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消費税納めない電子書籍ストアに身を削って対抗、eBookJapanは価格据え置き

税率引き上げで“内外価格差”拡大

 電子書籍ストア「eBookJapan」を運営する株式会社イーブックイニシアティブジャパンは、消費税率が8%に引き上げられる4月1日以降も、同ストアにおける電子書籍の販売価格を据え置く方針だ。税率の上昇分をそのまま販売価格に上乗せすれば、消費税を課税・納入していない電子書籍ストアとの価格競争で差を付けられるためだ。

「楽天Kobo」と「Kindle ストア」は消費税なしで購入可能

 定価が設定されている紙の書籍とは異なり、電子書籍の販売価格は基本的に各ストアが設定している。また、期間限定セールなども頻繁に行われているため一概には言えないが、同一タイトルであれば通常価格はストアによって大きな違いはない。例えば、あるファンタジー小説の電子書籍版は本体価格540円が標準的のようで、これに5%の消費税が加算されると販売価格は567円となる。

 しかし、日本市場向けにサービスが提供されている電子書籍ストアであっても、海外企業が提供しているストアでは、日本の消費税が課税されないため、本体価格だけで購入できる。具体的には、「楽天Kobo電子書籍ストア powered by 楽天ブックス」は楽天グループの電子書籍ストアサービスだが、これを提供しているのはカナダのKobo Inc.だ。また、Amazon.co.jpの日本市場向け「Kindle ストア」も、米国のAmazon Services International, Inc.が提供しているため、日本の消費税は課税していない。実際、これらのストアでは前述の小説が540円で販売されている。

 4月以降、消費税8%が上乗せされるとなると、国内ストアでの販売価格は583円となり、その影響を受けずに540円のままで販売できる海外ストアとの価格差はさらに広がることになる。

 実は従来よりeBookJapanでは、5%の消費税を含んだ販売価格が、これら海外ストアと同じ水準になるよう設定していた。すなわち、消費税分を自社の“持ち出し”でまかなうことで対抗してきた。消費税率が引き上げられても販売価格を据え置くということであれば、本体価格を値下げして販売するということになる。例えば、前述の本体価格540円のタイトルであれば、eBookJapanでは8%の消費税込で540円であり、本体価格に相当するのは500円ということになる。

イーブックイニシアティブジャパンの2013年通期決算補足資料より

 eBookJapanによると、同社ストアでは現在、200以上の出版社のタイトルを扱っているが、そのほとんどの出版社のタイトルでこうした価格据え置き措置をとる。

 一方、10社弱の出版社のタイトルについては、各ストアでほぼ一律の販売価格が設定されており、現時点でも、国内ストアにおける税込価格と、海外ストアにおける非課税価格に差はない模様だ。

消費税の有無で国内配信事業者が不公平な状態に

 もちろん、楽天Koboも電子書籍端末などの物販については消費税を課税・納入しており、これはAmazon.co.jpでも同じだ。商品自体の価格に変動がないとすれば、4月1日以降、楽天KoboでもAmazon.co.jpでも、物販については消費税率引き上げの分だけ販売価格が上昇することになる。

 一方で、海外企業のサーバーから配信されているということで消費税が課税されていないデジタルコンテンツ配信については、税率引き上げによる影響は受けない。税率引き上げで販売価格が上昇する国内の配信サービスは、価格面でさらに不利になる。消費税課税の有無によって不公平な状態に置かれている国内のネット事業者らが国に対し、海外からの配信についても消費税を課税するよう要望しているのは、こうした背景がある。

 ところで、デジタルコンテンツ配信といえば、Appleの「iTunes Store」や「iBooks Store」がある。海外資本系のサービスではあるが、Appleは日本の消費税を納入している。ただし、これらのストアで販売価格を設定(選択)しているのはコンテンツ提供事業者側であるため、消費税率引き上げにともなって各コンテンツの販売価格が値上げされるかどうかは一概には言えず、コンテンツ提供事業者の判断になる。いずれにせよAppleでは、売上の中から、国が定めた税率の消費税を納入するとしている。

 また、「Google Play」についてグーグル株式会社では、実際にコンテンツを販売しているのは各コンテンツ提供事業者であり、同社はマーケットを提供しているだけのため、消費税については関与していないという。そのため、Google Playの日本市場向けサービスであっても、コンテンツの販売価格に一律に消費税が課税されているわけではなく、コンテンツ提供事業者が国内企業だった場合は、その企業から消費税が納入されることになるとしている。

(永沢 茂)