【イベントレポート】
~インターネットはネットワーク環境が左右するものではない~MEX吉村社長メディアエクスチェンジ、第5回ユーザーズミーティングを開催■URL メディアエクスチェンジ株式会社(以下、MEX)は30日、同社の取り組みなどを説明するセミナー「第5回MEXユーザーズミーティング」を開催した。MEXは、インターネットデータセンター(iDC)やインターネットエクスチェンジ(IX)、レンタルサーバーなどを提供する会社。セミナーでは、MEX吉村伸社長や取締役の石田慶樹氏などが講演を行なった。 ●ユビキタスによって、ライフスタイルの変化がおこるだろう~吉村社長
ブロードバンドに関しては、ADSLの普及によりエンドユーザーが常時接続環境を手に入れたことは大きいと前置きして「しかし、これで満足してはいけない。インターネットは、あくまでもネットワークが決める物ではなく、ソフトウェアやコンテンツ、PCの性能で決まるものだ。いくらブロードバンドが普及したところで、それに見合うコンテンツやPC性能の向上がなければ、今後インターネットサービスの発展は見込めないだろう」と警告している。 最後にユビキタスの影響について、インターネット中毒者の増加、生活への依存度の向上、ライフライン化、しいてはユーザーのライフスタイルの変化が現れるだろうと予測しており、そのユーザーニーズに応えるためにも、他のISPとの強調やバックボーン回線の充実、IPv6環境の提供によるユビキタス環境サポートなどを今後の目標として提示した。 ●過去一年間で3倍のトラフィック増加が起こっている~石田取締役
データ転送量の推移では、2001年7月度と2002年7月度のデータを提示し、2001年7月のピークトラフィック(5分平均)が最大1GBなのに対して、2002年7月は3GBに達しており、一年間でおよそ3倍のトラフィック量になっていると示唆した。また、10月度のデータでは、さらに3.5~4GB程度まで増加しており、今後も増加していくだろうと予測している。この要因として石田氏は、「やはり一番の要因は、2001年後半から始まったADSLの爆発的普及だろう。高速回線によるデータ転送量の増加に加えて、常時接続環境で24時間通信を行なっているユーザーが現れていることが、インターネットトラフィックの増加に繋がっている。現在もADSLユーザーなどが増え続けていることから、今後もこの傾向は続くと予測している」と語り、増加するトラフィックに対応するために、各ISPやIXはバックボーンの増強を強いられるだろうと推測している。 今後の展開としては、他社と比較した技術的優位性を確保するために、高速ルーター等の開発へ注力しているとし、実際に日立製作所と協力してギガビットイーサネット4ポートのGbpsクラスのルーターの製作を行なっているという。ルーター等の開発には、実運用環境への投入とその結果のフィードバックが重要なため、そのための環境提供として共同で開発を行なっているという。今後は日立製作所以外の企業とも国内外を問わない協力体制を作っていき、より一層の技術的優位性を確保していきたいと抱負を語った。 ●そろそろIPv6への移行を考えるいい機会なのではないだろうか~高田氏
続いて高田氏が自身で実際に引いたBフレッツを例に挙げ、実行速度30Mbpsと非常に高速ながらも、回線使用料4,603円、工事費用2万7,100円と高価なことや、集合住宅で引く場合の管理組合との問題など、まだまだ敷居が高いと述べた。また、ネットワークの観点から、FTTHが急激に普及した場合、「地域IP網やISPのバックボーンなどの回線が果たして今のままで耐えられるのか」や「果たして30Mbpsを必要とするだけのコンテンツが存在するのか」といった問題を抱えていることを指摘した。さらにFTTHが普及するための障壁として、「現在のADSLでも、コンスタントに1Mbpsでるユーザーにとっては、それ以上の速度を必要とする魅力あるコンテンツがない」ことや、「ADSLの月額3~4,000円程度と比較して、FTTHの月額1万5,000円程度の料金は果たして一般ユーザーに受け入れられるのか」などを挙げている。 また、FTTHやADSLなどの普及の足かせになり得る要因として、回線遅延とTCPの速度の問題を語った。最大スループットはTCP Windowサイズ/RTT(往復遅延時間:Round Trip Time)で決定されるために、遅延が大きくなると回線速度がいくら速くても実行速度は出ない。しかも、遅い回線を利用している場合には遅延が気にならないかもしれないが、高速回線を利用している場合は、遅延が無視できない存在となり得る。この遅延の原因として「国際線を行って来いする場合」、「回線/ルーターの能力が足りてない」、「サーバーが遅い」などが考えられ、その対策として「できるだけ多くのISPとピアリングする」、「できるだけ太い回線を敷設する」、「できるだけ早いルーターを使う」などを挙げているが、高田氏は「いくらこのような対策をMEXが実施しても、他のISPなどが同様の対策を行なってくれなければ、意味の無いものになると言わざるを得ない」と語った。 さらにブロードバンドコンテンツ普及の障壁になり得るものとして、ファイアウォールとNATを挙げた。現在企業では、ファイアウォールの導入率が非常に高くなっているが、ファイアウォールを導入しているとFTPやHTTPは通るが、RealやWindows Mediaなど主にUDPを使うアプリケーション群は通らないことが多いという。昼間会社からアクセスしている人数を考えると、動画配信ビジネスにとっては大きな痛手だと語った。対策として、ダウンロード型や暗号化が考えられるが、コピーの問題等なので現在はあまり普及していない。「しかし、昼間のビジネスチャンスを逃していることを考えると、好ましくはないのではないか」と高田氏。 また、グローバルIPアドレスの不足から多くの企業等でNATを利用したプライベートIPの利用が普及しているが、サーバーアプリケーションや多くのコネクションを同時に張るアプリケーションなどでは問題が生じている。この解消のため、UPnPなどの対策が行なわれているが、高田氏は「そろそろこの辺の工夫も限界なのでは。IPv6への移行を考えるいい機会なのではないだろうか」と提案している。最後に「ユーザー数の増加や個々の回線速度の向上によりトラフィックはまだまだ増え続ける」とまとめた上で、「P2PやNAT親和性の低いアプリケーションに対応するためにもIPv6の普及に努める」、「継続的にハードウェアの増強や他社との連携を図る」などの今後の目標を提示した。 ◎関連記事 (2002/10/30) [Reported by otsu-j@impress.co.jp] |
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