つぶやく感覚で手軽に“俺コンテンツ”を販売! 「Gumroad」使用レポート


 オンライン上でコンテンツを販売できる海外サービス「Gumroad」が、手軽にコンテンツを販売できる仕組みとして話題を集めている。実際にGumroadを利用し、コンテンツ販売から購入までの使用感をレポートする。

Gumroad

シンプルかつ手軽にコンテンツを販売できるプラットフォーム

 Gumroadは、デジタルコンテンツを個人でも手軽に販売できるプラットフォームサービス。動画や静止画、電子書籍などアップロードし、値段を決めるだけですぐに販売できるという徹底したシンプルさがその特徴だ。

 販売するコンテンツはウェブサイトにアップロードできるファイルであれば形式を問わず、購入するとダウンロードが可能なURLを入手できるという仕組み。入手したURLをTwitterやFacebookで投稿すればすぐにでもコンテンツを販売できる。

 利用にはTwitterかFacebookのアカウントがあれば、トップページにあるサービスアイコンからユーザー認証を行なうだけでよい。Gumroadのユーザーアカウントを設定するという必要もなく、すぐにコンテンツ販売の準備ができる。Twitter、Facebookのアカウントを持たない場合も、メールアドレスから登録することが可能だ。

GumroadのTOPページからTwitter、Facebookのアイコンをクリックするだけで利用を開始できる

 コンテンツの販売方法も非常にシンプルで、コンテンツの名称、URL、そして値段を設定するだけ。コンテンツはファイルがアップロードされているURLを指定するほかに、ファイルのアップロードも可能だ。ファイルをアップロードする場合、アップロード先はAmazon EC2となっており、Gumroadのドメイン自体ではファイルを持たない仕組みになっている。

ソーシャルサービスでログイン後、販売したいファイルとタイトル、価格を設定

 価格は1から1000までの数値が入力でき、単位はUSドルのほかに日本円やユーロ、ポンドが設定可能。一度設定を行なうとGumroadが専用のURLを発行し、このURLにアクセスすることで該当のコンテンツを購入できるようになる。

 一度作成したURLは、タイトルや価格、リンク先などを自由に編集できるほか、購入前に確認できるプレビュー画像、概要などの設定も可能。作成したURLをTwitterとFacebookでシェアできるボタンも用意されており、自分のURLを手軽に拡散できる。

作成済みURLの編集画面。概要やプレビュー画像などを設定できる

 ここまでの設定でコンテンツ販売は可能だが、販売した金額を自分が受け取るにはPaypalに別途ユーザー登録を行ない、Gumroadに設定する必要がある。ただし、コンテンツの販売自体はPaypalアカウントの設定は不要であり、収益はGumroad側で蓄積できるため、まずはGumroadの登録だけ行なっておき、Paypal設定はあとで行なうということも可能だ。

収益を受け取るにはPaypalアカウントと連絡先メールアドレスの登録が必要

メールアドレスとクレジットカード情報のみでコンテンツ購入が可能

 作成されたURLは「https://gumroad.com/l/xxxx」(xxxxはランダムな英数字)になっており、画面には設定したタイトルやプレビュー画像、概要などが表示されるのみ。どのユーザーがこのURLを作成したかといったユーザーに紐づく情報は一切表示されないため、TwitterやFacebookのアカウントを見てコンテンツ販売元を特定したり、購入しようと思ったコンテンツの制作者が他にどんなコンテンツを販売しているか、といったことは確認できないようになっている。

 コンテンツの購入は販売以上にシンプル。気に入ったコンテンツを見つけたら「I want this!」をクリックし、メールアドレスとクレジットカードの情報を入力するだけだ。「Pay」をクリックするとコンテンツを閲覧・ダウンロードするためのURLが表示される。購入履歴は入力したメールアドレスあてにレシートとして送信される。

 なお、Gumroadのトップページには、個別のコンテンツへのリンクは掲載されておらず、Gumroadで販売されているコンテンツを知るには、販売側がTwitterやFacebookなどを通じて自ら告知する必要がある。制作者がURLを告知しない限り、Gumroadに登録したコンテンツは誰の目にも触れることがないという、非常に割り切った仕組みになっている。

購入したいコンテンツを見つけたら「I want this!」をクリック
メールアドレスとクレジットカード情報を入力して購入する

 自分のコンテンツが購入されると、マイページの右上にその金額が表示されるほか、購入者が入力したメールアドレスをコンテンツごとに確認可能。メールアドレスはテキストファイルで表示するというこちらもシンプルな仕組みになっている。

コンテンツが購入されると右上に総収入を表示。各コンテンツごとに購入者のメールアドレスを確認できる
メールアドレスはテキストファイルで一覧表示される

 販売金額のうち5%+0.3ドルが手数料として徴収され、残りがコンテンツ販売側に支払われる。なお、販売金額は4つの単位から選択できるが、総合金額はすべてドル表示となっており、収入額が10ドルを超えると、その日から15日以内に設定したPaypalのアカウントに支払われる。

徹底したシンプルさでコンテンツ販売のハードルを大きく下げる試み

 Gumroadの利用登録から販売設定、購入までの流れを一通り試してみたが、強く感じるのは徹底的したシンプルさ。コンテンツ販売側はソーシャルアカウントがあれば認証を行なうだけですぐに販売を開始でき、購入側も余計なユーザー登録の必要なくメールアドレスとクレジットカードを入力するだけでよい。

 また、運営システムとしても決済はPaypalを利用し、コンテンツのアップロードも自社ドメインではなくAmazon EC2にそのままアップロードするなど、Gumroad自体は余計な情報を持たないシンプルな作りになっている。

 デジタルコンテンツの販売は著作権管理の面からもDRM技術などが導入されているのが通例であり、一般ユーザーがこうしたシステムを利用してコンテンツを販売するのは非常に難しかった。

 GumroadはDRMという概念を一切取り払い、ファイルをアップロードするだけで販売できるという手軽さは、技術的には新しいものではないもののコンセプトとしては画期的。販売者に対しても9割近い収益を還元するという点は、クリエイターにとっても嬉しいところだろう。

シンプルさを追求したための問題点も

 一方でシンプルがゆえの問題点もいくつか見受けられる。ユーザー登録不要で購入できるのは手軽な分、誰が購入したのかを特定することもできないため、購入後のURLを複数人で共有してもそれを防ぐことはできない。

 購入前のプレビュー画像は別途設定できるため、実際のファイルとは別のものを販売することもできてしまうが、その際も販売主を特定することができないため、悪質なコンテンツ販売に遭遇した場合もサービスの運営元に直接連絡するしか方法がない。

 販売方法が手軽かつ個人特定されないために、他人のコンテンツを無断で販売する、といった不正利用も想定される。もちろん、こうした不正販売自体はGumroadの問題ではなく、Gumroadが存在する前でもPayPalを使えば同じような不正販売は可能だった。とはいえここまでコンテンツを手軽に販売できるGumroadが人気のサービスになることで、不正なコンテンツ販売もまた促進されてしまう可能性もある。

 しかしこうしたデメリットは、徹底したシンプルさを追求するがゆえに生まれてしまう部分でもある。仕組みとしては非常にオーソドックスながら、ひたすらシンプルにこだわることで新しい価値を生み出したという点ではGumroadは非常に興味深い存在だ。また、これまでなかなか収益を上げられずにいたクリエイターにとっても新しい収益の可能性を生み出したという側面もある。

 現状はまだサービスを開始したばかりでもあり、今後はさまざまな課題に解決案が出てくると思われる。不正販売についてもサービス利用に登録するTwitterやFacebookのアカウントを販売ページに表示することで販売主を明記する、ということも可能だろう。ブログやSNSといったソーシャルメディアが情報発信のハードルを下げたことと同様、手軽さにこだわることでクリエイターが収益を得るためのハードルを大きく下げたという点では非常に注目度の高く、今後の展開を期待したいサービスだ。

Gumroadの公式Twitterによると、日本語版も準備中だという

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(甲斐 祐樹)

2012/2/15 17:17