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ナビ用測位チップ/モジュールで高いシェアを誇るu-blox、今後はIoTに注力

 GPSやQZSS(準天頂衛星)に対応した測位用チップやモジュールに加え、セルラー通信や近距離無線に関するさまざまな製品を提供しているスイスのu-blox AG社。同社および日本法人のユーブロックスジャパン株式会社がメディア向けの事業戦略説明会を開催し、これまでの活動や今後の戦略について説明した。

u-bloxの測位チップとモジュール

測位・セルラー通信・近距離無線の3分野で製品を展開

 u-bloxは、測位用半導体やワイヤレス通信のICおよびモジュールの両方を提供するグローバルメーカー。設立は1997年で、その後は自動車向け通信・測位用半導体の需要の高まりと、モバイル端末の普及により成長を遂げ、2007年にはスイスの証券取引所に上場。2015年度上半期の売上高は前年同期比で33.1%増を達成した。

スイスu-blox AGのCEOを務めるトーマス・ザイラー氏

 U-bloxのCEOであるトーマス・ザイラー氏は、u-bloxが得意とする分野として「衛星測位技術」「セルラー通信技術」「近距離無線技術」の3点を挙げた上で、「自動車市場」および「産業市場」、そしてウェアラブルなどの「一般消費者向け市場」にフォーカスしていると語った。同社はファブレス形態で研究開発に注力するビジネスモデルを採用しており、3つの分野それぞれにおいてICとモジュールを提供している。現在、世界23カ所に拠点を持っており、そのうち9カ所はアジアにある。

 3分野のうち、衛星測位技術は1997年に製品提供を開始し、2012年のFastrax社買収などを経て、現在は測位モジュールのマーケットリーダーとなっている。セルラー通信技術については2009年に提供を開始し、5年間で世界4位へと成長した。また、近距離無線技術については、2014年5月にモジュールの提供を開始し、現在はWi-Fiや車載モジュールなどの提供も行っており、マーケットにおいて強力な位置を狙っている。

出荷台数の推移

 同社が提供する製品の品質として、ザイラー氏は“スイス品質”をアピールしており、デザインや製造、梱包、サポート、サプライチェーン、マネジメントすべてにおいて、要求が厳しい自動車市場や産業市場に携わる顧客と連携するため、製造コストを低く抑えながらも無欠陥を目指して取り組んでいるという。

 現在のマーケット別売上比率は、ほぼ半分が産業向けで、40%が自動車向け、10%が一般消費者向けという構成。世界で5000社以上の顧客数を誇る。大企業との取引は2015年上期の総売上の9%未満と少なく、特定の大企業に依存もしておらず、顧客の多くは小規模な企業だという。

 ザイラー氏はu-bloxの特徴として、ICとモジュールの両方を製造している点を挙げている。「ICとモジュールの両方を作っている企業はまれであり、競合他社はどちらか片方しか作っていない。当社の技術を活かすことで、幅広い顧客にアクセスしていきたい」と語る。

 今後注力する分野として、ザイラー氏は“IoT(Internet of Things)”を挙げている。「クラウドを利用するにはどこからデータが来るのかを把握する必要があり、ここで測位技術が必要となる。クラウドへの接続にはワイヤレスやセルラーの技術が利用され、さらに近距離無線は、より近い距離で多くのデバイスを接続するのに利用されるし、将来、自動運転車が登場すれば自動車との接続にも活用される。測位技術とセルラー通信、近距離通信のすべてが統合されることで位置情報やコミュニケーションなどの機能が備わった環境が構築され、そのように人々が必要としていることを提供することで収益を拡大できる」。

測位とセルラー通信、近距離無線の3分野でIoTに注力

 ザイラー氏はさらに、今後のIoT市場の見通しについても語った。IoTの市場は産業向けと個人向けの2つに分けられ、産業向けIoTで最も市場規模が大きいのは「スマートシティ」で、以下、「製造」「M2M」「自動車」と続く。一方、個人向け領域としては「ヘルスケア」「ホームオートメーション」「ウェアラブル」などが挙げられる。

 「B2Bアプリケーションから取得するデータの価値は、FacebookやTwitterから得るデータの価値に勝る。U-bloxはその中核技術をコントロールしているため、IoTの活用を必要とする大きなビジネスにフォーカスできる。当社の製品は堅牢性、安全性、有用性など高い要求に応えられるように製造されており、長い製品ライフサイクルを実現している」とザイラー氏はアピールした。

QZSS対応の新世代製品も開発中

 続いて登壇したのは、ユーブロックスジャパンのカントリーマネージャーを務める仲哲周氏。ユーブロックスジャパンが設立されたのは2007年で、当時は仲氏を含めて社員は2名しかいなかったという。「設立当初は、どこに行ってもU-bloxのことを知っている人はいなかったが、その後、日本のカーナビメーカーも積極的に採用し始めた。現在、自動車メーカーの純正ナビでU-bloxのシェアはおそらく60%くらいだと思われる」。

ユーブロックスジャパン株式会社のカントリーマネージャーを務める仲哲周氏

 今後の戦略については、コネクテッドカー向けにGNSSレシーバーやセルラーモジュール、車内用の近距離通信などの製品を提供するとともに、自動運転車にも取り組んでいく。また、高精度GNSSおよびV2V(Vehicle-to-Vehicle)モジュールの提供も行う。自動車メーカーへの直接販売にも積極的に取り組んでいく方針で、サンフランシスコで開催されたトヨタ主催のカーハッカソンのスポンサーになるといった活動も行っている。

カーハッカソンをスポンサード

 さらに、自動販売機やインフラ向けスマートメーター、ヘルスケアなどの領域にも注力し、デザインレビューから生産まで、日本国内でのテクニカルサポートを提供する。さらに、スタンドアロンカー向けの製品としては、レーダー探知機のほか、QZSS(準天頂衛星)に対応した新世代製品の開発も行う方針であると語った。

QZSS対応の新世代製品を開発中

(片岡 義明)