新聞などで、インターネット決済に関する記事を見ない日は少ない。セキュリティの問題、新しい電子決済サービスなどさまざまだ。新しい決済サービスは多数生まれているものの、現状でこれがスタンダードと言えるものはまだない。
このシリーズでは、現在実用化されている決済サービスの信頼性や「本当にお金を払ってまで使う価値があるの?」といった不安要素などを検証し、さまざまな支払い方法(決済技術)を体験レポートする。
さて、9回目は商品の代金をコンビニエンスストアで支払える、ウェルネットの「コンビニ収納代行システム」を紹介する。
最近のインターネット決済で注目を浴びているのが「コンビニ収納代行システム」だ。これは、商品に同梱されてくる振込用紙を使って、24時間いつでもコンビニで支払えるというもの。コンビニだけでなく、郵便振込用の払込にも対応している。'97年8月からサービスを開始。現在約40社のWWWサイトが導入している。
コンビニでの決済は、千趣会、セシールなどの大手通信販売会社でも導入しているが、事業規模が小さな会社での導入は困難なもの。そこでウェルネットのサービスは、決済部分をウェルネットが代行することによって、中小規模のWebショップなども、コンビニでの決済システムを導入できるというものだ。
コンビニ収納代行システムは、商品を買った店舗側の内部での決済システムとして機能する。商品を販売するインターネットショップが、ウェルネットと収納代行の契約をするだけで良いので、利用者は入会手続きなどはない。利用者は、ウェルネットのシステムを使っていることをまったく意識しなくて済む。
コンビニ決済を採用しているサイト、10Holes( http://www.10holes.com/ten/ )で「華原朋美も吹いた?」というHOHNERのBlues Harp(ハーモニカ)を買ってみることにした。
欲しい商品を画面から探したら、WWW上のフォームに、数量や注文者、届先の住所など、商品の申込みに必要なことを入力する。支払方法の選択は、もちろん「コンビニ」だ。そして「注文する」ボタンを押すだけで注文は終了。特に変わったところはない。
翌日、申し込みをした商品内容を確認するメールが届く。申し込んだ商品の内容と発送日が書かれているので、内容に間違いがないことを確認する。特に問題がなければ返事を書く必要はない。商品が送られてくるのを待つだけだ。
ウェルネットの問題ではないのだが、商品の申込内容の確認時に、申し込んでない商品も「数量0」として表示されるのが見にくかった。また、注文は簡単だが、暗号化がされていないので、インターネットの特性上、第三者に見られる恐れがあるのは気にかかる。
3日後、普通郵便で商品が届いた。さっそく開けてみると、ハーモニカと一緒にコンビニの払込み用紙が入っている。払込用紙を見ると、振込先が「ウェルネット株式会社」となっている。この「10Holes」では、事前にウェルネットの収納代行を使っていると明記されていないので、何故ウェルネットに支払うのかと疑問を感じる人もいるだろう。どこかでウェルネットによるコンビニ収納代行サービスを利用していることを、説明しておいてほしいものだ。
届いた払込用紙には、住所や金額、支払期限などすべて印刷済みなので、そのままコンビニへ持って行けばよい。使えるコンビニは、セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、ヤマザキデイリーストア、サンエブリー、サークルK、am/pm、サンクス、ミニストップ、スリーエフ、ポプラ、セーブオンの12種類。主要なコンビニのほとんどで扱える。なお、コンビニによっては、クレジットカードを取り扱っている店舗もあるので、カードでの支払いができるか店員に確認したところ、「収納代行の場合は現金でしか払えない」とのこと。残念ながらクレジットカードでの支払いはできないようだ。
コンビニ収納代行を利用者から見ると、代金は後払いになるので支払いに関するリスクはかなり低い。また、支払い場所も24時間営業しているコンビニなので、営業時間が限られている郵便局や銀行と比べると、とても利用しやすくなる。払い込みにかかる費用もかからない。
商品を購入した時の個人情報は、収納代行専用ソフトで店舗ごとに管理している。ウェルネットは決済の仲介をしているだけで、販売された商品や誰が購入したかなどの情報はまったく伝わらない。このため店舗側から漏れない限り安全といえる。
一方で店舗側にとっては、郵便振込の方がコストパフォーマンスは良さそうだ。これについては次項で比較する。また、郵便・銀行振込でも同様なのだが、各店舗で顧客情報を管理していると、購入者の認証や支払い滞納者を事前に確認することは難しい。当然、商品を先に送っているので、代金回収のリスクは加盟店で負うことになる。こういったことを考慮すると、独自に顧客の認証をする仕組みを考える必要がありそうだ。
また、郵便振込やコンビニ収納代行の場合、振込用紙を購入者に渡す必要があるため、物流を伴う商品の販売に向いている。
インターネット上では、さまざまな決定方式が生まれているが、インターネットでクレジットカード番号を送信するのに、危機感を感じている人も多い。日常の支払いで、郵便振込や代金引替が多い現在、消費者経済の窓口としてコンビニが注目されている。コンビニ収納代行システムは、今後、主流になっていく可能性も高そうだ。
店舗側からしてみると、郵便局の郵便振込とウェルネットを比較した場合、ウェルネットのほうが少々高めだ。ソフトや口座開設は1回限りのものなので、それほど大きな負担ではないが、1件あたり155円の費用と、振込手数料が月1,000円かかる。そのため、数百円程度のものには向かないだろう。しかし、利用者からみると、時間を束縛されずに支払いができるので、大きなアドバンテージになる。
なお、郵便局の場合、金額によって1件あたりの振替費用が変わり、10万円以上の場合120円、10万円以上の場合220円となる。高額の商品の場合、振り込み手数料などを考えてもウェルネットの決済を利用したのほうが安いこともあるだろう。
? |
郵便局 |
ウェルネット |
イニシャルコスト |
? | ? |
契約時 |
0円 |
4,000円(契約書印紙代) |
ソフト |
? | 8,800円(ダウンロードする場合) |
ランニングコスト |
? | ? |
1件あたりの振替費用 |
70円 |
155円 |
? |
(1万円以下の場合) |
(手数料120円+払込票作成料30円+払込票5円) |
代金受取 |
随時 |
1ヶ月ごと |
振込手数料 |
0円 |
1,000円 |
●入会にあたって
入会条件:電子メールを利用できる人
●利用にあたって
プラットフォーム:WWWブラウザー
◎評価基準(三段階評価)
設定の簡便 :★★★
○特に設定は必要なく、商品の申込みをするだけで良い。
安全性の配慮:★★☆
○加盟店によって違うが、商品申込時の情報に対して暗号化の対処などは行なわれていない。しかし、金銭面では代金が後払いなので、安全性には問題ない。
○個人情報は店舗側のみで把握しているので、決済システム運営者には知られない。
使い勝手 :★★☆
○加盟店ごとに利用者の管理が違うため、毎回利用者の入力をしなければならないが、誰でもいつでも申込めるので使い勝手は良い。
('98/05/01)
[Reported by Watcher小林(chibiayu@sag.bekkoame.ne.jp) ]
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