コンパクトで簡単設定、機能充実の無線LANルーター「AtermWR8165N」


 「AtermWR8165N(STモデル)」(以下WR8165N)は、IEEE 802.11b/g/nに準拠したNECアクセステクニカ製の無線LANルーター。安価な価格ながらも必要十分な機能を備えているだけでなく、コンパクトな本体サイズと充実した無線LANの設定支援機能が特徴だ。

 価格はオープンプライスながら、NECの直販サイト「NEC Direct」での価格は単体モデルが3486円と4000円を切る価格で販売されている。最近ではPCの無線LAN搭載が標準となっているため不要のユーザーも多いと思うが、USB接続型の無線LANアダプタを同梱した「AtermWR8165N(STモデル)USBスティックセット」も5481円と5000円台での購入が可能だ。

「AtermWR8165N(STモデル)」。NEC Direct価格は3486円

 スマートフォンの普及で無線LANを利用するシーンも増えており、家庭内の無線LAN需要は以前よりも高まっている。また、NTTドコモを初めとするLTE対応のデータ通信サービスは、月内に利用できる転送容量に一定の上限を定められているケースが多く、上限を超えないためにも外出時はLTEや3Gを利用し、自宅では無線LANを接続するという使い分けが必要不可欠だ。

 そうしたユーザーにとって低価格で手軽に導入できるWR8165Nは非常に魅力的。もちろん、低価格ゆえにハイスペックモデルと比べると機能は必要最低限に抑えられてはいるが、実用上にはほぼ不便を感じないだろう。また、利用までの設定もさまざまな支援機能が用意されているため、無線LANに不慣れなユーザーでも導入しやすい点もポイントだ。


片手で持てる程度のコンパクトな本体サイズ

 本体サイズは約34×76×109mm(幅×奥行×高)で、重量は約200g。厚みこそあるものの幅と高さはスマートフォン程度のサイズで、片手で持てる程度の大きさで、200gという重量も非常に軽く持ちやすい。一般的なルーターはアンテナや筐体がいかにも通信機器、というデザインが多く、部屋の中に置いた際にも違和感が出てしまうこともあるが、アンテナ内蔵でコンパクトな筐体かつシンプルなデザインのWR8165Nは、テレビなどの家電とも合わせて設置しやすいと感じた。

片手で持てる程度のコンパクトサイズ

 本体前面は電源の状態を示すPOWERランプ、通信状態を示すACTIVEランプ、無線通信の状態を示すAIRランプを搭載し、通信状況などはこのランプで確認できる。側面には電源のほか、WANポート×1、LANポート×3、無線LANの設定で利用するらくらくスタートボタン、底面にはルーターとアクセスポイントの切替スイッチと初期化用のリセットボタンを搭載する。

本体前面本体側面

 背面には無線LAN設定用のSSIDと暗号化キーに加えてQRコードが記載されたシールが貼り付けられている。SSIDと暗号化キーは手動で入力することも可能なほか、後述するツールを利用すればQRコードから無線LANを設定することも可能だ。

本体背面


実効20Mbps以上の無線LAN通信が可能。実用性は十分

 ルーターの基本的な機能である通信面では、最大300Mbpsでの通信が可能なIEEE 802.11b/g/nの無線LANと、最大100Mbpsの通信が可能な10BASE-T/100BASE-TXをサポート。無線LANは同等の数値ながらより安定した通信が可能なIEEE 802.11aに対応していないものの、無線LAN対応製品はほぼすべてといっていいほどIEEE 802.11b/gに対応しているのに対し、IEEE 802.11aに対応している製品はハイスペックモデルを中心として一部に限られている。より高速かつ安定した通信を追い求めるユーザーでなければIEEE 802.11b/g/nの対応で十分だろう。

 有線LANもハイスペックモデルでは最大1Gbpsの通信が可能な1000BASE-Tに対応しているが、インターネット接続のスピードはFTTH回線でも下り最大100Mbpsというサービスがほとんどで、インターネット接続という面ではさほど変わらない。現状、1000BASE-Tがもっとも効果を発揮するのはPCからPC、PCからスマートフォンといったホームネットワーク内の転送だが、こうしたファイル転送をさほど使わないのであれば10BASE-T/100BASE-TXでも実用上は十分と言える。

 CPUがCore i7(1.9GHz)でSSD搭載のLavie G タイプZから、CPUがCore i7(1.8GHz)でSSD搭載のZenbookへ容量1GBのファイルを転送したところ、5分48秒で転送が完了、転送速度は約24Mbpsだった。また、WAN側にフレッツ・光(マンションタイプ)を接続し、スマートフォンから通信速度測定アプリ「SPEEDTEST.NET」で計測したところ、上下ともに20Mbps以上の数値を計測。実用上は十分な通信速度で利用が可能だ。

フレッツ光回線で測定。上下とも20Mbps以上の速度で通信できる


面倒な無線LAN設定をサポートするツールが充実

 無線LANルーターを利用する際に面倒な初期設定や無線LANの接続設定も、さまざまなツールで設定をサポート。そもそもの設定であるインターネット接続は「らくらくネットスタートLite」機能が提供されており、インターネットにつながらないという時に、LANケーブルの接続などを診断し、理由を自動的に表示してくれる。

インターネットに接続できない場合に自動診断し、ウェブブラウザーで理由を表示する「らくらくネットスタートLite」

 無線LAN接続設定は、PCだけでなくゲーム機やスマートフォンでも、パスワードなどを文字入力せずに利用できる「らくらく無線スタート」が提供されている。

 PC接続はWPSに対応しており、Vista SP2以降のWindowsであれば、WR8165Nの無線LANアクセスポイントをPCから選択し、WR8165N背面の「らくらくスタート」ボタンを前面のPOWERボタンが緑点滅するまで長押しするだけで接続が可能だ。また、専用ソフト「らくらく無線スタートEX」を利用すれば、Windows XPやMac OS 10.5/10.6でも同様のボタン操作で接続できる。

Vista SP2以降のWindowsであればWPSを利用可能本体背面の「らくらくスタート」ボタンで無線LANを設定できる

 PC以外の機器設定も幅広く対応。スマートフォン向けには、同様のボタン操作で設定できる「Atermらくらく無線スタートEX for Android」がAndroid向けに提供されている。対応バージョンはAndroid 2.1からAndroid 4.0まで幅広く対応しており、最新のAndroidでなくても利用できるのが嬉しい。

Android向けに提供されている設定アプリ「Atermらくらく無線スタートEX for Android」。画面の指示に従ってボタン操作を行なうだけで設定が完了する

 スマートフォンの場合は、さらにQRコードを読み取るだけで無線LAN設定が可能な「らくらくQRスタート」も提供。「らくらく無線スタート」はAndroidのみでiOSには非対応だが、こちらのらくらくQRスタートはiOS 5.1以降およびAndroid 2.1以降に対応しており、アプリのカメラから背面のQRコードを認識するだけで手軽に設定が可能だ。なお、QRコードが大きいため一般的には認識しやすいが、部屋の照明などによっては反射光で読み取りに苦労するケースもあるようだ。そういう場合は、蛍光灯の反射などを避けつつ、本体を固定してカメラで読み取るようにすれば認識しやすくなる。

QRコードを読み込んで設定を保存できる「らくらくQRスタート」

 スマートフォンだけでなくゲーム機にも対応。WiiやPS3、ニンテンドーDS/DSi/3DS、PSP/PS Vitaも、暗号化キーなどを手で入力することなくボタンやタッチ操作で無線LAN設定を完了できる。家庭内で無線LANを利用する主要な機器はサポートしているため、これらのソフトや設定を利用すれば面倒な暗号化キー入力はほぼ不要になる。

PlayStation Vitaの無線LAN設定画面ニンテンドー3DSの無線LAN設定画面


セキュリティをはじめとしたネットワーク機能も充実

 コンパクトかつ手頃な価格ながら機能も充実。無線LANのアクセスポイントは家庭内で利用するためのSSIDと、ゲーム機で接続するSSIDの2種類が用意されている。ゲーム機用のSSIDはネットワーク隔離機能がオンになっているため、インターネットには接続できるものの、同じネットワークに接続している他の機器にはアクセスできないようになっており、知人が家に遊びに来たときなども安心してSSIDを貸し出せる。

 なお、ゲーム機用のSSIDは暗号化キーがWEPになっているが、これはAESに対応していないためWEPで接続せざるを得ないニンテンドーDSのためというのがほとんどの理由と言っていい。しかし、ニンテンドーDSiやニンテンドー3DSからはAESをサポートするようになり、DS用カートリッジでインターネット接続しなければWEP接続は不要になっている。WEPは非常に脆弱な暗号化キーと言われているため、家庭内でニンテンドーDSを含めたWEP接続機器が存在しないのであれば、設定画面からWEPをAESに変更するとより安心だ。

 設定はウェブブラウザーに「http://aterm.me/」と入力し、WR8165N本体にアクセスして行なう。初期状態ではルーターの動作モードを切り替える「かんたんモード」になっているが、左側のボタンから「詳細モード」に切り替えることで細かな設定が可能だ。

WR8165Nの管理画面。初期設定では「かんたんモード」になっている「詳細モード」に切り替えると左に設定メニューが現われる

 詳細設定では前述のAES変更はもちろん、SSIDや暗号化キーの変更も可能。無線LANアクセスポイントを検索したときにSSIDを表示しないようにするステルス機能や、MACアドレスを登録した機器のみ接続できるMACアドレスフィルタリング機能といったセキュリティ面はもちろん、DHCPから固定でIPアドレスの割り当てる機能、ポートマッピングなどルータとしての機能は一通り揃っている。

無線LANの細かなカスタマイズが可能

 設定がわからないというユーザー向けのサポートも充実。Atermのサポートサイトでは機種ごとの設定ガイドや機能詳細ガイドに加え、ユーザーから寄せられる質問に対するQ&Aを用意しており、頻度の多い質問や機種ごとの質問などを確認できる。問い合わせもウェブサイト経由だけでなく電話窓口もあり、修理については9時から21時まで年中無休で受け付けているため、万が一機器が故障した際にも安心だ。


コストパフォーマンスに優れた1台。機能を追い求めないユーザーに最適

 低価格ながらも十分な通信速度や無線LAN機能に加え、PCやスマートフォン、ゲーム機からも設定しやすい支援ツールも充実したWR8165N。より安定した通信や高速な通信を求めるのであれば、IEEE 802.11a対応に対応したハイスペックなモデルのほうが向いているが、自宅で無線LANが快適に使えればいい、というニーズであればWR8165Nはまさに最適の1台と言えるだろう。無線LANルータの入門機としてもオススメしたい1台だ。


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(甲斐 祐樹)

2012/11/26 06:00