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KDDI、紛失・盗難対策アプリの米Lookoutと戦略的提携、auスマホに標準搭載へ
(2014/10/2 20:54)
KDDI株式会社は2日、モバイルセキュリティベンダーの米Lookoutと戦略的提携を締結したと発表した。auのiOS/Androidスマートフォン向けに、紛失対策機能とセキュリティ機能を搭載したアプリ「Lookout for au」を提供する。
お客様センターでiPhoneの位置検索が可能に
Lookout for auでは、スマートフォンの現在地を地図上で表示する「端末捜索」機能や、サイレントモードやマナーモード設定時でも大きなアラーム音を遠隔操作で鳴らせる「スクリーム」機能を搭載。電池が少ない場合や電源が切れる直前の位置を通知する「シグナルフレア」機能も搭載しており、紛失したスマートフォンの発見をアシストする。また、Android版のみとなるが、スマートフォンを遠隔で保護する「ロック」機能、遠隔でデータ消去できる「ワイプ」機能を備える。
Lookout for auは、すべてのauユーザーに無償で提供され、Google PlayやApp Storeからダウンロードできるほか、2014年10月以降に発売するすべてのAndroidスマートフォンにプリインストールされる。また、Lookout for auの提供により、KDDIはiPhoneの位置検索サービスを提供できる唯一の通信事業者になるという。Lookout for auの位置検索機能を事前にオンにすることで、auスマートパス/auスマートサポート会員は、スマートフォン紛失時にお客様センター側で位置探索が可能になる。なお、会員以外でもLookoutのサービスからPCでスマートフォンの現在地を把握できる。
また、Android版にはアプリやファイルのダウンロード時にスキャンを実行し、マルウェア、スパイウェア、アドウェアから端末を保護する「マルウェアスキャン」機能を搭載。連絡先・通話履歴をクラウドにバックアップして新しいスマートフォン購入時にデータ転送できる機能はAndroid版に加え、iOS版にも搭載する。なお、写真データのバックアップには有料プレミアム版へのアップグレードが必要。
【お詫びと訂正 2014/10/3 12:10】
記事初出時、マルウェアスキャン機能をiOS/Androidともに提供と表記していましたが、正しくはAndroid版のみの提供となります。お詫びして訂正いたします。
そのほか、プレミアム版にアップグレードすると「盗難アラート」が追加される。これは、他人がスマートフォンを操作したとアプリが判断した場合に警告を表示する機能。具体的にはパスコードを複数回間違えた時、SIMカードが抜かれた時、機内モードに変更した時、Lookoutの端末管理者権限を削除した時など、「盗難時に犯人が行うであろう行為」がトリガーとなる。同時に、その操作を行った人の顔写真と現在位置をメールで送信。より強力なスマートフォン救出の手がかりを提供する。
すでにLookoutを利用しているauユーザーは、Google Play経由でLookout for auにアップデートが可能。また、Lookout for auと、Lookoutを利用している他キャリアのデバイスとは同一アカウントで管理可能だが、お客様センターで端末検索が可能なのは、au端末のみとなる。
なお、KDDIでは、auスマートパス会員および安心セキュリティパック向けに、セキュリティ対策として「ウイルスバスター for au」を提供しているが、ウイルスバスターも引き続き提供される。KDDIは、Lookout for auを紛失対策として提供しており、Lookoutのセキュリティ機能を利用するか、ウイルスバスターのセキュリティ機能を使うかはユーザーが選択する形としている。Lookoutのセキュリティ機能や位置情報機能を有効にするには、LookoutアプリにてIDとパスワードの登録が必要。
スマートフォンを紛失してしまったユーザーに救いの手を
米国大使館で開かれた記者発表会では、LookoutのCEOであるジム・ドルチェ氏が登壇、日本での展開について説明した。Lookoutは全世界で5000万人のユーザーを抱えており、日本でも200万ユーザーを獲得するなどすでに一定の成果を挙げているという。Lookoutでは、日本を米国外における最大マーケットと位置付けている。
日本のスマートフォンユーザーは、2017年に9000万人に達すると予想されており、スマートフォン普及に併せてセキュリティやデータプライバシーなどの課題が浮上してきた。また、デジタルだけでなく、物理的な紛失や盗難も大きな脅威となっていると説明。今年に入り、Lookoutでは3秒に1台のペースでスマートフォンの位置を探索したという。
Lookoutの調査によると、日本のユーザーのうちスマートフォンをなくしたり置き忘れたことがあると回答したのは5人に1人。さらにその中の28%のユーザーは、紛失した時に対応策がないと考え、スマートフォンを取り戻すことができなかったという。Lookout for auの提供により、紛失してしまった場合の解決策を提供することになるとした。
ドルチェ氏は、モバイルデバイスが主要なコンピューティングデバイスになる中で、世界で最も先進的なモバイルオペレーターであり、ユーザーの安全性を重視するKDDIと協力できることは大変うれしいとしており、両社ともにイノベーションを進めていきながら、実りある長期的な関係を続けたいとした。
また、米国商務担当公使のアンドリュー・ワイレガラ氏が登壇した。大使館商務部の役割は、米国からの製品・サービスの輸出促進や、日本でビジネスを展開する米国企業のサポートを担うという。シリコンバレーを本拠地とするLookoutは、先進的で斬新な技術を有し、5000万人のユーザーに先進的でユニークなセキュリティソリューションを展開している企業と紹介した。
スマートフォンは最もパーソナルなデバイスであり、親友よりもユーザーのことについて知っていると指摘。Lookoutは、そのスマートフォンに対する物理的・ソフトウェア的な面からの脅威に対応するソリューションを持っており、斬新なテクノロジーを持つ両社のコラボレーションについて学ぶことができて大変うれしいとした。
iPhoneしか持っていないユーザーでも位置検索サービスを提供
また、KDDIの取り組む安全・安心について、KDDI株式会社代表取締役執行役員専務の高橋誠氏が登壇。Lookoutとの提携の背景について、Lookoutは先端技術を持つことでシリコンバレーでも有名で、セキュリティ関係を研究するKDDI研究所でもLookoutの技術について定評があったことを明らかにした。
また、米国ではPCを前提としたサービス展開が一般的で、スマートフォンの紛失時は自宅にあるPCやタブレットからスマートフォンを探す場合が多く、「iPhoneを探す」機能もこれに該当するという。ただし、日本の場合はモバイルセントリックが進んでおり、スマートフォンしか持っていないユーザーが数多く存在するため、紛失時にお客様センターへの電話で位置情報を把握する、日本の文化に合わせたユーザーサポートが必要と考えたという。
今後、エリア・料金・端末に至るまで同質化が進んだキャリアとして、今だからこそ安心・安全での差別化が実現できれば、ユーザーにも伝わっていくだろうとした。また、今回の提携は、お客様センターでの端末探索をメインとしているが、Lookoutはセキュリティ技術についても奥深い知見を持っており、これを皮切りにLookoutとの提携を深めていければと述べた。
提供のタイミングについては、Lookout側のスケジュールに合わせたほか、Lookoutのアピールも含めてiPhone 6で盛り上がっているタイミングがベストと判断した。また、9月のMNP転入は今期一番の好調ぶりだという。エリア、料金、端末が横並びになる中で、キャリアアグリゲーションとWiMAX2+の展開や、エリアを丹念に整備したことがMNP快調の要因ではないかとした。このタイミングに差別化として、安心・安全を伝えられるのは大きいとした。