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Wi2のWi-Fi APでスマホユーザーの街中での動きを捕捉、O2Oに使う基盤開発

 株式会社ワイヤ・アンド・ワイヤレス(Wi2)とアクセンチュア株式会社は5日、Wi-Fiアクセスポイント(AP)から収集したスマートフォンユーザーの位置情報などのビッグデータを、企業がO2Oのために解析・活用するためのサービス基盤を共同開発したと発表した。この基盤を活用したサービスが実際に稼働するのは2014年4月の予定。

 「外食産業、コンビニ、アパレルなどの小売業、レジャー・娯楽関連施設や公共交通事業など、顧客の街中における動きを適切に捕捉して自社の店舗等に導く施策が、サービスの向上や売り上げの増加につながる業界に大きく貢献する」としている。

(向かって右から)アクセンチュア株式会社の工藤卓哉氏、株式会社ワイヤ・アンド・ワイヤレス代表取締役社長の大塚浩司氏、同じく取締役CTOの小松直人氏

 企業がクーポンや独自コンテンツなどを配信するために提供するスマートフォンアプリと連携することで、それらアプリのユーザーに対して、適切な場所・タイミングで適切な内容の情報をレコメンドできる。Wi2のAPを設置している店舗であれば、ユーザーのスマートフォンが店舗のAPの圏内に入った時点でクーポンを配信するといった具合だ。

 導入企業向けに提供する解析ツールでは、ユーザーの来店回数やリピート率、滞在時間などを確認することが可能。過去の傾向をもとに、リピート率が上がる直前のタイミングをとらえて施策を打ったり、あるいは飲食店であれば、来店回数が多いのに滞在時間が短いユーザーならば優良顧客だと判断して特典を提供するといったことなどが考えられる。

 さらに、導入企業の店舗のAPだけでなく、他のカフェやファーストフード、コンビニエンスストア、駅、商店街、観光地など、Wi2が設置している二十数万カ所(2012年12月時点)のAPから収集される位置情報も活用できるのが特徴。すなわち、導入企業はアプリユーザーの自社店舗における利用状況だけでなく、ユーザーが来店するまでの動きなども把握できるため、例えば滞在場所の傾向から職場や居住のエリアを推定し、それに適した情報・サービスを提供することなども考えられる。こうした解析には、人工知能に支えられたアクセンチュアの技術を活用するという。

 アクセンチュアの工藤卓哉氏(経営コンサルティング本部アクセンチュアアナリティクス日本統括)は、顧客の行動を把握するために従来ならばポイントサービスなどの会員カードなどが必要だったものが、Wi-FiのAPを活用することでそれと同等かそれ以上のことが可能になると説明。Wi2と共同開発したサービス基盤は、「行動特性把握によるロングテール戦略で広告効率を上げる、高精度O2Oサービス」だとした。

サービス基盤の概要

 もちろん、扱うデータが非常センシティブなものであることは両社ともに認識しており、Wi2取締役CTOの小松直人氏は「ユーザーに不安を与えないように気を付ける」と語る。

 基本的には属性情報のみの“パーソナルデータ”(個人情報保護法の遵守を前提に取得した情報のうち、性別、年齢層や趣味嗜好などによって分類された、個人を特定すること目的としない情報の総称)で処理し、アプリのインストール時、利用目的などを提示してユーザーのパーミッションを得た上で使用する。

 Wi2には、Wi-Fiを有効にしている端末が同社APの近くを通過した際の認証のログや、Wi-Fi APに接続した端末のウェブやアプリを使用したことのログについても蓄積されているという。そうしたWi-Fiネットワークから上がってくる情報は月間数億件に上るとしており、O2O基盤導入企業が提供するサービスに応じて、そうした膨大なデータの中からユーザーのパーミッションを得たデータを峻別して解析・活用するということだ。

 なお、パーソナルデータ以外に、氏名や住所、電話番号などの“個人情報”も扱うことが可能だが、その場合はアプリのインストール時に同様に利用目的などを提示した上でパーミッションを求めるかたちになる。

 また、パーソナルデータや個人情報などについては、O2Oサービス基盤の導入企業が自社内に閉じたかたちで活用するだけでなく、同じく基盤を導入する複数企業間でアライアンスを組むなどして相互に活用するパターンも想定。例えば、カフェからCDショップへ送客するなど、他店舗からの相互誘客が実現するとしている。ただし、そうした展開が考えられるアプリの場合は「将来的には取得した位置情報データを他の企業にも提供する場合がある」などと説明し、ユーザーにパーミッションを求めた上で使用するとしている。

サービス基盤で扱う情報

 Wi2代表取締役社長の大塚浩司氏は、Wi-Fiサービスのニーズが広がってきていることを指摘。以前はスマートフォンのインターネット接続トラフィックを携帯ネットワークからWi-Fiに逃がすためのオフロード対策として整備されていたのが、AP設置店舗での来店者向けコンテンツ配信や業務用端末などに活用されるようになり、さらにO2Oや店舗内での顧客行動分析のためのセンサーとして活用されるようになったと説明する。

 現時点ではスマートフォンユーザーにおけるWi-Fiの利用率は高くないとしているが、Wi-Fiならば携帯ネットワークの基地局で判定するよりも精度の高い位置情報が得られると説明。企業がアプリによるクーポン配信などでユーザーにメリットを提供することでWi-Fiの活用を後押しできれば、高精度の位置情報に基づいたO2Oサービスが可能になるとアピールしている。

(永沢 茂)