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坂村教授(左)と古川副社長(右)
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米Microsoft、マイクロソフト株式会社、T-Engineフォーラムの3者は25日、ネットワーク情報家電向けOSの開発で協力すると発表した。組み込みOSのオープンプラットフォームである「T-Engine」上で動作する「Windows CE .NET」を開発する。Microsoftは、幹事会社としてT-Engineフォーラムに参加する。
T-Engineは、組み込み分野で標準となっているリアルタイムOS「TRON」のアーキテクチャを発展させた次世代プラットフォーム。規格化されたハードウェアであるT-Engineボードと、その上で動作するリアルタイムOS「T-Kernel」から構成される。今回の開発協力により、ひとつのT-Engineボードで、T-KernelとWindows CE .NETが協調動作する環境が実現される。例えばデジタルビデオカメラならば、フォーカス制御や手ぶれ補正などリアルタイム性が要求されるタスクをT-Kernelで処理し、ユーザーインターフェイスや通信機能などをWindows CE .NETで処理できるようになる。もちろん、WebブラウザーやメディアプレーヤーなどのWindowsアプリケーションも稼働できる。
実装にあたっては、Windows CE .NETをT-Engineの“ゲストOS”として動作させるかたちとなる。ひとつのCPUでT-KernelとWindows CE .NETを起動し、デバイスやメモリなどのリソースは独立して管理する一方、割り込み制御やスケジューリングについてはT-Kernelが優先管理。TRONで実績のある割り込み制御機能で双方のタスクの優先度処理を一元的に行なうことによって、ゲストOSの信頼性も上がるという。Microsoftでは、このアーキテクチャに基づいたプロトタイプを、12月に開催される「TRONSHOW 2004」で公開するとしており、その後、T-EngineとWindows CE .NETをセットにした開発者向けパッケージなどのかたちで提供していく予定だ。
25日に東京都内で開催された記者会見で、T-Engineフォーラム会長の坂村健東京大学教授は開口一番、T-EngineフォーラムがMicrosoftと敵対関係にあると位置付けけられていることに対して、「すごい誤解がある。競合にはない」と発言。ハードウェアの制御が目的でマイクロ秒単位の応答性能が求められるリアルタイムOSと、計算処理が目的でミリ秒単位の応答性能で十分なWindowsなどの情報系OSでは、そもそも技術的フォーカスが異なることを強調した。
また、携帯電話やモバイル端末などのユビキタス機器に搭載するOSとしては、情報系OSでは限界があると説明。Microsoftにとっても、すべて自社で独自開発するのではなく、T-Engineのようなオープンプラットフォームを取り入れていくことが、巨大化するOSの開発投資を抑えるとともに、今後ニーズが高まると思われる情報家電対応製品の迅速な提供につながると指摘した。
なお、すでにT-Engineには、T-Kernel上で動作する互換ミドルウェアとして「T-Linux」や「T-Java」などが構築されており、坂村教授によれば、Windows CE .NETも「巨大なミドルウェア」と言えるという。マルチプロセッサ対応などの新たな仕様は今後策定していく必要はあるとしながらも、特にWindows CE .NET対応にともなうT-Engine側の仕様変更はないとしており、今後もオープンプラットフォームとして他のOSとも広く協力していく姿勢を示した。
一方、これら競合となる“ミドルウェア”に対するWindows CE .NETのアドバンテージとして、米Microsoftアドバンスト・ストラテジー&ポリシー担当の古川享副社長は、Windowsのユーザーインターフェイスやアプリケーション、豊富な開発ツールとライブラリが提供できる点を挙げた。
関連情報
■URL
マイクロソフトのニュースリリース
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=1716
T-Engineフォーラム
http://www.t-engine.org/
関連記事:T-EngineとMontaVista Linuxを統合した新OSの開発を開始
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0318/tron.htm
( 永沢 茂 )
2003/09/25 17:38
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