windows 10がインストールされたPCをWindows 11にアップグレードして、Sysprepで一般化することも可能になったようだ。
いろいろな使い方が想定されるツールだが、今回はシンプルにプリインストールされた環境をカスタマイズするために利用することにする。
▼Sysprepに関するドキュメント
Sysprep(システム準備)の概要
Sysprepで「不要なアプリを削除したWindows初期化環境」を作る
それでは、実際の手順を紹介しよう。といっても、ここでは冒頭で紹介した友人のPCそのものではなく、仮想環境を使って操作を紹介する。
ということで、元となる環境がクリーンなWindows 11なので、不要なアプリの削除ではなく、その反対に、Google Chromeをインストールした状態で初期化する方法を紹介する。削除したい場合は、監査モードで、普通にアプリをアンインストールするだけなので、読み替えてほしい。
STEP 1:Windows 11を初期化する
まずは、古いPCを工場出荷時状態に初期化する。初期化せずにSysprepを実行することもできるが、第三者に譲る場合は初期化しておいた方がいいだろう。
また、Sysprepの実行時によくエラーになる要因として、BitLockerとストアアプリがある。ストアアプリについては後述するが、BitLockerについては初期化によって解除されるので、このエラーを回避しやすい。Sysprepを利用するときはエラーログとの格闘が避けられないが、その要因を少しでも減らしておく方がいいだろう。
STEP 2:監査モードに入る
初期化したPCを起動すると、Windows 11の初期セットアップ画面が表示されるので、最初の画面で[Ctrl]+[Shift]+[F3]キーを押して監査モードに入る。
監査モードは、初期セットアップ対象のWindowsシステム(ストレージ内のリカバリイメージそのものではなく、現在展開されているシステム)に対して、管理者権限で操作を実行するためのモードだ。
復元したイメージに対して、アプリやドライバーのインストールなどの追加の変更を加えたり、これから起動するイメージが正常に機能するかを確認したりするためのモードとなる。
なお、監査モードでは自動的に事前登録済みの「Administrator」アカウントでログインされるが、このアカウントは作業後に無効化される。
STEP 3:アプリの追加や削除をする
Windowsのデスクトップが表示され、「システム準備ツール(Sysprep)」の画面が表示される。Sysprepの画面は後で使うので、そのままにしておこう。
準備ができたら、以下の作業をする。作業によっては再起動が必要になるが、後述するSysprepでの操作をしない限り、自動的に再起動後も監査モードが継続される。
- 不要なアプリのアンインストール
- 必要なアプリのインストール
- ドライバーのインストール
- Windows Updateによる更新(初期セットアップ時に実行されるが時短になる)
STEP 4:クリーンアップする
環境を整えたら、Sysprepを実行する。「システムクリーンナップアクション」で「システムのOOBE(Out-of-Box Experience)に入る」を選択、「一般化する」にはチェックを付けない。「一般化」は複数台のPCに大量展開するときに必要な機能(ハードウェア固有のIDを削除)なので、今回は必要ない。
また、今回は動作を確認するために「シャットダウンオプション」で「再起動」を選択したが、そのまま家族や友人に渡すなら「シャットダウン」を選択して、「OK」をクリックすればいい。
エラーが発生しなければ、そのまま処理が実行され、シャットダウンされるはずだ。次回、電源を入れたときは、Windowsの初期設定画面が表示されることになる。
なお、Sysprepの画面を閉じてしまった場合は、[Windows]+[R]キーを押して「ファイル名を実行」ウィンドウで「sysprep」と入力するとフォルダーが表示されるので、「sysprep.exe」を起動できる。
STEP 5:エラーに対処する(補足)
今回は一般化のチェックマークをはずしているので、このエラーが発生することは恐らくないが、Sysprepでよく発生するストアアプリのエラーが発生した場合は以下のように対処する。一般化したい場合に参考にしてほしい。
メッセージに従ってエラーログを見て、原因になっている状況を取り除く必要があるが、今回のように初期化して実行している場合は、ほぼアプリのエラーになるはずだ。これは方法さえわかっていれば対処は容易だ。
[Windows]+[R]キーを押して「ファイル名を実行」ウィンドウで「sysprep」と入力すると、Sysprepのフォルダーが表示されるので、この「Partner」フォルダーにあるログファイル(2つあるうちのエラーメッセージで表示された方)を開いて確認する。
今回は、「Package Microsoft.WidgetsPlatformRuntime_1.6.2.0_x64_8wekyb3d8bbwe was installed for a user, but not provisioned for all users. This package will not function properly in the Sysprep image.」というエラーになっている。
これは、Sysprepでは「あるある」のトラブルで、現在のユーザーにのみアプリのパッケージがインストールされている(自動更新でSTEP 3作業中に入ってしまった)ために一般化に失敗する例だ。
▼エラーの説明
組み込みのWindowsイメージを含むMicrosoft Storeアプリを削除または更新した後に Sysprepが失敗する
「Microsoft.WidgetsPlatformRuntime_1.6.2.0_x64_8wekyb3d8bbwe」というパッケージが今回のエラーの原因になっているので、これを削除すればいい。
以下のPowerShellコマンドように、原因となっているパッケージの名前の一部の後に「*」を付けて実行すればパッケージを削除できる。環境によってパッケージ名が異なるので、ログで名前を確認して削除すればいいだけだが、複数発生する場合もある。
Get-AppxPackage -AllUsers Microsoft.WidgetsPlatformRuntime* | Remove-AppxPackage -AllUsers
STEP 6:あらためてSysprepを実行する
(一般化が必要でかつエラーが発生した場合)
エラーの原因を解消したら、あらためて一般化する。[Windows]+[R]から「sysprep」でフォルダーを開き、「sysprep.exe」を実行する。
以下の画面のように、「Sysprepを実行しています…」というウィンドウが表示され、作業内容が表示されれば成功だ。後は待つだけでいい。
初期化するとSysprep設定は無効になる
というわけで、Sysprepを使うと、家族や友人に渡すPCのアプリやドライバーをある程度カスタマイズできることになる。
注意点としては、Sysprepはあくまでも現在展開されているイメージに対して変更を加えるものとなるため、設定後、もう一度「このPCをリセット」で初期化すると、元のイメージが復元されてしまうことになる。この場合、Sysprepで削除したアプリは復活し、インストールしたアプリはなくなることになる。
また、ストアアプリなど、ユーザーアカウントに紐づく情報も復元される。例えば、SysprepでXboxアプリを削除したとしても、初期設定でサインインしたMicrosoftアカウントにXboxアプリが紐づいていれば、初期セットアップ後にアプリが復元されるために、復活する。
なので、基本的には、冒頭で紹介したようなセキュリティ対策ソフトの体験版の削除、プリンタードライバーの追加、業務で使うアプリのインストール、Windows Updateなどを事前にやっておくために使うといいだろう。