特別企画

ついに通知開始!マイナンバーで最初に注意すべきポイントは? 社会保険労務士に聞いてみた

 ニュースを見ると、毎日、マイナンバーに関するニュースが報じられている。いよいよ、2015年10月から個人への通知が始まるとあって、マイナンバーへの関心が高まっているようだ。

 しかし、10月から通知カードが届き、自分のマイナンバー(個人番号)を会社に提出しなければならないといった基本的な知識はあるものの、実際にはマイナンバー制度が自分にどうかかわるのかわからない部分が多い。通知カードを受け取った後、どう対処していけばいいのだろう? さらに、マイナンバー導入準備をまだ始めていない企業が、できるだけコストをかけずに対策をとるには、どんな対応をすればいいのだろうか?

 マルマイ社会保険労務士事務所に所属し、社会保険労務士として多くの企業に接している浅井富美代氏。マイナンバーに関し、すでに多くの相談を受けているという。「初めてのことなので、企業の皆さんも不安に感じているようです。一般的な問い合わせに加え、このケースにはどう対処すればいいのか?といった事例に対する問い合わせが多いですね」。

 マイナンバーに関しては、内閣官房のWebサイトや、総務省のWebサイトなどに詳しく記載されている。また、マイナンバー制度の電話問い合わせ(全国共通ナビダイヤル 0570-20-0178)も用意されている。

 しかし、サイトでは専門的な用語が使われていることもあって、一般の人にはわかりにくい点も多い。では今回は、なにをしないといけないのか、どんなことに注意すればいいのか、今決まっている基本的なことを、浅井氏に聞いていくことにしよう。

社会保険労務士の浅井富美代氏

10月に届く通知カードは大切に保管

 まず10月からは、12けたのマイナンバーが記された通知カードが、簡易書留によって国民全員に届くことになる。この通知カードを受け取ったら、どうすればよいのか。

 「通知カードは、住民票を持っている人、すべてに届きます。家族全員分の通知が届きますので、家族全員分、届いているのか。また、2015年10月5日時点の住民票に書かれた情報をもとにしていますが、氏名、性別、生年月日、住所という基本4情報が間違っていないのかも、確認する必要があります。そして大事なことは、この通知カードをなくさずに保管することです。家族全員分なくさず、きちんと保管してください」。

 この通知カードは、さまざまに利用されることが計画されている「マイナンバーカード(個人番号カード)」とは異なる。

 「10月に届く通知にはマイナンバーカード交付申請書が同封されており、希望者は、2016年1月以降にマイナンバーカードの交付を受けることができます」。

 このマイナンバーカードは、顔写真が記載されたICチップのついたカードとなることが予定されている。表面に氏名、住所、生年月日、性別という基本4情報と顔写真が記載され、裏面に12けたのマイナンバー(個人番号)が記載されることになる。

通知カードのイメージ(出典:総務省)
マイナンバーカード(個人番号カード)のイメージ(出典:総務省)

 「マイナンバーカードの申請を行うかどうかは、義務ではありません。申請を行わないというのも選択肢の1つではあります。ただ、マイナンバーカードを取得することによるメリットがあります。それを生かしたいと考えるのであれば、カードを申請した方がよいでしょう」。

 マイナンバーカード取得のメリットとしては、主に次のようなものがある。
  1)写真付きの公的な身分証明書として使用が可能
  2)e-Taxの電子申請などで利用できる電子証明書が標準搭載
  3)自治体が条例で定める、図書館カード、印鑑登録照明証などのサービスに利用可能

 初年度は、無料でマイナンバーカードを作成することができる(再発行の際は原則として手数料が必要)。「現在のところ、マイナンバーカード作成は無償で、政府もそのための予算を確保しています。その後、無償のままとなるのか、有償となるのかは明らかになっていません。有償に移行するとなれば、事前に告知は行われるでしょう。ただ、いつかはカードを作ろうと考えているのであれば、無償で作成できるタイミングで作成してしまった方がいいかもしれませんね」。

 また写真付きであることから、20歳以上の場合にはマイナンバーカードの有効期限は10年。20歳未満の場合には5年が有効期限となる。

 万が一、作成したマイナンバーカードを紛失するといった事態に陥った際には、「クレジットカードを紛失してしまったのと同じような対応をしなければならないと考えてください。紛失の届け出先が、クレジットカード会社ではなく、自分が住んでいる自治体になるわけですが、マイナンバーとは一生つきあっていくことになります。自分のマイナンバー、家族のマイナンバーは大切にしてください」と浅井氏は提言する。

むやみに公開しないことが大切

 マイナンバーカードを取得すると便利になることが増えそうだが、浅井氏は、気を付けなくてはならないことがあるとも指摘する。

 「マイナンバーカードは紛失しないように注意することも必要ですが、マイナンバーを不用意に知られないようにすることも重要なんです。例えば、レンタルビデオ店などで会員に入会する場合に、マイナンバーカードを身分証明書として使うことができますが、カードの裏面に記載されているマイナンバーを提供することはできません。したがって、裏面のコピーを取られないように注意することが必要です。ずっと店員さんを見張っているというのも非現実的ですので、対応策として、保護シールを貼っておくことをオススメしています」。

源泉徴収票を外部に提出する際は要注意!

 10月に通知カードを受け取った後、実際に利用が始まるのは2016年1月からになる。

 「2015年10月にマイナンバーの通知カードを受け取るため、直後の2015年年末調整からマイナンバーが必要になるのか?と考えてしまいますが、マイナンバーの利用開始は2016年1月から順次となっています。したがって、実際に自分のマイナンバー、家族のマイナンバーを記載して年末調整を行うのは2016年に行う年末調整からになります」。

2016年1月より、順次利用開始となる

 では、マイナンバーは会社にはいつ提出すればいいのだろうか。

 「それは、会社の対応によって異なってくるでしょう。想定されるのは、年末調整時に、翌年の扶養控除申請などでマイナンバーを提出するケースです。いっぺんに集められるので、こういう会社が多いのではないかと予想しています。ただ、実際に提出するのは翌年でも構わないですから、そこは会社の判断次第なのです。なお、扶養家族がいる従業員からは、家族のマイナンバーも提出してもらう必要があります」。

 なおマイナンバーを会社に登録することを前提に、ビジネスパーソンにはおなじみのものの様式が変わることが決定している。

 「年末調整を提出後、会社からもらう『源泉徴収票』の様式が変わります。従来は横長の形状でしたが、家族分のマイナンバーを記載されるようになるため、縦長の形状になります」。

 縦長の形状の源泉徴収票には、本人をはじめ、扶養家族のマイナンバーが記されることになる。これは本人が確認のために見る分には問題はない。しかし、例えば住宅ローンを申請する際のように、外部に源泉徴収票提出が必要な場合、マイナンバーが記載されていては問題になるのではないだろうか。

 「企業のマイナンバーの利用は、税と社会保障に限られます。したがって、マイナンバーが記載された源泉徴収票を外部に提出する場合には、マイナンバーの目的外取得・利用になってしまいますので、マイナンバー部分を黒塗りにして提出しなければなりません。保育園に提出する場合も同じです。最終的には市役所などの公的機関に回る書類ですが、これも目的外使用になるので、潰す必要があります」。

 「そこで源泉徴収票を印刷するソフトの中には、マイナンバーを記載しない源泉徴収票を印刷する機能を持っているものがあります。外部に提出するための源泉徴収票が必要な場合は、マイナンバーを記載しないものをくださいと会社側に頼めば、自分のマイナンバーが外部に流出してしまうトラブルを未然に防ぐことができます」。

 自社の総務担当などが慣れてくれば、自然と対応してくれるようになるだろうが、不慣れなうちは、社員側がトラブルを未然に防ぐよう、会社に要望を出すというのも重要ということになりそうだ。

【追記・10月2日】

10月2日付けで国税庁より、「所得税法施行規則等の改正が行われたため、平成28年1月以降も、給与などの支払を受ける方に交付する源泉徴収票などへの個人番号の記載は行わないこととされました」との通知がありました。なお、税務署に提出する源泉徴収票などには個人番号の記載が必要とのことです。

本人へ交付する源泉徴収票や支払通知書等への個人番号の記載不要について(PDF)
https://www.nta.go.jp/mynumberinfo/pdf/mynumber_gensen.pdf

副業や扶養家族の収入が明らかになる?

 会社での収入以外にも副業から収入がある人は、マイナンバー導入後、収入がひも付されることから、会社に内緒でやっている副業がばれてしまうのでは?と一部で話題になっていた。

 「すぐに自分の副業収入が会社に明らかになるわけではありません。実は今でも十分会社にばれてしまう可能性はあります。よくあるケースとしては住民税の特別徴収を通じてです。住民税は申告した収入に対して課税されますが、会社から支給される給与から想定される以上の住民税が課されていたら会社は副業を疑います。ただマイナンバー導入後は収入に関しては全て紐付けされるため、今まで以上に副業がばれやすい状態になるかと思います。今まで申告していなかった収入があったとすれば、今後は税務当局がその申告漏れを把握しやすい状況になりますね」。

 さらにマイナンバーによって収入の状況が明らかになることで、本人の副業だけでなく、家族のアルバイト、パート勤務、扶養家族の収入も明らかになる。

 「これまでは縦割りで税金の管理が行われていたため、税金の修正が求められる人もいるかもしれません。例えば、扶養家族にしていた両親に収入があるのにそれが申告されていなかった、といったケースです。悪意があって申告していなかったわけではないが、うっかり申告を忘れていたため、申告額の修正が必要になる人がたくさん出てくるかもしれません」。

 自分自身に加え、扶養家族も含めた収入が申告している通りなのか、マイナンバー導入を機に見直す必要がありそうだ。

人手で対応できない場合はシステムの力を借りよう

 ところで先ほどは、源泉徴収票を会社からもらう場合、会社側は社員本人に渡す目的のマイナンバーが記載された源泉徴収票、外部に提出することが目的のマイナンバーを記載しない源泉徴収票の両方を求められることを紹介した。

 「実はマイナンバー導入で、企業側はさまざまな手間が増えることになります。源泉徴収票もその一つです。従来は一種類だった源泉徴収票ですが、社員の要望によってマイナンバーの記載があるもの、ないものが必要になります。しかしこれは序の口で、企業にとって源泉徴収票以上に負担が大きいのは、社員のマイナンバーを保管、廃棄する運用だと思います」。

 企業が社員から集めたマイナンバー情報は、外部に流出することがないよう、きちんと管理しながら保管していく必要がある。マイナンバーは、外部に流出させてしまうと罰則の対象となることが決定している。うっかり社員のマイナンバーを外部に漏らすことがないよう、細心の注意を払って保管していくことが必要だ。

 また、保管以上に容易ではないのが廃棄だ。不要になった場合は速やかに廃棄・削除することが求められるが、書類によっては一定期間の保管が法令で義務付けられているものがある。例えば、扶養控除等申告書や配偶者特別控除申告書の保管期間は7年。これらの書類については、退職した社員のマイナンバーは、7年保持してから廃棄しなければならない。

 「マイナンバーが漏えいしないよう保管する。また、保管してきたものを7年たって廃棄する。これを徹底するのは、決して容易なことではないでしょう。短期のアルバイトで雇用していた人を7年きちんと覚えていられるでしょうか。ルールにのっとった上で、手間をできるだけ少なく運用していく方法は何か、検討する必要があるでしょう」。

 前述のように、決められた期間が過ぎれば廃棄するというルールを守るのは容易ではない。例えば管理者が保管期間内に交代するといったことも当然起こり得るわけで、廃棄し忘れがないよう、きちんと社内で情報を共有していかなければならない。うっかりを防ぐにはどういう方法をとるのがいいのだろう。

 「私がおすすめしているのは、パソコンとソフトを使ってシステムから管理することです。パソコンで管理すると外部からの攻撃を受けると思われていますが、実は紙でデータを保管する方が容易ではありません。コピーされ、持ち出される。スマートフォンで写真を撮られるといった事態が起こっても、気が付かない場合があるからです。パソコンにデータを入れておけば、そのデータを見た人を記録する仕組みや、内部のデータを暗号化することでデータを見ても内容はわからないといった、データ流出を防ぐ仕組みを作ることができます。廃棄については、システムから自動的に定められた期間を過ぎたものはデータ廃棄を行ったり、廃棄の警告を出すようにセッティングしておけば、『うっかりデータ廃棄を忘れていた』といった事態を避けることができます」。

 最近では企業がマイナンバーを保管し、廃棄までの運用を行うためのソフトが多数登場している。

 「必要な機能を持ち、低コストで導入できるものがいいと思います。手ごろな価格のソフトがたくさん登場していて、こうした製品では、マイナンバーの保管・運用を支援する機能を備えてきています。これまで、給与については手作業で行ってきた法人も、これを機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか?」と浅井氏はアドバイスし、ソリマチの「給料王 16」などをお勧めしている。

 ソリマチ製品に限らず、こうしたマイナンバー対応機能を持ったソフトウェアは、これからも数多く出てくるだろう。これらの製品は、マイナンバー対策に悩む企業を助ける、強い相棒になりそうである。

給料王 16などを用いてシステムでマイナンバー対応を行った方が、コストパフォーマンスがよい場合も多いという

(協力:ソリマチ)

(三浦 優子)