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ソニーの電子書籍リーダー新モデル「PRS-T2」ファーストインプレッション


 9月3日、ソニーの新たな電子書籍リーダー「PRS-T2」が発表された。9,980円という1万円を切る価格設定に加えて現行モデルも大幅な値下げが行なわれており、ソニーの電子書籍事業の本格展開を感じさせる。ソニーの電子書籍「Reader Store」の使用感も踏まえながら新端末の「PRS-T2」をレビューする。

表示能力やウェブ連携機能を高めた電子書籍リーダー新モデル

 「PRS-T2」は、6型電子ペーパーを搭載した電子書籍リーダー。ソニーの電子書籍サービス「Reader Store」に対応し、ウェブサイトから購入した電子書籍をPC経由で転送して読むことができるほか、無線LAN経由で本体からReader Storeにアクセスし、直接電子書籍を購入することもできる。

6型電子ペーパー搭載の電子書籍リーダー「PRS-T2」

 前モデル「PRS-T1」と比べて電子ペーパー機能の向上が図られており、電子ペーパー特性である白黒反転の回数が最大で15回に1回まで抑えられている。また、FacebookやEvernoteといったウェブサービスとの連携機能も新たに搭載した。

 本体サイズは約110×173×9.1mm(幅×高さ×厚さ)、重さは約164gで、前モデルのPRS-T1と比べて2mm厚くなっているが、重さは4g軽量化が図られた。また、本体前面のボタンも横長で同形状だった前モデルに対し、PRS-T2ではボタンそれぞれが機能の形をするという仕様変更が行なわれている。

本体前面には機能の形をした5ボタンを配置

 ディスプレイは16階調グレースケールの6型電子ペーパーで、解像度は600×800ドット、内蔵メモリは2GBと前モデルから変わりがない。外部インターフェイスはmicroSDカードスロットとmicroUSBポートを備えるが、前モデルで対応していた音楽再生機能がPRS-T2では省略されているため、イヤフォンジャックも省かれている。

底面にmicroUSBポートと電源ボタン 左側面にmicroSDカードスロット
本体同梱のケースとタッチペン 本体をケースに収納したところ

 無線LANはIEEE 802.11b/g/nに準拠し、暗号化はWEP/WPA/WPA2をサポート。バッテリーは内蔵型リチウムイオン充電池で、駆動時間は1日30分の読書を繰り返した場合、ワイヤレスオフ時で最長2カ月、ワイヤレスオン時で最長1.5カ月。充電はPC経由のUSB充電が約2.5時間、別売のACアダプター充電が約2時間となっている。

kobo Touchとのサイズ比較 kobo Touchとの厚さ比較

 本体価格は9980円と1万円を切る価格で9月21日に発売。なお、現行モデルの価格も大幅な改定が行なわれており、前モデルのPRS-T1は8,980円、無線LAN機能を搭載せず、電子書籍を読むにはPCとの接続が必要になる5型ディスプレイモデル「PRS-350」は7,980円、無線LANに加えて3Gを搭載し、3Gの通信料金が最大2年間無料となる「PRS-G1」は14,800円で購入できる。

ソニーストアのReader販売ページ。5型ディスプレイ現行モデル「PRS-350」は7980円と、楽天Koboと同額に値下げされた


利用にはMy Sony Clubアカウントが必要

 本体の初回起動時には現在時刻の手動設定が必要。この時点ではプリインストールされているサンプルやユーザーガイドなどを読むことができるが、Reader Storeでの書籍の購入や読書にはソニーの会員サービス「My Sony Club」のログインがさらに必要になる。

 My Sony Clubのアカウントを持っていない場合は端末からアカウントを作成することはできず、PCか携帯電話から別途作成する。My Sony Clubのアカウントでログインしたのち、続けてPRS-T2を利用端末として機器認証することでReader Storeの利用が可能になる。

初回セットアップでは手動での時刻設定が必要 My Sony Clubアカウント設定前はプリインストールのサンプルなどを利用できる My Sony ClubのアカウントはPCまたは携帯電話で作成 アカウント設定の後に利用端末の機器認証を行なう


購入方法はウェブサイト経由と端末から直接購入の2通り

 Reader Storeでの電子書籍購入は、ウェブサイトからPC経由で購入する方法と、PRS-T2から直接購入する方法の2通り。PC経由で購入した場合は、PRS-T2とPCをUSBで接続し、専用の転送ソフト「eBook Transfer for Reader」を使って転送する。

 ウェブサイトからの購入も、PRS-T2に設定したMy Sony Clubのアカウントでログインが必要。特集やランキング、カテゴリー表示に加えて著者名、タイトルでの検索も可能なほか、書籍ごとのページには「この書籍を買った人は、こんな書籍も買っています」というリコメンドを表示。

Reader Store

 Reader Storeの書籍冊数は9月3日時点で約63,600冊で、うち無料は2000冊程度。有料書籍の内訳はコミックが約2万2000冊、書籍が約3万6000冊、雑誌が約2000冊と、書籍が過半数を占めている。ソニーによれば2012年上半期は山崎豊子や誉田哲也、村山由佳、池波正太郎などの本が人気といい、「本好きが集まる本屋として定着している」という。

 ランキングも総合ランキングのほか書籍やコミック、雑誌というカテゴリー別にも用意されており、特集ページも充実。1度書籍を購入するとトップページには購入した書籍のデータに基づいたお勧めの電子書籍を表示するといったリコメンド機能も用意されており、電子書籍を探しやすいような作りになっている。


購入はカート方式。購入までの手順はやや煩雑

 書籍の購入はカート方式で、気に入った本をカートに入れてから一括で購入する仕組み。カートに入れた書籍を購入する際は、ログイン状態であっても改めてMy Sony ClubのIDとパスワードを入力した上で、決済に利用するクレジットカード情報を確認し、最終的な購入内容を確認した上で「この内容で購入する」を選択することで購入が可能になる。

書籍の購入はカート方式 カートに入れるとカートの中身を確認する画面に遷移。購入する場合は「購入手続きに進む」をクリック
支払い方法の確認。現状の支払い方法はクレジットカードのみ 購入内容の最終確認。メールマガジンのチェックボックスはここで表示され常にオンの状態 購入が完了し、書籍をダウンロードできるようになる

 購入したい書籍を見つけてから実際に購入するまでの流れを見ると、「書籍をカートに入れる」「IDとパスワードでログイン」「クレジットカード情報の確認」「最終確認」と、実際に購入するまでの工数が長い。購入した書籍データも自動ではダウンロードされないため、手動でのダウンロードが必要になる。

 また、購入確認の最終画面ではメールマガジンの購読チェックボックスが表示されるが、このチェックボックスはデフォルトでオフにすることができず、購入するたびにチェックボックスがオンになっている。不要なメールマガジンの購読を半ば強制するこの仕組みはユーザーにとってあまり気持ちのいいものではなく、この点は修正を望みたいところだ。


本体からの直接購入・ダウンロードも可能

 PRS-T2から電子書籍を直接購入する際は、ホーム画面下部の[Reader Store」から購入が可能。ウェブサイトとレイアウトは違うが新着やランキング、特集、ジャンル・著者・出版社一覧などほぼ同等の機能が利用可能。タイトルや著者名で直接検索して購入することもできる。

PRS-T2からReader Storeへアクセスしたところ 新着情報 週間ランキング
特集 ジャンル別一覧 著者一覧 出版社一覧
メニュー画面 マイページ情報 Reader Storeの優待プログラム。電子書籍を購入するとポイント画蓄積される

 購入の手続きはウェブサイトとほぼ同様で、購入のたびにログインを行ない、クレジットカード情報を確認してから購入内用を最終確認する、という仕組み。2回目以降のログインはパスワードのみでIDは不要などウェブサイトよりは多少簡略化されているものの、やはり購入までの手間は同じようにかかる。また、PRS-T2から購入する際もメールマガジンの購入はデフォルトでオンになっており、チェックを外しても再度購入する際はまたオンになっている。

書籍の購入画面 カートから購入手続きへ 初回のみIDとパスワードのログインが必要 支払い方法の選択画面
購入内容の最終確認。ここでもメールマガジンがデフォルトでオンになっている 購入した書籍は一括ダウンロードが可能 画面上部をタップするとダウンロード状況が一覧できる 2回目以降の購入はID不要でパスワードのみを入力

 購入した電子書籍は、ウェブサイトまたはPRS-T2直接どちらから行なった場合でも端末へのデータ保存が必要。PC経由の場合は専用ソフト「eBook Transfer for Reader」を利用し、PRS-T2とPCをUSBで接続して転送する。ソフトはWindows XP/Vista/7に加えてMac OS X v10.5.8以降にも対応しているため、OSを気にせず利用できるのは嬉しい。現在はPRS-T2が発売前のためかeBook Transfer for Readerが本体では認識されなかったが、発売日には対応されるだろう。

 また、PCで購入した電子書籍でも、PRS-T2から直接ダウンロードすることが可能。購入した書籍はウェブサイト経由か端末経由かを問わず購入履歴として管理されており、本棚を「Reader Store購入履歴」に切り替えることでダウンロードできる。購入した書籍の数だけ画面をタッチする必要はあるが、ネットワークに接続していればケーブルでPCを使うことなくダウンロードできるため、こちらのほうが手軽と感じた。

購入履歴からのダウンロード。PCを使わずワイヤレスでダウンロードできるため手軽


読書操作はレスポンスも良好で快適

 購入した本を読む際は本体下部の左右キーで読み進められるほか、画面をなぞる操作でもページの遷移が可能。ほかにも画面右上をタップしてしおりを設定したり、指2本で画面をスワイプすることで拡大・縮小することもできる。フォントサイズやメニューボタンから「文字サイズ」で8段階から切替が可能。ただしフォントの種類は1種類のみで変更することはできない。

読書中の画面 メニューボタンからフォントサイズの変更が可能 フォントサイズ最大
フォントサイズ最小 画面右上をタップでしおりを設定 指2本のスワイプ操作で拡大・縮小

 画面のレスポンスは良好で、ボタンを押すとほぼ同時に画面が切り替わる。ページ送りはボタン操作で行なえるため、本文を手で覆い隠してしまうこともなく快適に読むことができる。本体が164gと非常に軽いこともあって手への負担も少なく、読書に集中できる。

 電子ペーパーの特性である白黒反転も最大で15回に1回に抑えられており、読んでいる最中に白黒反転が発生する頻度は少ない。

 



 

 ただし、これは個人差のあるところだが、白黒反転時も次のページ表示速度が速いこともあって、読書に夢中になってしまうと白黒反転の頻度はさほど気にならない。電子ペーパー自体、文字に文字が重なって次のページが表示されるという仕組み自体が特徴的なため、どちらにせよ電子ペーパーでの読書自体に慣れは必要だろう。


FacebookやEvernoteなどウェブ連携も充実

 読書以外の機能もさまざまな機能が用意されている。画面を長押しすると文章の選択ツールが現われ、指定した文章をハイライト表示したり、メモをつけて保存することが可能。インターネットに接続した状態であれば、WikipediaやGoogleでの検索のほか、アカウントを設定しておくことでFacebookやEvernoteへの投稿も可能だ。

 Facebook投稿は文章選択のほか、メニューの「その他」から投稿することも可能。どちらもReader Storeへの該当リンクや画像に加えて任意のコメントをつけて投稿できる。

文章を選択したところ WikipediaやGoogleで検索できる Facebook投稿画面
Facebookへの投稿イメージ

 Evernoteは文章を保存できるだけでなく、Evernoteに保存したウェブサイトをPRS-T2で閲覧することも可能。Google ChromeとFirefox向けに提供されている拡張機能「Evernote Cleary」でウェブサイトを保存することで、PRS-T2本体で閲覧が可能になる。なお、PRS-T2での閲覧は指定したEvernoteのノートブックのみがダウンロードの対象となるため、Evernote Clearyのノートブック保存先と合わせておく必要がある。

 Evernoteのデータは自動同期の設定も可能だが、Evernote Clearyで保存した直後に同期されるわけではなく、同期までにはかなりの時間がかかった。ソニーによれば自動同期は毎日1回、深夜3時から3時59分の間に行なわれる。スリープ状態やスタンバイ状態でも同期するとのことで、自動同期を設定しておけば、日に1回、利用していない時間にその日クリップした分がまとめて同期され、翌日読めるという使い方が想定されているのだろう。このため設定しておけばいちいち同期する煩わしさはないが、保存したデータをすぐ読みたい、という場合は本棚をEvernoteに切り替え、手動で更新を行なう必要がある。

Evernoteへの投稿画面
Evernoteへの投稿イメージ Evernote Clearyでウェブサイトを変換。右側のEvernoteマークからEvernoteへ保存できる
本棚を切り替えてEvernote Clearyで保存したウェブサイトを閲覧できる Evernote Clearyで保存したデータ一覧。画面上のEvernoteアイコンまたはメニューからウェブ条のデータと同期できる INTERNET Watchの記事を表示したところ Evernoteの設定画面。自動同期も可能


ブラウザー機能は白黒表示ながら機能は充実

 読書機能以外にブラウザーも搭載。表示は白黒ながら機能は充実しており、ダブルタップすることでウェブサイトを端末サイズに合わせて拡大したり、リンクを長押しして別のウィンドウで開くなど、スマートフォンのブラウザー並みの機能を備えている。

ブラウザー画面 ダブルタップで本体幅サイズへ自動で拡大 複数ウィンドウやEvernoteへの投稿機能も搭載
設定画面 リンク長押しで新規ウィンドウで開く

 任意のウェブサイトを画面キャプチャーできる機能も搭載。ただし画面キャプチャーはデータが本体に保存され、外部に取り出すことはできない。

画面キャプチャー機能。データは本体内に保存され取り出せない

 なお、ブラウザーを搭載したことで公衆無線LANサービスも利用が可能になる点もポイント。有料の公衆無線LANサービスは多くがSSIDの接続に加えてブラウザーでの認証も必要になるが、PRS-T2であればブラウザーの認証を行なうことで公衆無線LANでも接続できる。


魅力的な書籍のラインアップ。ウェブ連携は更なる機能向上に期待

 低価格な端末とテレビCMや駅広告など大規模なプロモーションで注目を集めた楽天koboの影響で、電子書籍自体の注目度も高まっている。筆者もあくまで個人的な事象ではあるが、kobo Touchを持ち歩いて読書していると「それ知ってる!」という声をかけられることも多々あり、限定した環境ながらも電子書籍端末の認知度が向上していると感じられる。

 そうした楽天koboへの対抗もあってか、1万円を切る低価格で新端末を投入し、既存の端末も大幅な値下げを行なったソニー。電子ペーパーの表示能力やEvernote連携といった機能も魅力的ではあるが、それ以上に感じるのは書籍数の圧倒的な違い。無料の書籍を除けば冊数も少なく、作家あたりの書籍数も少なかった楽天koboと比べると「読みたい」と思える本が非常に多い。電子書籍は端末の機能云々以前に書籍のラインアップが重要ということを改めて感じた。

 端末スペックで楽天koboと比較すると、楽天koboの専用モデル「kobo touch」は7,980円という低価格ながら無線LAN機能を搭載しており、端末から直接購入やFacebookへの投稿機能も備えるなどPRS-T2と機能は近い。ただし、端末の応答速度や電子ペーパーの表示能力ではPRS-T2のほうが圧倒的に高い。価格はkobo Touchより2000円高いが高性能かつEvernote連携を備え、さらに現状では比較にならないほどラインアップに差がある電子書籍ストアの書籍数を総合して考えると、現時点ではPRS-T2に軍配が上がるだろう。

 新発売のPRS-T2はもちろん、前モデルもPRS-T1を始めとして価格改定が行なわれたことで選択肢の幅が広がった。価格差で見るとPRS-T2とPRS-T1は1,000円の差で、電子ペーパー性能の向上とウェブサービス連携を考えるとPRS-T2のコストパフォーマンスは高い。一方、PRS-T1は音楽再生機能も備えており、オーディオブックも利用できるという点に違いがある。

 PRS-T2の特徴であるウェブサービス連携は、必要最低限にとどまっており、実際に利用するともう少し拡張が欲しいと感じた。例えばFacebook連携はユーザーが能動的に行なう必要があるため、せっかく設定しても読書しているだけでは一切伝わることがない。

 同じソニーグループのゲーム機であるプレイステーション 3もFacebook連携機能を搭載しているが、こちらはゲームソフトなどをダウンロードするたびにFacebookへの投稿確認画面が表示され、希望しないときはオフにできる。こうした画面が加わるだけでソーシャルへの情報発信は積極的になるだけに、ユーザーに不快な思いをさせない程度にソーシャルへの投稿を促すような試みは欲しいと感じた。

 なお、この点に関しては楽天koboは「Reading Life」という機能を備えており、特定の時間に書籍を読む、一定数の書籍を読むといった条件をこなすたびにバッジが発行され、そのたびにFacebookへの投稿を促される。もちろんFacebookへ実際に投稿するかどうかはユーザーの任意だが、ゲーム感覚での楽しみをもたらしつつソーシャルの連携を図るという点では、kobo Touchの取り組みは非常にユニークと感じた。

 一方のEvernoteも試みとしては面白いが、実際に読むには同期操作のためにネット接続が必要。自動同期は深夜に1回しか行なわれないため、保存しておいたデータを移動中に読みたい、という場合はこまめに本体で同期を行なう必要がある。よりEvernote連携を便利に使うためには数分単位で同期の時間を指定する機能や、メニューから手軽に手動で同期を行なえる機能なども欲しいところだ。

 とはいえ、低価格ながら高性能な端末とラインアップが豊富な電子書籍サービスの組み合わせという点では、PRS-T2の魅力は非常に高い。2012年秋に予定されているAndroid端末との同期機能がリリースされればさらに便利な使い方が可能だろう。

 楽天koboの登場に加え、今秋にはいよいよAmazonの電子書籍リーダー「Kindle」の日本展開が予告されており、2012年は電子書籍市場が今までにない盛り上がりを見せる年になると言える。こうした各種サービスの登場と競争により、電子書籍サービスがより便利かつ魅力的になっていくことを期待したい。



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(甲斐 祐樹)

2012/9/10 06:00