【レポート】
@NetHome、CATVインターネットの専用テストセンターを公開CATV事業者にインターネット接続サービスを供給する@NetHomeが、このほどテストセンターを開設した。インターネットから局舎を経てユーザー側の宅内環境に至るまでを模擬的に再現したもので、本格提供前のサービスを、より実際の環境に近い形でテストできるという。今回はこのテストセンターを訪問し、実際に行なわれているテスト内容や今後の課題を、同社の小堺昭男氏に伺った。 ■HFC方式を再現したテストセンター @NetHomeは、ケーブルテレビ放送をメインとするCATV事業者に対して、インターネット接続サービスを提供する企業。CATV事業者側は@NetHomeを利用することによって、一から自前のインターネット設備を揃えることなく、より容易に自社利用者へインターネット接続サービスを提供できる。 @NetHomeと提携するCATV事業者の多くは、光ファイバーと同軸ケーブルを併用したサービスを行なっている。「ヘッドエンド」と呼ばれるサービス管理施設から、ユーザー宅周辺の電柱上にある「ノード」までは光ファイバーを敷設、ノードからは回線を分岐させ、複数のユーザー宅まで同軸ケーブルを引き込む。この方式は「HFC」(Hybrid Fiber and Coaxicial)と呼ばれ、将来的な放送の多チャンネル化やノイズ対策の観点から、ある程度普及しているという。 今回、@NetHomeが開設したテストセンターはこのHFC方式を再現したもの。同社の本社内の一角にあり、約130平方メートルのスペースを占有。今後展開が予定されるIP電話サービスやVODの各種テストが行なえる。 シニアエンジニアの小堺氏によると、同センターの利点は「実際のユーザー環境を使ったフィールドテストの、前段階テストができることだ」という。「従来まではヘッドエンド側設備、ユーザー側設備など、それぞれの専門分野で検証した内容の整合性を、直接フィールドテストで試していた。テストセンターを利用することで、その一段階前のテストができる」と語った。 また実験したい内容は、すでに継続して提供中の商用サービスに悪影響を与える可能性もある。「それらのことからもテストセンターの必要性が高まっていた」(小堺氏)と、センター設立の経緯について説明した。
■テストセンターの中身 テストセンターは基本的にインターネットから切り離された「独立したネットワーク」だが、より実際に近い環境を測定するため、コンテンツ用のWebサーバー類からヘッドエンド内設備、ノード、ケーブルモデムを一通り準備してある。現在はサーバー設置用の19インチラックが31台、約100台のケーブルモデム、各種の測定機器を常備している。なお@NetHomeでは、HFC環境を完全再現したテスト施設の構築を、国内初のケースだとみている。 センター内には、ヘッドエンドとユーザー宅を結ぶ回線も再現。ドラムに巻かれた状態の光ファイバー12km分が設備に組み込まれているので、ほぼ実際の線路長に則している。また、電柱上のノードとユーザー宅までを結ぶ同軸ケーブルの環境を、より実際の環境に近づけるために、あえてノイズを発生させるための装置を用意しているのだという。 なおインターネットの世界では、サーバーへの同時接続コネクション数などが問題となるケースが多いが、その検証も、擬似的にトラフィックを増やす専用装置で対応可能となっており、耐久テスト用途などにも活用できる。 この一時的なトラフィックの増加現象も、CATVならではの側面がある。小堺氏は「電話回線を使ったADSLは、回線収容局とユーザー間が1対1で結ばれるが、HFCではヘッドエンドとノード間を複数のユーザーがシェアする1対多になる。そのため、ADSLとは違った問題も発生しやすい」と語り、HFC方式専用テスト環境の重要性を強調した。
■ユーザー環境も可能な限り再現 テストセンターではインフラ側だけでなく、ユーザー側環境の検証にも重要な位置を占める。ケーブルモデムの接続性試験や、ユーザーが利用するPCの動作確認などにも使われているからだ。 ケーブルモデムは単純な接続性だけでなく、ファームウェアのバージョンに応じた特有の問題が発生するケースもあるため、約25種100台を確保。新版ファームウェア正式リリース前のテストなどにも活用される。 またユーザーが実際に利用するPCも複数台用意。実際のテスト環境に接続して、1台1台、実地検証している。さらに使用OSなども多岐に渡るため、検証内容は非常に膨大だという。 「Windows XPだけではなく、Windows 95などの古いOSも検証する。またPlayStation 2やXboxなど、ネットワークに対応したゲーム機も対象としている」(小堺氏) 取材時点では、先頃発表されたIP電話「ケーブルトーク」の関連機材を検証中だった。こちらはフィールドテストが4月下旬から並行して行なわれる予定で、将来的には本格展開を計画しているとのことだ。
■CATVインターネット高速化にも対応 CATVインターネットの下り通信速度は、現在最高で30Mbps。今後はさらなる高速化に加えて、ユーザー宅への引き込み線が光ファイバーとなる可能性もある。ただし小堺氏によれば「現在はまだ、同軸ケーブル自体のポテンシャルを生かし切っていない状態」とし、同軸ケーブルのまま高速化できる余地は高いとみている。テストセンター自体もまた、将来的な高速化を十分鑑みたものとして設計されているという。 だがCATVインターネットの高速化に対しては、各CATV局によって対応がまちまちな部分が多いのも事実だという。ヘッドエンド側機器の新規調達に対するスタンスが各社で異なるほか、敷設済み同軸ケーブルの品質による部分が多いためだ。 VODサービスについても同様のことが言える。同サービス用のテスト設備は、センター内に設置されているが「CATVですでに有料放送を受信しているユーザーが改めてVODを利用するかは、現段階で不透明な点も多い」(小堺氏) これらの事項は市場動向によって左右されることも多いため、@NetHomeでは慎重かつ柔軟に対応を進めていく。そのためにも、実地的な検証が可能なテストセンターを有効活用していきたい考えだ。
◎関連記事 (2003/5/6) [Reported by 森田秀一] |
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