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実質2000円で国産PCが手に入る!? 長野県飯山市に「ふるさと納税」してみた

 今週は、Windowsに関して大きなニュースがあった。Microsoftが発表した「Windows 10」への無償アップグレードもそうだが、本誌記事のページビュー(1月23日現在)あるいは記事に対するツイート数的には、それよりも注目を集めたニュースがある。

 長野県飯山市が、「ふるさと納税(ふるさと寄附金)」をした人への特典として、株式会社マウスコンピューターのWindows PC製品などをラインナップに加えた――という記事である。

 恥ずかしながら筆者はふるさと納税という制度についてきちんと理解していなかったので、なぜそれほど注目されるのか分からなかったが、これを機に実際にふるさと納税などしてみて、なるほどと思った。本記事では、今回話題となった飯山市のふるさと納税などに関して取材しつつ、ふるさと納税未経験者の筆者がインターネット経由で飯山市にふるさと納税してみた流れをレポートしたい。

「ふるさと納税」とは?

 ふるさと納税の制度は、どこかの自治体へ寄付をすると、そのうち2000円を超える分について、寄付をした人の所得税・住民税が還付・控除されるというものだ。例えば1万円を寄付したとすれば、その年の所得税および翌年の住民税から計8000円が減額される(※確定申告手続きが必要)。

 要は、通常であれば自分が住んでいる自治体に納めることになる住民税などの一部をほかの地域の自治体に寄付として納めるようなイメージだ。ふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」によると、「地方間格差や過疎などによる税収の減少に悩む自治体に対しての格差是正を推進するための新構想」として、2008年に創設された制度だ。

 なお、名称に「ふるさと」と付いているが、特に自分の出身地に限定されるわけではない。何か応援したいことがある自治体など、どこの自治体への寄付も同制度の対象となる。

 税金・寄付で支払う総額が減るわけではないが、ふるさと納税をしてくれた人にお礼として送られてくる特典が“魅力”であるらしい。多くの自治体において、地域の特産品など、豪華な特典を用意しているというのだ。

「ふるさと納税」の仕組みについては、総務省の「ふるさと納税など個人住民税の寄附金税制」を参照

 飯山市の場合もそうだろう。今回ラインナップに追加されたマウスコンピューター製品としては、2万円以上3万円未満の寄付をした人への特典として、21.5インチの液晶ディスプレイ「iiyama E2278HD-GB2」がある。

 マウスコンピューターによれば、同製品の実勢価格(税別、以下同じ)は1万6950円。仮に2万円を飯山市に寄付してこれをもらったとすると、1万8000円は自身の所得税・住民税から控除されるわけだから、実質2000円で1万6950円の液晶ディスプレイが入手できることになる。

 このほか、4万円以上5万円未満の寄付では、8インチ液晶搭載のWindowsタブレットPC「WN801V2-BK」(実勢価格2万3800円)、10万円以上20万円未満の寄付では、15.6インチ液晶搭載のノートPC「LB-F511B-IIYAMA」(同等モデルの実勢価格6万5800円)やタワー型PC「LM-iH301S-IIYAMA」(同等モデルの実勢価格5万7800円)がラインナップされている。同様に、これらの製品が実質2000円で入手できるわけだ。

21.5インチ液晶ディスプレイ「iiyama E2278HD-GB2」
8インチ液晶搭載Windowsタブレット「WN801V2-BK」。Atom Z3735F(1.33GHzクアッドコア)、RAM 2GB、ストレージ32GB、「Office Home&Business 2013」搭載モデル
15.6インチ液晶搭載ノートPC「LB-F511B-IIYAMA」。Core i3-4100M(2.5GHzデュアルコア)、RAM4GB、HDD 320GBを搭載したモデル
デスクトップPC「LM-iH301S-IIYAMA」。Core i5-4590(3.3GHzクアッドコア)、RAM 8GB、HDD 500GBを搭載したモデル

 そんなわけで、本誌はじめIT系ネットメディア各誌がこのニュースを取り上げたことで、飯山市へのふるさと納税の注目度が急上昇。特典としてタブレットPCのWN801V2-BKを選択した申し込みは420件に上り、すぐに品切れとなって受け付けを停止した。再開は4月中旬ごろになるとしている。

 また、液晶ディスプレイのE2278HD-GB2も、23日夕方時点で340件の申し込みがあり、飯山市では予想を上回る反響に驚いているという。

 同じ2000円ならば、実勢価格がより高価なノートPCやタワーPCに申し込みが殺到しそうなものだが、そうならないのには理由がある。控除には上限が規定されているため、寄付した10万円のうち、9万8000円全額が控除対象になるとは限らないためだ。

 上限金額は、翌年の住民税の1割程度とされている。総務省の「ふるさと納税など個人住民税の寄附金税制」ページで公開されているPDF資料によると、例えば独身で年収600万円の人の場合、全額控除される寄付金の目安は4万3000円。すなわち、飯山市に4万円寄付をしてタブレットPCを入手した場合は3万8000円全額が控除されるが、10万円を寄付してノートPCもしくはタワーPCを入手した場合には、控除されるのは9万8000円の半額にも満たない。9万8000円全額が控除されるのは、年収が1000万円を超えるような人になる(「ふるさと納税など個人住民税の寄附金税制」ページにはこのほか、控除額のをシミュレーションできるExcelシートなども用意されている)。

 なお、2015年度の税制改正の大綱では、この上限を1割から2割へと2倍に引き上げることが盛り込まれている。また、現行では控除を受けるためには寄付をした翌年に確定申告を行う必要があるが、この手続きを簡素化する「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を創設することも盛り込まれているが、いずれもまだ確定したものではない(このほか大綱の概要には「返礼品送付について、寄附金控除の趣旨を踏まえた良識ある対応の要請」という項目もあったりする)。

PCは飯山市の“特産品”

 「ふるさとチョイス」では、各自治体のふるさと納税の情報を広く掲載しており、地域などから横断的に検索できるようになっている。同サイトを運営する株式会社トラストバンクによると、全国には約1800の自治体があるが、特産品などを特典として用意し、積極的にふるさと納税をプロモーションしている自治体が1000以上あるという。

株式会社トラストバンクが運営するふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」

 実際のところ、特典の内容はふるさと納税の集まり具合に大きく影響するらしい。例えば飯山市が公開している資料によれば、2013年度のふるさと納税の実績は2378件・7044万2203円だった。2012年度の62件・1312万5100円から、件数・金額ともに大きく増えている。

 2012年度までは特典といっても「定価1000円程度のきのこセット」だったが、それを2013年度にお米などに拡充したこと、同時にふるさとチョイスに情報を掲載して手軽に申し込み・支払いができるようにしたことで効果が出た。これに加えて、全国的に“特典合戦”が加熱し、ふるさと納税自体の認知が拡大したこともある。

 さらに2014年度は、すでに4億円程度が集まっており、2013年度の5倍を突破。そして今回のマウスコンピューター製品の追加により、2014年度末までには4億2000万円程度になる見込みだ。

 なお、ふるさと納税では、寄付をした人が寄付金の使い道を指定できる点も特徴だが、寄付した全額をその通りに活用するのは難しい場合もあるようだ。

 以前は、特典の調達コストは自治体の一般予算からまかない、ふるさと納税での収入についてはその全額を、寄付をした人の指定どおりの使途に充てていたという。しかし、特典が豪華になり、寄付金が年間数億円にも上る規模・件数になると、特典を調達するコストも相当なものだ。小さな自治体ではそのための予算を別途捻出するのは難しい。ふるさと納税の実績の大きい自治体では、寄付金の一部を特典の調達に回し、残りを本来の使途に充てるといった運用にならざるを得ないという。

 ちなみに、なぜ飯山市のふるさと納税の特典がマウスコンピューター製品なのかというと……

 「当初、特産品である『美味しいお米』や宿泊券を特典として扱うことにより、飯山市の美味しい食べ物を知っていただいたり、飯山市に訪れてもらうことを目的としていました。この度、3月に新幹線が開業することを記念して、新たな特典が追加できないかと検討したところ、市内で製造しているマウスコンピューター製品をPRできればと思い、追加したという経緯です。」(飯山市企画財政課)

 ノートPCのLB-F511B-IIYAMAとタワーPCのLM-iH301S-IIYAMAが、マウスコンピューターの飯山工場で製造されている「made in 飯山」モデルだ。また、タブレットPCのWN801V2-BKについても、同工場ではないが、飯山市内で製造されているものだという。

 なお、ノートPCとタワーPCの2製品は「-IIYAMA」が付いた専用型番だが、マウスコンピューターによると、管理上の理由から付けたものであり、それぞれ市販製品の「LB-F511B」「LM-iH301S」と同じ構成のモデルだとしている。

 現在、ふるさとチョイスで検索してみると、ふるさと納税の特典としてPC製品を用意しているのは飯山市のみ。ほとんどのPC製品が海外生産となる中で、PC製品を地域の“特産品”としてラインナップできるところは限られるようだ。

【記事訂正 2015/1/27 12:10】
 記事初出時、液晶ディスプレイの「iiyama E2278HD-GB2」についても飯山市内で製造されているものとの記述がありましたが、これは誤りです。お詫びして訂正いたします。

「ふるさとチョイス」での検索結果

オンラインで申し込み・支払いまで完結する自治体も

 ふるさと納税を行うには、各自治体がウェブサイトなどで提供している情報を調べて、それぞれの自治体に申し込むのが基本だが、ピンポイントで寄付先の自治体を決めているのでなければ、「ふるさとチョイス」などの情報サイトで探すのが便利だ。各自治体のサイト内で該当する情報を探す手間も省けるし、あるいは、自分の知らない自治体も含め、寄付金の使い道で検索することもできる。

 さらには、制度の趣旨からすると本末転倒のような気もするが、特典の内容で細かく検索したり、オンライン申し込み&クレジットカード支払いに対応しているかどうかといった側面からの検索も可能だ。

 トラストバンクによると、ふるさとチョイスに情報を掲載している自治体のうち、オンライン申し込みの入力フォームを使っている自治体は約200。そのうちクレジットカードによるオンラインでの支払い手続きまで行える自治体が約180あるという。

 飯山市はこの180自治体のうちの1つなので、申し込み書のPDFをダウンロードして記入したものを郵送あるいはファックス……といったわずらわしい作業をすることなく、オンラインでほぼワンストップで手続きを完了できる。以下、具体的な手順を見ていこう(飯山市に限らず、オンライン申し込み&クレジットカード支払いに対応しているところは同様)。

「ふるさとチョイス」は会員登録なしでも利用可能

 「ふるさとチョイス」からのオンライン申し込みに対応している自治体のページには、「この自治体に寄附を申込む」というリンクがある。ログイン画面が表示されるが、会員登録なしでも利用可能だ。会員登録をすれば、お気に入り登録や履歴管理、オンライン申し込み時の住所自動入力などが使える。

申し込みフォームの入力

 申し込みフォームでは、氏名、メールアドレスや住所などの連絡先のほか、寄付金額や振込方法、希望する特典などを入力する。特典の送付先として別の住所を指定することもできるため、特典を贈り物として誰かに発送するという使い方も可能だ。

 寄付金の使い道については、飯山市の場合、1)北陸新幹線開業にともなう飯山駅前整備事業、2)飯山市文化交流館整備事業、3)自然などの景観整備事業、4)教育・福祉事業、5)指定なし――の5項目から選べる。

 特典はプルダウンメニューから選択可能。なお、PCなどについては申し込みを受けてから製造となるため、キャンセルは不可とのこと。

「Yahoo!公金支払い」でのクレジットカード払い

 振込方法は「郵便振替」「クレジットカード払い」の2つ。クレジットカード払いは、オンラインでの支払いに対応している180自治体のうち数カ所を除き、ヤフー株式会社の「Yahoo!公金支払い」によるものだ。これを選択すると、Yahoo!公金支払いのページに移動し、そこでカード情報を入力して決済をする流れになる。ただし、Yahoo! JAPAN IDを持っていれば、同IDでログインすることで、「Yahoo!ウォレット」に登録されているカード情報が自動で反映される(手動で別のカード情報を入力することも可能)。

 ほかにもYahoo! JAPAN IDでログインすることで、そのIDで貯めてあるTポイントをYahoo!公金支払いでの支払いに充当できるというメリットもある。

 申し込みおよびYahoo!公金支払いの手続きが終了すると、ふるさとチョイスとYahoo!公金支払いからそれぞれ受け付け完了・支払い手続き完了のメールが届く。あとは、特典および確定申告の際に必要になる受領書(12月に郵送)が届くのを待つだけだ。

まるでオンラインショッピング感覚の手軽さだが……

 以上、実際にふるさと納税を行ってみて感じたのは、オンラインで申し込み・支払いまで行える自治体であれば、わずらわしい紙の書類のやり取りなど一切不要で、さらにポイントを支払いに充当することもできるなど、かなり手軽に利用できるということだ(実際、クレジットカード支払いに対応しているかどうかで、コンバージョン率に3倍もの開きがあるらしい)。

 それだけに、各地の特産品を格安で購入できるオンラインショッピングのような感覚に陥ってしまいがちでもあり(税制改正で控除額の上限が拡大すればなおさらだ)、ふるさと納税・ふるさと寄附金の仕組み(=自分の住む自治体の税収が減る)や意義をふまえながら利用する必要があるだろう。

「Yahoo!公金支払い」のウェブサイトにも、ふるさと納税についてまとめたコーナーがある

【追記 22:45】
 最後に、実際に飯山市から届いた“特産品”の開封の儀で記事を締めたい。発送までに最大1カ月かかるとのことだったので、当初はしばらくお伝えできないと思っていたが、なんと、この記事を掲載した1月24日の夜にゆうパックで配達されてきた。申し込み手続きをしたのが1月21日の夜だったので、3日とたっていない。申し込みが殺到して受け付けを停止している特典もあるというのに、何だか申し訳ない気もするが、ありがたくいただくことにしよう。

ゆうパックで届いた「みのり直送便」の箱
中には何やら書面が……
飯山市の足立正則市長からのお手紙と……
特典の商品のチラシ

 実は筆者は去年の夏に旅行で飯山市を訪れており、その時に何気なく食べた生姜焼き定食が非常に美味だったという思い出がある。特産品の「みゆきポーク」という豚肉らしい。今回、記事執筆がきっかけとはいえ、飯山市にふるさと納税することにしたのは、そうした縁も感じたためだ。

 飯山市の特典ラインナップには、その「みゆきポーク」のハム・ソーセージの詰め合わせもあったのだが、250セット限定ということで残念ながら品切れだった。筆者が今回、特典として選んだのは「とびっきり美味しい!! 一等特Aコシヒカリ『かまくら米』10kg」。

(永沢 茂)