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Macで「VOCALOID」使えるように、「初音ミク」もMac対応の新製品「V3」発表

 歌詞とメロディを入力することで歌声を合成できる技術/ソフトウェアである「VOCALOID」を、Mac環境でも使えるようになる。ヤマハ株式会社が、Windows/Mac両対応のVOCALOIDエディターソフト「VOCALOID Editor for Cubase NEO」を8月5日に発売するとともに、自社およびパートナー企業から提供している「VOCALOID3」の歌声ライブラリについてMac対応を進める。クリプトン・フューチャー・メディア株式会社が提供する「初音ミク」も、新バージョンの「初音ミクV3」においてMacに対応することが明らかにされた。

 VOCALOID Editor for Cubaseは、音楽制作に使うDAWソフトの定番製品の1つである「Cubase 7」「Cubase Artist 7」にVOCALOIDの機能を追加するソフト。Cubase上で他の楽器パートとあわせてボーカルパートの入力・調声が行えるようになり、Cubaseの各種機能やショートカット、プラグインエフェクターなどを使いながらシームレスに制作作業を進めていくことができる。これまでWindows版が提供されていたが、新バージョンの「NEO」においてMacにも対応した。

 VOCALOID Editor for Cubase NEOは、Windows 8/7とMac OS X 10.7/10.8に対応。オープンプライスだが、市場想定価格は9800円前後。なお、Cubaseの下位バージョンである「Cubase AI」「Cubase Elements」には対応していない。

VOCALOID Editor for Cubase NEO

 Windows/Mac両対応の歌声ライブラリとしては、まず、女性の声の「VOCALOID3 Library VY1V3 NEO」(オープンプライス、市場想定価格9800円)を8月5日に発売するほか、同じくVOCALOID3 Libraryシリーズで「Mew NEO」「ZOLA PROJECT NEO」「蒼姫ラピス NEO」「VY2V3 NEO」を9月~11月に順次発売する。

 これらVOCALOID3 Libraryシリーズの歌声ライブラリについては、Windows向けに販売していた従来製品の購入者が、そのライセンスをMacに移行して利用できるようにする仕組みも用意する。まず、Windowsでアクティベーションを解除してシリアルコードを初期化した後、ウェブサイトでシリアルコードを入力すれば、Mac用のインストーラーを無償でダウンロードできる流れだ。Mac用インストーラーは、VY1V3とMewを8月5日に提供開始。ZOLA PROJECT、蒼姫ラピス、VY2V3は10月~11月に順次公開する。

 なお、VOCALOID Editor for Cubase NEOをWindows環境で使用する場合は、「VOCALOID2」対応の歌声ライブラリも使用可能。

「初音ミクV3」ではDAWソフトやソフト音源もオールインワンで提供

 24日夜に行われ、ニコニコ生放送でも中継されたヤマハの新製品発表会には、クリプトン・フューチャー・メディア代表取締役の伊藤博之氏も出席。「初音ミクV3」の開発方針や概要を説明した。

ヤマハ株式会社yamaha+推進室VOCALOIDプロジェクトリーダーの剣持秀紀氏(左)は、「Macユーザーの方、たいへん長らくお待たせいたしました。VOCALOIDを使った音楽制作をしていただいて、新しい、すばらしい音楽を使っていただければ」とコメント。一方、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社代表取締役の伊藤博之氏(右)は、6年間言われ続けてきた「歌以外はどうすればいいの?」「Macに対応してください」という要望を、初音ミクV3でようやく解決すると説明する

 初音ミクV3に含まれるMac対応のVOCALOIDエディターソフト「Piapro Studio」は、VSTプラグインとしてDAWソフトと連携するほか、アップデータによりAU(Audio Units)プラグインとしても対応予定。歌声ライブラリはVOCALOID3版となり、オリジナル版である「VOCALOID2 初音ミク」および6種類の声の表情を収録した追加ライブラリ「MIKU APPEND」に含まれる計7種類から抜粋し、徹底的にブラッシュアップした。

 ただし、全く新しいミクというわけではなく、愛着のあるオリジナルのミクのニュアンスを残しながら、VOCALOID3の最大の特徴だという「トライフォン技術」を使用し、音素のつなぎ込み・磨き込みを行い、滑らかさを追求したとしている。

 初音ミクV3は、歌声合成機能だけでなく、伴奏(オケ)パートも含めて音楽制作に必要なソフトをオールインワンパッケージで提供するのも特徴。歌声ライブラリおよびPiapro Studioに加えて、従来は別途用意する必要があったDAWソフトや、シンセサイザーやドラムをはじめとした200種類以上の楽器のソフト音源も同梱。初心者でも何を購入すればいいか迷うことがなくなるとした。

 なお、初音ミクV3はまだ開発が完了しておらず、発売時期や価格などの詳細は8月上旬に発表する予定だ。クリプトン・フューチャー・メディアのウェブサイトには初音ミクV3のページも開設されており、デモソングを近日公開予定だという。対応OSはWindows 7/Vista/XPとMac OS X 10.7/10.8となっている。

 伊藤氏は、英語の歌声ライブラリを収録する「初音ミクV3 ENGLISH」が完成したことも明らかにした。日本語ライブラリの初音ミクV3とは別パッケージで提供するかたちとなり、発売時期は未定だが世界で同時発売を予定している。この英語版については、デモソングの動画をniconicoとYouTubeで公開した。

 このほか、初代「MEIKO」のVOCALOID3版となる「MEIKO V3」についても現在開発中だとしており、初音ミクV3と同様にオールインワンパッケージで今年秋以降に発売予定。他のキャラクターのソフトについてもVOCALOID3版を投入するとともに、すべてMacに対応していくとした。既存ユーザーには優待パスを用意するという。

インターネットの「がくっぽいど」「Megpoid」などもMac対応

 「がくっぽいど」「Megpoid」などのVOCALOIDソフトを開発・販売する株式会社インターネットでも25日、同社のVOCALOID3版ライブラリ製品でMacに対応すると発表した。

 「VOCALOID3 Library Megpoid」(Native、English、Adult、Power、Sweet、Whisper)、「VOCALOID3 Library がくっぽいど」(NATIVE、POWER、WHISPER)、「VOCALOID3 Library Lily」「VOCALOID3 Library CUL」のWindows版の登録ユーザーを対象に、今年9月以降順次、Mac版を無償ダウンロード提供していく。

 なお、Mac版はライブラリのみの提供となり、VOCALOID Editor for Cubase NEOでのみ使用可能。また、インストールして使用できるのは、Windows版、Mac版のいずれか一方だけとなる。

(永沢 茂)