【イベントレポート】
地域IXビジネスは果たして成り立つか?
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フォーラムの冒頭に行なわれたオープニングセレモニーでは、秋田地域IX経由で東京まで高速回線を接続。寺田典城・秋田県知事(写真)と日本テレコムのウィリアム・T・モロー社長がテレビ会議システムで対談するというデモンストレーションが披露された |
ただし、サービス開始後は県みずからが顧客として秋田地域IXを利用することになっており、今後3年間にわたって300Mbps相当のトランジットを利用。県内の公共バックボーンである「秋田情報ハイウェイ」と接続し、公共機関や学校からのインターネット接続環境の高速化を図る。県が支払うトランジット料は年間2億円程度になるとしており、最大の顧客として秋田地域IXの運用を間接的にサポートしていくことになる。
とはいえ、データコアでも商用IXとして運営していく以上、収益性の高いビジネスモデルの確立が不可欠となる。補助事業の枠外でデータセンターも同時開設しており、相互接続時に必要となる通信機器のハウジングや地域コンテンツのホスティングなどの付加サービスもあわせて展開する。
パネルディスカッションには、アバヴネットの笹木氏、スクウェアの伊勢氏のほか、インテック・ネットコア取締役の中川郁夫氏、ソフトアドバンス代表取締役社長の菅原亘氏、秋田県産業経済労働部長の吉野恭司氏が登場した |
従来からトラフィックの効率化のために地域IXの必要性が叫ばれているものの、地域内ユーザー同士のトラフィックはまだまだ少ないうえに、地域データセンターが効果を発揮するようなコンテンツがほとんど存在しないためである。今後、地域IXのビジネスが成り立つかどうか、ひいてはその地域のユーザーが本当に地域IXの恩恵を享受できるかどうかは、人材育成や企業のIT化促進などを含めた、地域型アプリケーションやコミュニティビジネスの創出がカギになるという。
また、アバヴネットジャパン技術本部本部長の笹木一義氏は、従来の公共事業のような「ハコモノ感覚」で設備だけは整備できてしまうという地域IXの陥りやすい罠を指摘。「データセンターは集約されることに意味がある。1県1IXでは共倒れ」だとして、「自治体単位ではなく、経済圏ありき」の連携を提言した。秋田県でも、北東北3県をターゲットにするなど、地域IXの共同利用の可能性も検討していくという。
一方、地域IXといっても、その効果が発揮されるのは地域内のトラフィックやコンテンツに限らないことも示された。スクウェアでネットワークシステム部長を務める伊勢幸一氏は、同社が展開中のPlay Station2向けオンラインゲームサービス「PlayOnline」を例に挙げ、地域IXの整備によってこのような全国規模のコンテンツも快適になると説明。今後は他の地域についても「地域へのダイレクトコネクティビティ」を推進していく方針だということを明らかにした。実際に同社は秋田地域IXの顧客としてPlayOnlineのサーバーを接続しており、全国規模の大手ISP経由で接続しているユーザーよりも、秋田地域IXに接続する地域ISPユーザーのほうが快適に利用できる場合もあるのだという。
なお、秋田地域IXは大容量バックボーンとMPLS技術を活用して東京にも接続ポイントを用意しており、首都圏のコンテンツプロバイダーなどがわざわざ秋田市内まで回線を調達しなくてもいいような仕組みになっている。地域内だけに止まらず、大手コンテンツプロバイダーにとって利用しやすい環境を用意できるかどうかも、地域IXの役割を考える上では重要になってきそうだ。
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(2003/1/24)
[Reported by nagasawa@impress.co.jp]