幕張メッセで開催されている「CEATEC JAPAN 2004」では6日、マイクロソフトの執行役最高技術責任者を務める古川享氏によるキーノートスピーチが行なわれた。講演の前半には、PCと家電の融合に向けたマイクロソフトの取り組みが紹介され、後半は実際にPCと家電が融合された環境「Windows Home Computing Concept」の実演が壇上で披露された。
● PCとデジタル家電は相乗効果でさらに拡大する
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マイクロソフトの執行役最高技術責任者を務める古川享氏
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古川氏はまずPCと家電の普及率について触れ、2004年3月現在で日本におけるPCの普及率は65.7%(内閣府調査)となっているが、「PCがここまで来るのには約25年かかった。過去の例で見ると、電気がこのレベルにまで普及するのには約100年、テレビは約50年かかっており、徐々に普及のスピードは上がっている。今後デジタル家電の世界では、5年や10年といったスピードで普及するものが現れてくるだろう」という予測を語った。
一方で、PCの市場規模が縮小するというわけではなく、現時点でも家電量販店などではPCや周辺機器の売上が依然として高く、今後はデジタル家電のマーケット拡大との相乗効果で、PCマーケットもまだまだ拡大の余地があるとした。また、技術の面からも、PCとデジタル家電はお互いの技術やノウハウを取り込みながら進化しており、ハードウェア性能やネットワーク環境の進化とともに、PCとデジタル家電はさらに新たな展開の始まりを迎えていると述べた。
古川氏は、「『マイクロソフトは家電の世界には来ないでください』と言われる方もあるでしょうが、そう言わずにぜひマイクロソフトにもデジタル家電の神輿を担がせてください」と語り、マイクロソフトがPCと家電の融合を目指して取り組んでいる技術として、「DNLA」「VC-1」「T-engineフォーラムとの強調動作」の3点を紹介した。DNLA(Digital Living Network Aliance)は、ホームネットワーク環境における相互接続のための規格で、映像や音楽などのデジタルコンテンツが異なるメーカー間の機器間で相互に利用可能とすることを目的としている。マイクロソフト、インテル、IBM、日立、シャープといったITと家電双方のメーカーの参加により規格が策定され、今年度中にも対応製品が出荷される状況にあり、マイクロソフトでもボードメンバーとして相互接続性の確保に積極的に関与していると述べた。
また、映像の圧縮技術であるWindows Media Videoをオープンな標準規格「VC-1」とすることで、HD DVDやブルーレイディスクといった次世代光ディスクにも規格として採用されたことや、組み込み分野で広く利用されているTRONを発展させた次世代プラットフォーム「T-engine」との協力により、T-Engine上で動作するWindows CE .NETの開発を行なうなどの取り組みを進めていることを紹介した。
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PCと家電の融合に向けたマイクロソフトの取り組み
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Windows CE .NETとT-engineが同時に動作しているデモ画面
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● PCと家電の融合で「デジタルライフスタイル」の実現を目指す
古川氏はこうしたハードウェアや技術の進化にとともに、ビジネスの効率化への欲求やネットワークの普及により人々のライフスタイルが変化している一方、「変わらないもの、変わってほしくないもの」として、家族や友達とのつながり、楽しむことの大切さ、自分らしさといった点を挙げた。こうした、今後は効率の追求と人々の楽しみを両立させるためには、「デジタルライフタイル」と呼ぶべき新しいライフスタイルが必要とされており、マイクロソフトでもデジタルライフスタイルの実現に向けて製品を開発していると語った。
また、こうしたデジタルライフスタイルの実現にはPCと家電との融合が鍵となるが、現在は特定の組み合わせでのみPCと家電が連動している状態であるとして、2004年末に向けてはDLNAなどによりPCと家電の自由に組み合わせが可能となり、2005年から2006年にかけては場所やデバイスを問わずにコンテンツを楽しめる「PCと家電を意識しない世界」が実現するだろうと語った。
講演では、デジタルライフスタイルを実現する「Windows Home Computing Concept」として、プラズマディスプレイに接続されたPCを用いたデモを壇上で披露。デモでは、リモコンに搭載された指紋認証機能を利用して個人識別や、音声認識を利用したコントロール、電話がかかってくると自動的にテレビをタイムシフト状態で録画して応答するといった連携機能などが実演された。
古川氏は、今回行なったデモはすでに利用可能な技術を組み合わせたものであり、今すぐにでも提供できるものであるとしながらも、実際にはこうした技術やプラットフォームの上でどのようなサービスやアプリケーションを提供していくかが鍵になるだろうと語り、マイクロソフトとしても技術を提供するだけではなく、コンテンツやサービスを提供していく企業とともに新しい時代を切り拓いていきたいと語った。
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壇上では「Windows Home Computing Concept」のデモが行なわれた
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デモに用いられたPC。リモコンの指紋認証により、筐体正面に「HELLO PASQUALE(デモンストレーターの名前)」と表示されている
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関連情報
■URL
CEATEC JAPAN 2004
http://www.ceatec.com/
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( 三柳英樹 )
2004/10/06 20:46
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