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IPAと社団法人未踏が相互協力協定を締結、未踏人材が活躍できるプラットフォーム構築へ
(2015/3/10 19:31)
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、IPAが実施している人材発掘・育成事業「未踏事業」にて、輩出された人材の活躍の環境整備として、一般社団法人未踏(Mitou Foundation)と相互協力協定(MOU)を締結。10日より会員の募集を開始した。
未踏事業は、2000年にIPAが「未踏ソフトウェア創造事業」として開始したもので、ITを駆使してイノベーションを創出できる独創的なアイデアと技術を有し、それを活用する能力を持つ、優れた人材を発掘・育成することを目的としている。2008年度からは、25歳までの若い人材の発掘・育成に重点を置いた「未踏IT人材発掘・育成事業」として再編し、これまで260人の「未踏スーパークリエータ」を含む、1600人を超える未踏クリエイターを輩出している。
Mitou Foundationは、未踏事業のOB・OGや関係者を中心に、起業家やクリエイターなど、天才的かつ創造的人材を支援し、日本を横断するネットワークを構築することで、ITを中心とした日本のイノベーションを加速させることを目的とした社団法人。複数の外部理事の協力を得て、2014年11月に設立された。
今回のMOU締結により、未踏事業により輩出された人材が活躍できる環境を整備。未踏事業OB・OGや企業・団体などの法人を巻き込み、人的支援やマネージメントなど、国の機関であるIPAではサポートしづらい具体的な支援をMitou Foundationで行う。
未踏代表理事の竹内郁雄氏は、日本でイノベーションを起こす事例が少ない理由として、「大の大人のITリテラシーの欠如」「日本人は出る杭を叩く傾向にあり、若い人が伸びるのを妨げる」といったことを挙げ、米国のシリコンバレーとは異なる、日本型イノベーションエコシステムを構築することで、イノベーションを起こす環境を作るのがMitou Foundationの発足理由だとした。
具体的な支援として、イベントの開催、研究会の開催、起業パートナーの紹介といった人材交流、企業・研究職への就職、起業などのキャリア支援、オープンソース支援、知財管理サービス、文書整備といったインフラ設備の3点にフォーカスして活動する。
未踏関係者以外にもイノベーション創出に関心のある法人会員の募集を開始。リクルートや日本ユニシス、大手ベンチャーキャピタルのWiLなど、起業家・企業などが参加する。また、スポンサー企業との提携も進めており、マイクロソフトの「MSDN Unlimited」(1年間で120万円相当)が会員向けに3年間無料となるほか、DMM.make AKIBAから、初期費用+1カ月分の入居費用などの特典が用意される。
最先端のテクノロジーをリテラシーの低い大人が寄って集って潰す
外部理事を務める慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏は、「日本のテクノロジーは最先端にもかかわらず、リテラシーの低い大人が寄って集って潰す」と、日本の現状を指摘。また、未踏人材の価値を日本企業の人事が見出すことができず、外資企業に多くが流れてしまう未踏事業の現状を述べ、日本のイノベーション環境に足りないマネジメント・資金をバックアップし、未踏人材のキャリアに選択肢を与える組織がMitou Foundationだと述べた。
外部理事を務める株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)の南場智子氏は、市場規模的に日本で成長するには世界に目を向ける必要があるとしながらも、「日本は創造の拠点、事業を起こしたり新しいアイデアを生み出す拠点として魅力的になりうる」と述べた。また、DeNAでは、未踏人材を積極的に採用しているとし、「優秀な人材がもっと活躍できるよう、障害を取り除くことは可能ではないか」とプロジェクトに対して意気込んだ。
外部理事を務める東京大学情報学環教授の坂村健氏は、「世界的に起こっているイノベーションは誰も踏み入れたことのない場所を開拓するだけではなく、既存の技術・サービスをマッシュアップしたものでイノベーションを起こせる」とし、全くの新しいモノ以外にも、少し新しいことをやろうという人を繋いでいくイメージを打ち出せれば、良い活動になると述べた。
IPA理事長の藤江一正氏は、未踏事業の成果からすると世間的に認知度が薄く、国の機関ゆえの資金繰りであったり、マネジメントの点で問題があったのではないかと指摘。Mitou Foundationの設立とMOUの締結により、未踏事業の優秀な人材と企業・団体を含めたマッチングを高めることで、認知度を上げていくとした。