レビュー
“自分マガジン”も作れる雑誌風キュレーションアプリ「ziny.us」を試す
(2013/3/1 06:00)
いまだ本命といえるサービスが出てきていない印象のキュレーションサービス。この領域に、“ソーシャルメディアの再発明”と銘打ち、2月19日に日本ローンチを果たしたのが、韓国発のiPad版の雑誌風キュレーションアプリ「ziny.us(ジーニアス)」だ。
ziny.usは、ネット上のコンテンツが発行するRSSを収集し、雑誌のようなレイアウトで閲覧できるアプリ。ロボットによる人工知能を実装しており、ユーザーが集めたコンテンツをもとに、ユーザーの関心を反映したコンテンツをお勧めしてくれるのが特長という。
1月の記者会見で、開発元であるソルトルックス日本支社長の氏家真氏は、「Flipboardの可読性、Pinterestの趣味・興味でつながるネットワーク、IBMのWatsonの人工知能の良い部分を取り入れたことが強み」と語った。
そんなziny.usの実力やいかに。2月上旬からクローズドで提供されていたiPad向けのβテスト版をダウンロードし、さっそくその使い心地を確かめてみた。
ホーム画面は本棚に雑誌が並ぶようなインターフェイス
まず、アプリのインストールにあたって気を付けたいのは、対応しているiPadのバージョンだ。初代iPadでも使用は可能だが、iPad 2以上のバージョンが推奨されている。ちなみに筆者はiPad 2で使用した。ダウンロードは無料。インストールを開始するとほんの数秒で完了した。
ホーム画面は、本棚に雑誌が並ぶようなインターフェイスで、ziny.us内で人気の記事を集めた「HOT」、ニュース記事を集めた「NEWS」、FacebookやTwitter上の友人の近況を集めた「FRIENDS」、その他自分で作成する「マガジン」や「スタートガイド」が並ぶ。
画面中央上には、自分のアカウント情報が表示される。ziny.us内でのフォローの数、ほかの人の記事にラブ=“気に入った”した記事、コメントした数、また自分のマガジンにクリップした記事の数が表示される。
画面右上に並ぶ4つのアイコンでは、ziny.us内でつながっているユーザーが自分の記事にラブやコメントをするなど、何かしらのアクションを行うと通知してくれたり、アカウントの設定を変更できる。
レコメンデーション機能を利用するにはアカウント登録が必要
SNS機能や記事のレコメンデーション機能を利用するためには、アカウント登録が必要となる。初めてアプリを立ち上げたときには、ホーム画面にアカウント作成というボタンが表示される。
アカウント作成の方法は、Facebookアカウント、Twitterアカウント、メールアドレスの3つ。
Facebookアカウントで作成する場合には、自分が管理するFacebookグループへのログイン、自分に代わっての投稿、ニュースフィードへのアクセスを求められる。
そして最後に、ニックネーム、セキュリティ設定、メールアドレス(任意)を入力。これでアカウント作成は完了だ。
直感的に記事を選択、左右のスワイプで別の記事を読み進められる
それでは、ziny.usの中身を見ていこう。まず、ホーム画面で「HOT」と書かれたマガジンをタップすると、最新や人気という分類で記事を閲覧できる。記事はサムネイル画像、投稿したユーザー名、記事に付けられたコメントが表示される。
Flipboardのような特異なタッチインターフェイスはないが、直感的に記事を選ぶことができた。さらに他の記事を閲覧したい場合には、画面を右から左にスワイプして読み進めていく。
ホーム画面で「NEWS」と書かれたマガジンをタップすると、記事のタイトル、冒頭部分の文章、記事が公開された時間、記事によってはサムネイル画像が表示される。時間の横に付いている「はさみ」のマークは、記事を自分のマガジンにクリップにするためのボタン。こちらについては後述する。
試しに、ニュース記事を1つタップしてみる。すると、記事の個別ページに遷移するが、その表示方法は「アーティクル」「閲覧ツール」「原文表示」の3種類が用意されている。
「アーティクル」は記事の冒頭部分やサムネイル画像のみを表示、「閲覧ツール」はiPadでの閲覧向けに自動編集されたレイアウトで表示、「原文表示」はニュースサイトでブラウジングしたままの画像がziny.us内で表示される。閲覧ツールでのレイアウトがきちんと最適化されるかは、記事によってまちまち。
趣味・興味でつながるPinterest的な側面も
ziny.us は、Pinterestの趣味・興味でつながるネットワークの良さも取り入れたと謳われているが、ziny.usを使用している他のユーザーとつながるには2つの方法がある。
1つはフォロー。適当な記事に表示されているアイコンをタップすると、フォローと本棚表示というボタンが表示されるので、フォローを選択する。フォローすると、「HOT」の友達という画面に投稿された記事が表示されるようになる。
もう1つは、マガジンを購読するという方法。適当なマガジンを見つけて気に入れば、画面左上にある「+購読」をタップする。すると、ホーム画面の本棚にマガジンが追加される。趣味の合う人と、興味のあるトピックという2軸でつながることが可能なのは、確かにPinterestライクだ。
気に入った記事を見つけたときは、メールやFacebook、Twitterで共有することもできる。ソーシャルメディアでつながっている友人にziny.usに参加してもらうきっかけになるだろう。
お気に入りコンテンツを集めた「自分マガジン」を作成できる
よりアクティブにziny.usを使いたい人は、自分のマガジンを作成することも可能だ。
例えば、自分が気に入った美味しそうな料理の画像ばかりを集めたマガジンを作りたいとする。その場合はまず、収集したい画像を見つけ、前述のはさみボタンをタップ。既存のマガジンに収集するか、新規のマガジンを作成するかを選ぶ。下画像の「+ボタン」をタップすれば、新規のマガジン作成のフローに移ることができる。
「+ボタン」をタップし、マガジン名を入力、カテゴリーを選択、公開の有無を設定する。その後、画像に対するコメント入力。OKを押せば、ホーム画面の本棚に追加される。慣れれば、ここまでの操作はスムーズに進むだろう。
マガジンの詳細設定のところに、ziny.us最大の特徴である“人工知能”の秘密がある。詳細設定で、ロボット「ジニー」によるおすすめ機能の使用をオンにすると、マガジンに新しい記事をクリップすればするほど、推薦される記事の精度が高くなるという。
また、キーワード推薦管理やRSSフィード管理で単語を入力すると、それに沿ってziny.usが記事を探してきてくれる。ジニーが探してきてくれる記事は、マガジンのジニーというボタンをタップすれば表示される。
補足的な機能として、日付表示や「Yahoo!天気・災害」への遷移ボタンにあたるウィジェットをホーム画面に置くこともできる。ziny.usをメインのキュレーションサービスとして使うユーザーにはおすすめだ。
残念ながら、冒頭で触れた“IBMのWatsonの人工知能”を実感するまでには至っていない。おそらく筆者がβテスト版を使用した期間が2週間弱と限られており、コンテンツの取捨選択の量が少なかったためだと思われる。
今後、さらにコンテンツを取捨選択していき、自分に最適化したコンテンツを表示してくれれば、ユーザーはますますお気に入りの記事を集めたくなる好循環が生まれることも予想される。
5月からは、ziny.us利用者向けに100GBを上限とした無料ストレージサービスを順次提供することも発表されており、今後の展開に期待が持てそうだ。
なお、このβテスト版の期間中、ソルトルックス日本支社長の氏家真氏が気さくなメールマガジンを小まめに配信していることが印象に残っている。本人の週末の過ごし方などもざっくばらんに交えながらアプリをおすすめしてくれるその姿勢には非常に好感が持つことができた。