「エンジニア自身が使いたいサービス」を目指す、お名前.com VPS

月額940円から使えるメモリ1GBプランも登場

 GMOインターネット株式会社が運営する「お名前.com」では、仮想専用サーバー(VPS)サービスの「お名前.com レンタルサーバー VPS(KVM)」を、2012年3月から提供している。

 「お名前.com レンタルサーバー VPS(KVM)」は、サービスの名称にもある通り、仮想化技術としてKVMを採用することで、幅広いOSの動作をサポートする完全仮想化を実現したサービスだ。さらに、より高いパフォーマンスを発揮する準仮想化ドライバー(Virtio)の利用も可能で、完全仮想化と準仮想化をコントロールパネルから切り替えて使用できる点が特徴となっている。

 これまでのサービスラインナップでは、月額1380円(年払いでは1153円/月)の「メモリ2GBプラン」が最小スペックとなっていたが、8月1日からは月額940円(年払いでは833円/月)の「メモリ1GBプラン」の提供を開始した。

プラン名メモリCPUHDD月額料金年間一括払い
メモリ1GBプラン
(新規追加)
1GB2コア100GB940円9,999円
(833円/月)
メモリ2GBプラン2GB3コア200GB1,380円13,846円
(1,153円/月)
メモリ4GBプラン4GB4コア400GB3,880円38,918円
(3,243円/月)
メモリ8GBプラン8GB6コア800GB7,880円79,027円
(6,585円/月)
メモリ16GBプラン16GB10コア1TB15,880円159,248円
(13,271円/月)

 今回の新プラン投入の意図や、VPSサービスを提供する上で注力した点、今後のサービス予定などを、GMOインターネットでサービスを担当する、事業本部ホスティング事業部の松井大亮氏と藤原優一氏、システム開発部の郷古直仁氏に伺った。

月額940円、年額9999円の「1GBプラン」でさらにVPSの入門を手軽に

――お名前.comのVPS(KVM)サービスの特徴を教えて下さい。

事業本部ホスティング事業部の松井大亮氏

松井:VPSサービスとしては、任意のOSがインストール可能、KVMによる完全仮想化、順仮想ドライバーの使用も可能、エンジニア目線で開発した独自のコントロールパネル、といった点が特徴です。ウェブサーバーなどは一切入っていない、いわゆる“箱”の状態のサーバーを提供するサービスとなります。

 プランについてはこれまで、「メモリ2GBプラン」「メモリ4GBプラン」「メモリ8GBプラン」「メモリ16GBプラン」の4種類を提供してきましたが、8月1日からは「メモリ1GBプラン」の提供を開始しました。各プランは、メモリ、CPU、HDDといったスペックは違いますが、その他の機能については違いはありません。

 お名前.com VPS(KVM)は、基本的にエンジニアをターゲットにしたサービスなのですが、「メモリ1GBプラン」はよりライトユーザーというか、これからVPSを勉強したいといった方にご利用いただきたいプランで、料金も月額940円、年額払いでは9999円で、1カ月あたり833円から利用できます。

――2GBプランの月額1380円でもかなり安いと思うのですが、それよりもさらに安いプランを提供されるのはなぜでしょうか。

藤原:「もう少し安くならないのか」という要望はとても多く、たとえば学生さんが契約することを考えた場合でも、1000円以下というのは1つのラインになるかと思います。現在2GBプランをお使いの方からも、パフォーマンスは高くて使い勝手も良いのだけれど、やはりさらに安いプランも欲しいという要望も多くいただいています。1000円以下のプランを提供することで、これまでお申し込みいただけなかった方にも申し込んでいただけるのではと期待しています。

――逆に、一番上のプランはメモリ16GBと、かなり高いスペックのプランまで用意されているのはなぜでしょうか。

藤原:「お名前.com」のブランドの中では「専用サーバー」の領域のサービスがありませんので、もっとハイスペックなサーバーが欲しいというニーズに対して、VPSとして最高のものを提供しようということで、16GBのプランも用意しています。これだけのスペックであれば、専用サーバーが必要だというユーザーにも満足いただけるのではないかと思います。

――契約中のプランの変更は可能なのでしょうか。

藤原:契約的にはプラン変更は可能で、年額契約でも残りの期間分の差額をいただく形で上位のプランへの変更は可能です。ただ、サーバーとしては初期化された別のサーバーをご利用いただくという形になります。

郷古:サービスにはお試し期間がありますので、その間にデータ移行を済ませていただいてから、本契約していただくというやり方も可能です。

――無料で使えるお試し期間を15日間設定されていますね。

藤原:専用サーバーと違って、VPSではスペックが「仮想何コア」といった表現になってしまいますし、パフォーマンスなども実際に使ってみなければわからないことが多いサービスです。やはり実際に使っていただいて、パフォーマンスなどを確認した上で契約いただくことが必要だと考えていますので、お試し期間を設定しています。

――エンジニアの方をターゲットにしたサービスということですが、用途としては実サービスよりも実験的な使われ方が多いのでしょうか。

藤原:両方ですね。実際のサービスにお使いいただいているケースも多いですし、サービス開発のテスト環境としてお使いいただいているケースもあります。

「エンジニア自身が使いたくなる」サービスを目指して開発

事業本部ホスティング事業部の藤原優一氏

――サービスの開発にあたってここはこだわったというポイントはどこでしょうか。

郷古:KVMによるVPSを提供する以前から、VirtuozzoというOS仮想化技術を使ったVPSを提供しているのですが、ユーザーの方からいろいろなOSが使いたいという要望が多く寄せられましたので、まずはその要望を実現したいという思いがありました。また、それを実現するのであれば、ユーザーが自由に好きなOSをインストールできるようにしたいと考えました。

 次に、企業内のネットワークなどから利用することを想定すると、社内運用ルール制限などでウェブしか使えないというネットワークもあると思うので、ウェブ上で一通りの作業はできるようにすることも必要だろうと考え、ウェブから操作できるコントロールパネルの機能を充実させました。

藤原:我々のサービスは、他社と比較してもまずは同じ価格帯なら、同じ機能を必ず提供しようと考えていますが、それだけでは使い勝手がよくありませんので、さらに機能を追加しています。

 VPSというと、どうしても実際のサーバーに比べて自由度が落ちるというイメージもあります。仮想環境なのですべての操作が実現できるわけではありませんが、コントロールパネルでのVNCコンソールなど、なるべくその差を埋めるための機能を実装しています。

郷古:コントロールパネルでの操作も、ユーザーが設定を変更しても反映されるまでには時間がかかるサービスも多かったのですが、今回のサービスではコントロールパネルからAPIを通じてサーバーに設定を反映させる形となっており、リアルタイムに近い動作です。

 とにかくエンジニアの視点で、エンジニア自身が使いたくなるサービスを目標に開発してきました。たとえばコントロールパネルも、最初の画面でVNCコンソールを表示するようにしています。

コントロールパネルでは最初の画面でVNCコンソールが表示される

藤原:このあたりは随分議論したのですが、やはりエンジニアが一番よく使う機能をすぐ使えるようにしようということで、コントロールパネルの最初の画面でVNCコンソールが使えるようにしました。サーバーの各種情報を画面の横に表示しているのも同じ理由で、作業中に参照したい情報は常に表示されている方が便利だからです。

 OSについても、ユーザーがインストール用のCDやDVDのISOイメージをアップロードすることができるようにしたことで、好きなOSがインストールできます。一方で、準仮想化ドライバーに対応することで、パフォーマンスも必要だという要望にも答えています。

 VPSサービスを提供していると、本当に様々なOSを使いたいという要望が来ます。それに応えて、我々がいろいろなOSのインストールイメージを用意するという手もありますが、むしろユーザー自身がイメージをアップロードできる方が、機能としては正しいだろうという考えです。もちろん、多くのユーザーの要望があるOSについては、あらかじめ用意していますが。

郷古:CDイメージをアップロードできることで、たとえば何らかのトラブルの際にも、レスキュー用のCDから起動するといった、実際のサーバーと同様の対応もできます。

パフォーマンスは低下させないよう日々調整、24時間電話サポートも提供

システム開発部の郷古直仁氏

――パフォーマンスをベンチマークの形でサービスページにも掲載していますが、パフォーマンス面でも他社には負けないというこだわりがあるのでしょうか。

藤原:パフォーマンスについては、スペックですと「仮想何コア」という表現になってしまうので、やはり実際にベンチマークを指標として示すのがわかりやすいだろうと考えて、サイトにも掲載しています。

――調達するサーバはなにか特殊な構成なのでしょうか。

郷古:むしろ、メーカーで一番出荷されている機種が中心ですね。台数を調達する上でも有利ですし、そうした機種の方がコストパフォーマンス的にもいいことが多いです。

――共用ホスティングサービスの時代から、どのユーザーでも同じようにパフォーマンスを出すのは難しいという問題がありますが、その点への対処はされているのでしょうか。

藤原:サーバーの状況や収容数などを常に確認して、なるべくユーザー間での不公平が出ないようにしています。ただ、共用サーバーよりもVPSの方がリソース配分などの管理ができますので、その意味ではVPSの方が調整は楽ですね。

――サービスの紹介ページには、「GMOアプリクラウド」で培ったサーバー仮想化の技術や経験を活かしたサービスだとありましたが、具体的にはどのような点が活かされているのでしょうか。

郷古:GMOアプリクラウドはソーシャルゲームやアプリなどの事業者向けのサービスですが、提供側からするととてもハードに使われているサービスで、ユーザーから要求されるものも高いサービスです。

藤原:弊社でも長年ホスティングサービスを提供していますが、ソーシャルゲームの流行を受けて、これまで経験したことのないレベルでのサーバーへのニーズがありました。そうしたニーズに対応していくのは大変ですが、その中で仮想化技術についてのパフォーマンスのチューニングや運用実績など、多くのノウハウが得られました。一般向けのサービスとしてVPSを展開するにあたっても、このノウハウが活用されています。

――電話による24時間サポートを提供されているのは、VPSサービスでは珍しいですが。

藤原:GMOインターネットはISPから始まって以来、ずっとサポートを重視していますので、他のサービスと同様に、24時間の電話サポートを行なっています。同じ「お名前.com」ブランドでのサービスで、「VPSだから電話サポートは無し」という訳にはいきませんので。

――今後提供を予定している機能があれば教えてください。

藤原:既にサービス紹介サイトにも記載していますが、IPv6については今後対応する予定です。テスト環境として、IPv6を使いたいという要望も多いですし。

 コントロールパネルから複数台のVPSを操作できる点も特徴ですので、さらにそれを活かせる機能も提供したいですね。IaaS型のクラウドサービスなどでは提供されているところもありますが、ユーザーが構築したサーバーをテンプレート化して複数台に展開できるような機能ですとか、ユーザーのニーズを聞きながら検討していきたいと思います。

――ありがとうございました。



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(三柳 英樹)

2012/8/10 07:00