【レポート】
世界のインターネットのつなぎ方<南アジア編 その1>2002年に「世界のインターネットの繋ぎ方~中国・東南アジア編」という記事で、東南アジアを旅行した際のインターネットのつなぎ方と、現地の人がインターネットをどれくらい、どのように使っているかをレポートした。今回は南アジアを、旧型のLibrettoを持ち歩きながら持ち歩いた際に得たつなぎ方のノウハウと、南アジア各国のインターネット事情を紹介したいと思う。 ちなみに南アジアとは一般的にインド世界、つまりインド、ネパール、スリランカ、バングラデシュ、パキスタンのことを指すが、中東がご存知のとおりの情勢なので、残念ながらパキスタンには行かなかった。パキスタンは世界情勢が安定した後に訪れて「中東編」を書けたらと思う。 ●世界のインターネットに繋ぐための準備本編に入る前に、私が旅立つ時に持っていくPC環境を説明しよう。すべての荷物は45リットルのバックパックに放り込むため、PCも小さければ小さいほど良い。海外でやることはWebサイトの更新、原稿の執筆や旅の記録の記述、電子メール、Webブラウジングくらいで、これらができれば十分なので特に速いCPUを望んではいない。旅行中は街中でPCを使うことは危険もあって考えにくいので、バッテリーは多少消耗していても構わず、中古でOK。盗まれたり壊れたりしたときにあまり金銭的にがっかりしないことも大事だ。 以上の“小さい”“安い”“中古でもOK”という条件を考えて、私は東芝の「Libretto ff1100」(以下Libretto ff)を選んだ。中古ならば3~4万円でも購入可能だ。Libretto ffが好きな理由はもう一つある。旅に出る以前から長く使用していたので、たいていのトラブルには対処できることだ。たとえばOSがクラッシュしても、専用CD-ROMを使わずに復旧できるテクを身に付けている。どんな機種であれそのPCに精通しているなら、それを持っていくのがある意味でベストの選択といえるだろう。余談だが「Libretto ff」は大容量のHDDに交換できるのも良い。姉妹機種の「Libretto SS」の場合、特殊なサイズのHDDを使っているため、標準の2.1GBを超えるものは入れられない。またバックアップデバイスも盗まれたり壊れたりしたときのための大切な装備で、USB接続で小型の外付け2.5インチHDDを持っていっている。 一応壊れたときの予備機として、HPのPDA「Jornada690」も用意した。これもモデム内蔵で、またカードスロットが2つあり、コンパクトフラッシュを利用してメモ書きやWeb用データ作成や小さいサイズのデジカメ画像などが退避できて非常に便利に使える。 プロバイダーについては、iPassやGRICなど、国際ローミングサービスをもつプロバイダーの中でも特に安いものを選んでいる。調べたところでは、iPassは群馬インターネット、GRICはSo-netが安いようだ。接続はどこからするかといえば、部屋に電話のある中級ホテルに泊まって行なうか、大きなホテルには必ずある「BusinessCenter」が最も無難でお勧めできる。少しでもお金を節約したいときは、インターネットカフェでLAN接続させてもらったり、電話を提供する電話屋に頼むという手もある。ただ店員がどれだけ信用できるかが重要になる。 ●南アジア編各国事情の前に各国事情に行く前に、南アジアの基礎知識として知っておきたいことをまとめておこう。 南アジアは、インドの文化がテレビ、映画、習慣、ビジネススタイルなど、多くの面で周辺の国に強い影響を及ぼしている。食文化でいえば、カレーライスを右手で手掴みで食べるのがこれらの国での共通の文化といえば、わかりやすいだろうか。出張や旅行で触れる範囲で見ると、「南アジアの文化はインドの文化」といっても差し支えないほど。インターネットに関するビジネスも個人ユーザーの習慣も、ほぼインドが基本になっていると考えてよいだろう。 今回は、このインドを集中して紹介しよう。なおインドでは、歴史的にイギリスに大きく関わっていたことから、ほぼ問題なく英語が通じる。 ●インド 10億超の人間が住まう巨大なマーケットインドはとても広い。地域によって大きく人も言葉も生活もかわるが、大別すると首都デリーやカルカッタなどツアーでまわるような地域を北インド、インド随一のビジネス都市ムンバイから南、インドのシリコンバレーことバンガロールなどを含む地域が南インドと呼ばれている。前提として北インドでは治安が悪いので(死に至るようなことはないが窃盗等は日常茶飯事)、外でおおっぴらにパソコンを出さないことを強く勧める。どうしても手持ちのパソコンを使いたい場合は、部屋に電話のあるホテルに泊まろう。南インドの場合、反対にその心配はまずない。 泊まったホテルの部屋に電話がない場合、手持ちのパソコンから接続するためには、ホテルのビジネスセンターないしは電話屋を利用することになる。ホテルのビジネスセンターのシステムは世界共通で高級ホテルには大抵あるが、値段も1時間300ルピー(800円弱)と、インドの物価から見ると破格に高い。 一方の電話屋とは、メーターが付いている電話を使って最後に店員に支払うシステム。公衆電話などの料金が前払いの日本とは逆になっている。ややこしいことに電話は「ISD」(国際通話)、「STD」(州外通話。日本の市外電話と同様)、「PCO」(州内=市内通話で、ローカルコールと呼ぶときもある)の3種類に分別される。例えばPCOしか店頭に書かれていない電話屋ないしホテルの部屋の電話では市内通話しか使えない。アクセスポイントが市外にある場合はSTDかISD表記の電話屋を探さなければならない。
インドのプロバイダーは複数あるが、これらプロバイダーが提供しているCDを購入し、オンラインサインアップをすれば、その場で接続ができる。おすすめは「Satyam-online」などのプロバイダーだ。 また大型書店などではいわゆるプリペイドCDが購入できるので、ここからIDとパスワードを入手し、アクセスポイントを選択すれば、カード決済などを行なわなくても接続ができる。専用のダイヤルアップソフトをインストールして、CDと一緒にパッケージに入っているパスワードを使ってユーザー登録することで、利用可能時間が表示されて接続できるようになる形だ。なおインターネットカフェでも大手チェーン店では、各店共通のプリペイドカードを購入して、このカード記載のIDやパスワードを使って利用する。なおアクセスポイントやインターネットネットカフェは、100万都市や州都には必ず設置されている。
さて、インドのオンライン人口は、統計によれば20代を中心に550万人といわれる。人口が今10億人を超えるというから、まだごく一部だ。アクセスについては、学校や職場からが一番多く65%、自宅からは25%、インターネットカフェからは10%。都市部がオンライン人口全体の79%を占めるそうなので、都市部に集中しているアクセスポイントの分布も納得できる。 ネットに接続しているPC台数に対して、ユーザー数は約3倍はいるという。インドではひとつのPCに対して複数人がアクセスしているのか、それともインフラの構築がこれからという意味なのか、このあたりは謎が残る。接続時間は1週間で7時間弱が最も多く、オンライン人口の約半数が毎日接続しているという。ケーブルテレビや無線LANによる接続も政府認可済みで、ブロードバンド環境はすでに一部では導入されている。 Webサイトは英語が基本だが、ポータルサイトではインドの各言語(インドはヒンズー語、英語のほかに、数十の言葉が使われている)で書かれたページもあり、そうしたサイトにはたいてい閲覧用のフォントファイルが用意され、ダウンロードして利用できる。その一方で、インド独自のサイトは意外に少ない面もある。彼らは英語が使えるので、アメリカのサイトなどで事足りるからだ。 独自のものでも比較的多いのは、インドの映画“Bollywood”のサイトだ。日本ではあまり知られていないが、インド映画の年間製作本数はアメリカでのそれを上回るほどで、インドでは映画は最も大衆に浸透している娯楽となっている。なお、日本の芸能人やアイドルに関するサイトは、タイを境になくなり、インドではほとんど存在しない。インド人にとってアメリカ文化は近いものの、日本の現代文化は知られていない状況がうかがえる。
【URL】 ◎関連記事 (2003/4/2) [Reported by 山谷剛史(yamaya@tc.xdsl.ne.jp)] |
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