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Winny作者逮捕がP2P技術の研究者に与えた影響


 日本ソフトウェア科学会は14日、東京工業大学で「P2Pコンピューティング−基盤技術と社会的側面−」と題したチュートリアルを開催した。成蹊大学法学部の塩澤一洋助教授が「P2Pの法的・社会的意義」と題してWinnyの作者が逮捕された事件に関し解説とコメントを行なったほか、パネルディスカッションでは産業技術総合研究所(産総研)の首藤一幸氏らが、P2Pソフトの抱える諸問題や、Winny事件がP2P技術の研究に与えた影響などについて議論を交わした。


Winnyの作者は「倫理的には注意義務を満たしていない」〜塩澤氏

成蹊大学法学部の塩澤一洋助教授
 パネルディスカッションに先立って行なわれた塩澤氏の講演では、まず今回のWinny作者逮捕に関する事件に関連して、逮捕理由となった「著作権法違反の幇助犯」が成立するために必要な要件についての解説を行なった上で、「そもそもWinnyが開発されなければWinnyを使った犯罪が起こることはありえないわけで、その意味でWinnyの開発行為が幇助行為に当たることは明らか」「また被幇助者である正犯がWinnyを使って犯罪(著作権法違反)を起こしたことについては争いはない」と述べた。

 その上で今回の事件の争点としては、「作者に著作権法違反の幇助の故意があったのか」「幇助者が被幇助者を誰だか認識している必要があるのか」といった点に加え、法技術的な観点からは「著作権法では第120条以下に、通常であれば幇助犯として扱われるであろう行為の類型をわざわざ明示して罰則を規定していることから、著作権法が刑法8条但書にいうところの『法令に特別の規定があるとき』に該当し、著作権法違反には刑法総則の適用が及ばない可能性がある(=幇助犯が罰せられない)」という点が争点になり得ると語った。ただし、「現実問題として、著作権法に刑法総則の適用が及ばないと裁判所が判断する可能性は低いため、主な争点は前述の2点ということになるだろう」とも述べた。

 塩澤氏は「法的にはWinnyの作者の行為が違法であるというロジックも立てられるし、同様に合法であるというロジックも立てられるため、法的な見解を述べるのは差し控えたい」として、作者が有罪になるのかどうかという点については言及を避けた。一方で、倫理的な側面からは「悪いことにも容易に使われてしまうようなものを作っている人間には、原発の管理者などと同様に、通常よりも高度な注意義務が要求される」と述べた上で、「雑誌やネット上の動向を見ていて、Winnyが主に違法なファイル共有のために使われていることは明らかだったにも関わらず、Winnyの作者が著作権法違反を防ぐようなシステムをソフトに組み込まなかった点は、作者が注意義務を満たしていなかったと言えるのではないか」と述べ、作者が有罪か無罪かは別としても、倫理的な意味で責任がないとは言えないという見解を示した。


Winny事件のソフトウェア研究に対する影響は?

産業技術総合研究所の首藤一幸氏
 続いて行なわれたパネルディスカッションでは、出席者の多くがソフトウェア関係の研究者であるという特性から、主に「Winny事件によって、P2P技術の研究にブレーキがかかるのか?」という観点から、活発な議論が行なわれた。

 司会を務めた産総研の首藤一幸氏は、「私個人に関して言えば、研究という観点でブレーキがかかったという事実はない」と述べたほか、科学技術研究機構の阿部洋丈氏も「論文でP2Pのアルゴリズムなどをテーマにするのは引き続きセーフだと思うし、影響が出ているとは思っていない」と語った。阿部氏はP2P技術を利用した完全匿名型プロキシーシステム「Aerie」を開発したものの、結局そのコードは現時点で非公開のままとなっているとして、その背景にはWinny事件だけではなく、2002年12月に判決が出た「2ちゃんねる動物病院事件控訴審」で被告(2ちゃんねる)側の主張が全て退けられたことや、2003年11月にヤミ金融業者向けに顧客管理ソフトを開発したプログラマーが逮捕された事件など、複数の要因が重なっていると述べ、開発者の法的リスクを高めている要因はP2P技術以外にも数多くあることを訴えた。

 一方、NTTサービスインテグレーション基盤研究所の亀井聡氏は、「Winny事件以後、研究予算の申請時に『P2P』という言葉が入っていると予算がつきにくくなった」「聞いた話だが、昨年まで科研費の申請で題名に『P2P』とついていた研究の多くが、今年の申請では『Overlay Network』とか『グリッド』とかに題名が変わっているらしい」と語り、事件によりP2Pという言葉にマイナスイメージが伴ってしまった結果、研究への影響が多少なりとも出ているという見解を示した。

 会場からも、「阿部氏のソフトが非公開になったことで、同ソフトを使ったユーザーがインスパイアを受けて、さらなる新しい技術を開発するといった可能性が失われてしまったと考えると、やはり研究にブレーキがかかっていると考えるべきではないか」といったコメントがあるなど、少なくともソフトウェアの研究開発にあたって法的リスクの与える影響が大きくなっていることは確かといえる。ただ、そのリスクのうちどの程度をWinny事件の影響が占めるかといった点については、参加者の見解が分かれているという状況だ。


科学技術研究機構の阿部洋丈氏 NTTサービスインテグレーション基盤研究所の亀井聡氏

問題回避のためには「先に学会で発表する」「特許を取る」のが有効?

 では、開発者がそのような法的リスクを回避するためには、どのような手段が有効なのだろうか。この点についてもパネリストからいくつかアイデアが出た。

 まず亀井氏は、「Winny事件を聞いて『なんで先に学会に出さなかったんだろう』と言った人がいた」と、自分の実名で学会に開発内容を先に発表してしまえば多少リスクは避けられたのではないか、との考えを示した。亀井氏は、「学会で先に発表していれば、少なくともその学会から何らかのバックアップは得られたはずだが、匿名で開発を進めた結果、内容的に関連すると見られる学会からも『うちは関係ない』として逃げられている」と述べたほか、塩澤氏も「名前を出さなかったことで『何かやましいところがあったんじゃないか』と勘ぐられるのも仕方ない」と述べ、亀井氏の意見に同意した。

 また、塩澤氏はもう一つ「先に特許を取る」ことが有効だとの考えも披露。「学会での論文発表だとその学会の関係者しかその意味がわからないが、特許を取ったとなると一般人にもその技術の先進性や有用性があることをアピールしやすい」と述べ、「一般大衆を味方につけるという意味では論文より特許のほうがうまいやり方」だと語った。また「基本特許を先に取っておけば、同技術を利用したビジネスが登場したときに大もうけできる可能性もある」として、リスク回避以外の面でも特許にはメリットがあることも合わせて挙げた。


関連情報

URL
  日本ソフトウェア科学会
  http://www.jssst.or.jp/jssst/

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( 松林庵洋風 )
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